「花を見つける手がかり」の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、「花を見つける手がかり」です。
花を見つける手がかり:教材分析
🟠花を見つける手がかり:教材分析
この教材は、教育出版の4年生の教科書に掲載されている説明文です。
<作者>
吉原純平(よしはら・じゅんぺい)さん文
出典:この教科書のために書き下ろしされたものです。
吉原純平さんについて
1930年(昭和5年)に東京都で生まれました。
日本大学農学部水産学科を卒業します。
恩賜上野動物園水族館に勤務した後、井の頭自然文化園水生物館長、上野動物園飼育課などで勤めました。
国際学院埼玉短期大学の教授もされていました。
ラジオ「全国こども電話相談室」の回答者としても活躍されました。
幼児向けの絵本などの書籍を含め、水生生物に関するたくさんの著作があります。
2000年に「国際的視野から見た水族館の役割技術的進歩について」で日本大学から博士(国際関係)を授与されています。
<題名>
題名は「花を見つける手がかり」です。
題名を読むだけでは、花を見つけるのが、人間なのか、生き物なのかはわかりません。しかし、扉に黄色い菜の花に止まるもんしろちょうの写真があるので、多くの子どもは、花を探しているのはもんしろちょうかな、と思うかもしれません。
<はじめとおわり>
○ はじめ
最初に次のような文から始まっています。
・もんしろちょうは、日本中どこにでもいる、ありふれたちょうです。みなさんも知っているように、もんしろちょうは、花に止まって、そのみつをすいます。
○ おわり
最後の段落では、次のように書いています。
・こん虫は、何も語ってくれません。しかし、考え方のすじみちを立てて、実験と観察を重ねていけば、その生活の仕組みをさぐっていくことができるのです。
<形式段落>
形式段落は、全部で、16段落です。
形式段落毎の簡単な内容は、次の通りです。
① もんしろちょうは、どこにでもいる、ありふれたちょうで、花に止まって、みつをすう。
② もんしろちょうは、何を手がかりに花を見つけているのか。色か、形か、においか。
③ 日高敏隆先生と大学の人たちは、このぎもんをとくために、大がかりな実験をした。
④ 実験のために、百ぴき、二百ぴきというちょうを放し、カメラで記録して観察した。
⑤ 実験は、花だんに、赤・黄・むらさき・青の四種類の花を使い、ちょうを放した。
⑥ もんしろちょうは、生まれながらに花を見つける力があり、花だんに向かいとんでいく。
⑦ よく集まる花とそうでない花があり、むらさきは集まるが、赤はあまり来ていない。
⑧ そう決めるために、色かにおいかたしかめる、別の実験をすることにした。
⑨ 色は、同じ赤・黄・むらさき・青を使い、においのしない造花を使うことにした。
⑩ ちょうは造花の花でも向かっていく。そして、造花でも、赤い花はあまりやってこない。
⑪ 花の形でなく色かたしかめるために、次の実験では花の代わりに、四角い色紙を使った。
⑫ ただの紙でも、やはりちょうは集まってきた。ちょうは、色紙を花だと思っていた。
⑬ 集まり方を色別に調べると、紫、黄色、青、赤のじゅんで、赤はみつをつけても来ない。
⑭ これら実験から、もんしろちょうは、色を手がかりに花を見つけていることがわかった。
⑮ 「赤い花にちょうがいた」という人は、赤い花のまん中に黄色のおしべがあったのでは。
⑯ 考え方のすじみちを立て実験と観察をすると、こん虫の生活の仕組みをさぐることができる。
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<意味段落>
ここでは、5つの意味段落に分かれていると考えてみることにします。
①~②段落:序論(はじめ)
もんしろちょうはありふれたちょうです。もんしろちょうは花のみつをすいます。もんしろちょうは、何を手かがりに花を見つけるのでしょうか。
③~⑦段落:本論1(なか1)実験1
このぎもんをとくため、日高先生と大学の人たちは、実験をしました。二百ぴきのもんしろちょうを用意しました。赤・黄・むらさき・青の四種類の花を用意し、ちょうを放しました。すると、ちょうのよく集まる花とそうでない花がありました。
⑧~⑩段落:本論2(なか2)実験2
ちょうが集まるのは、花の色かにおいかたしかめるために別の実験をしました。今度は、花だんと同じ四種類のプラスチックの造花を用意しました。ちょうを放すと、造花でも集まってきました。
⑪~⑭段落:本論3(なか3)実験3
花の色か形か知るために、今度は、四角い色紙を使って実験しました。もんしろちょうは、色紙でも集まりました。集まり方は、むらさき・黄・青のじゅんで、赤にはほとんど集まりませんでした。
⑮~⑯ 段落:結論(おわり)
これらの実験からもんしろちょうは、色を手がかりにして花を見つけていることがわかりました。そして、むらさきや黄色が見つけらしいのです。こん虫は何も語ってくれませんが、すじみちを立てて考え、実験と観察を重ねると、こん虫の生活の仕組みをさぐることができます。
<大事な言葉>
手がかり、もんしろちょう、みつ、ぎもん、実験、観察、花だん、造花、おしべ、めしべ、仕組み
<表現の工夫>
「問いかけ」
この説明文では、はじめの部分で、次のような問いかけ文が使われています。
・いったい、もんしろちょうは、何を手がかりにして、花を見つけるのでしょう。花の色でしょうか。形でしょうか。それとも、においでしょうか。
このような問いかける言い方(説疑法)によって、読み手にいろいろなことを考えさせることができますし、さらに、読み手の知的好奇心が高まる効果があります。
「実験と観察」
この説明文では、3つの実験(観察)をしています。
最初にもったぎもんを解決するために、順に3つの実験(観察)をしています。
① 四種類の色の花だんの花に向けて、二百ぴきのもんしろちょうを放す。
② 花だんの花の代わりに四種類の色の造花を使って、もんしろちょうを放す。
③ 花や造花の代わりに、四種類の色の色紙を使って、もんしろちょうを放す。
このように実験(観察)を重ねることで、ちょうが集まるのは、花の形やにおいではなく、花の色であることと、色では、むらさきや黄色、青の順でたくさん集まることがわかりました。
「写真とイラスト」
この説明文には、扉の写真を含めて6枚の写真と1枚のイラストがあります。
言葉で説明することに加えて、写真やイラストがあることで、もんしろちょうが花に集まること、花の色では、むらさき・黄色・青の順で多く集まることがわかるようになっています。
<要旨>
この説明文では、「もんしろちょうは、花の色を手がかりにして花を見つけていることとそのことは、すじみちを立てて考えて、実験や観察を重ねるとわかること」が具体的に説明されています。
こん虫は何も語ってくれませんが、こん虫の考えは、実験や観察を重ねることでわかることがあります。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「説明文の教材研究」で取りあげたいくつかの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
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