PISA(3)PISA型読解力とは?

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PISA型読解力について知りたいです。

 従来の日本の読解力と対比する形で、PISA型読解力と呼ばれるものがあります。

 ここでは、「PISA型読解力とは」何かについて書きます。

PISA型読解力とは

🟠PISAの「読解力」の定義

 PISA(2000・2003・2006・2009年)における日本とフィンランドの「読解力」の順位の変動は次の通りでした。

 日本は、8位→14位→15位→8位で、フィンランドは、1位→1位→2位→1位でした。

 PISAの「読解力」のテストで日本の高校生の点数がよくなかった原因として、PISAの読解力のテストの問題が、日本の従来のテストの問題とかなり違っていたということがあります。

 問題の中には、文章を読み、その内容について答えるという日本で一般的な問題もありました。しかし、そのような日本の学校や入学試験などで出題されないような問題もありました。

 ここで、文部科学省の「PISA調査における読解力の定義,特徴等」というページに書かれている「定義・ねらい」を載せます。

自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力

・義務教育修了段階にある生徒が,文章のような「連続型テキスト」及び図表のような「非連続型テキスト」を幅広く読みこれらを広く学校内外の様々な状況に関連付けて,組み立て,展開し,意味を理解することをどの程度行えるかをみる

文部科学省「PISA調査における読解力の定義,特徴等」

 具体的には、PISAの「読解力」の問題には、次のような問題がありました。

「落書き」について書かれた2つの手紙文を読み、あなたは、この2通の手紙のどちらに賛成しますか片方あるいは両方の手紙の内容にふれながら、自分なりの言葉を使ってあなたの答えを説明してください。

 手紙に何が書かれているか、内容について考えてみましょう。手紙がどのような書き方で書かれているか、スタイルについて考えてみましょう。どちらの手紙に賛成するかは別として、あなたの意見では、どちらの手紙がよい手紙だと思いますか。片方あるいは両方の手紙の書き方にふれながら、あなたの答えを説明してください。

PISAの読解力の問題

 PISAの読解力の問題では、「テキストの表現の仕方に着目する問題」「テキストを評価しながら読むことを必要とする問題」「テキストに基づいて自分の考えや理由を述べる問題」「テキストから読み取ったことを再構成する問題」「科学的な文章を読んだり、図やグラフをみて答えたりする問題」などが出されています。

 言い換えると、読んだ教材文の内容だけでなく、教材文の書き方についても、教材文を根拠にして、自分の考えを書くという問題が出されています。

🟠日本の従来の国語の授業

 それらの問題に対して、日本の生徒は無回答が多いという傾向があります。

 無回答が多いという理由として、2000年にPISAが始まるまで、日本の学校教育では、このような問題に答えられつような学習をあまりしてきていなかったということがあります。

 従来の国語科では学習していないような傾向の問題を解くわけなので、できないのは当然かもしれません。

 日本では、長期間にわたり、「ごんぎつね」や「注文の多い料理店」などの長めの文学作品に絞って長い時間をかけて詳細に読解する学習を繰り返していました。

 関連する文章を比べて読んだり、文章ではない図や写真などの「非連続テクスト」について一緒に読んだりする学習など、ほぼ皆無でしたので、このような読解力が身につかないのも無理のないことかもしれません。

🟠フィンランドの学習の目的

 フィンランドでは、「コミュニケーション力」をつけるという大きな目標が明確で、それに向けて「発想力」「論理力」「表現力」「批判的思考力」などを育てるように教科書が編纂されています。

 フィンランドでは、文章を読み、具体的な発問に対し、自分の考えを書き、話し合うという活動がきちんと保障されています。

🟠新しい読解力育成の目的

 日本においても、PISAの「読解力」テストに出るような問題にきちんと答える力を育成したいという考えが文部科学省にはあります。

 現在の小学校学習指導要領(2019年)の1つ前の小学校学習指導要領(2011年)から、「PISA型読解力」(従来の日本の読む力と比べてこう呼ばれています)を身につけさせたいという意図がうかがえます。

「第1章総説」の最初のページからPISAについて書いていますし、「第3章教育課程の編成及び実施」の「教育課程実施上の配慮事項」の第一に「児童の言語環境の整備と言語環境の充実」が挙げられています。

 小学校6年生や中学校2年生が受けている全国学力・学習状況調査においても、先程引用で示した「落書き」のような種類の問題が出題されています。

 PISA型読解力を育成する動きは活性化しています。

 PISA型読解力を育成するためには、とにかく多様な文章をたくさん読ませることが必要だという考えが一般化してきています。

 私が教師を始めた頃と比べると、小学校で採択された国語の教科書の内容やてびきが、随分変わってきました。それは、PISAの読解テストに対応できるような力を小学生から身につけさせるためです。

 PISAとPISA型読解力テストについて、次のページも読んでください。

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