言葉の意味が分かること 教材分析048

教材分析
つばさ
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言葉の意味が分かること」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、「言葉の意味が分かること」です。

言葉の意味が分かること:教材分析

🟠言葉の意味が分かること:教材分析

 この教材は、光村図書の5年生の教科書に掲載されている説明文です。

<作者>

 今井むつみ(いまい・むつみ)作

 カワチ・レン絵

 出典:この教科書のために書き下ろされたものです。

 今井むつみさんについて

 1958年(昭和33年)に東京都で生まれました。日本の心理学者です。専門は、言語発達、認知発達、言語心理などです。

 慶應義塾大学文学部を卒業後、慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程を修了されました。アメリカ合衆国のノースウェスタン大学心理学部博士課程も修了されています。

 慶應義塾大学SFC研究所所員、慶應義塾大学環境情報学部講師、助教授になった後、同大学の教授になられています。

<題名>

 題名は「言葉の意味が分かること」です。

 題名から、言葉の意味が分かることについて書かれていることがわかります。

 よくわかっていることのようで、改めてこのような題名に出合うとどういうことかな、と子どもたちは思うかもしれません。

<はじめとおわり>

はじめ

 最初に、「知らない言葉に出会ったとき、あなたはどうしますか。国語辞典を引いたり、人にきいたりするでしょう。そして『言葉の意味が分かった。』と思うかもしれません。しかし、このとき本当に言葉の意味がわかったのでしょうか。『言葉の意味が分かる』ことは、あなたが思う以上におく深いことです。なぜなら、言葉の意味には広がりがあるからです。このことを知っておくことは、言葉を学ぶときに役立ち、ふだん使っている言葉やものの見方を見直すことにつながります。」と書かれています。

 普段私たちが考える「言葉の意味が分かる」ことについて、新たな視点を投げかけています。

おわり

 最後に、「みなさんは、これからも、さまざまな場面で言葉を学んでいきます。また、外国語の学習にもちょうせんするでしょう。そんなとき、「言葉の意味は面である」ということについて、考えてみてほしいのです。」と書かれています。

 はじめとおわりから、筆者は、「言葉の意味には広がりがあり、面で考えることが大切だ」ということを主張していることがわかります。

説明文の教材研究(2) はじめとおわりに進む内部リンク

<形式段落>

 形式段落は、全部で12段落です。

 形式段落毎の簡単な内容は、次の通りです。

① 言葉の意味が分かることはおく深い。なぜなら言葉の意味には広がりがあるからだ。

② 言葉の意味に広がりがあるとはどういうことか、子どもに言葉を教えることで考えたい。

③ 「コップ」の意味を教えるとき、さまざまなものがあるため使い方も教えないといけない。

④ 一つの言葉が指すものにもさまざまな特徴があり、似た言葉との関係で決まるものである。

⑤ 小さな子どもはかぎられた例をもとに言葉を使っているので、おもしろいまちがいをする。

⑥ ある子は「歯でくちびるをふんじゃった。」と言ったが、どうしてなのだろうか。

⑦ 「ふむ」と「かむ」は、似た言葉なので、覚えた言葉を別の場面で使おうとして失敗した。

⑧ 似たことは外国語を学ぶときにも起こるので、「スープを食べた」と言った留学生がいた。

⑨ これは日本語の「食べる」と英語の「eat」の意味のはんいがちがったからおこった。

⑩ 世界中の言語で、このように一つの言葉のはんいを広げて使うかは変わってくる。

⑪ 母語でも外国語でも、言葉を学ぶときには言葉の広がり、面として理解することが大切だ。

⑫ 言葉の意味を面として考えることは、言葉やものの見方を見直すことにもつながる。

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 なお、この部分については、リライト教材として、漢字に読みがなをつけたものを、姉妹ブログの「よみもの」に用意しています。

言葉の意味が分かること・要点に進む外部リンク

説明文の教材研究(4) 段落関係と要点に進む内部リンク

<意味段落>

 ここでは、5つの意味段落に分かれていると考えてみることにします。

①段落:序論(はじめ)

 知らない言葉に出会ったとき、辞書を引いたり人に聞いたりして意味がわかったと思うことがありますが、本当に言葉がわかったといるのでしょうか。「言葉の意味が分かる」ことはおく深いことです。なぜなら言葉の意味には広がりがあるからです。

②~④段落:本論1(なか1)

 言葉の意味に広がりがあるとはどういうことか、子どもに言葉を教えることで考えてみます。小さな子どもに「コップ」の意味を教えるとき、コップには、色や形、大きさなどさまざまなものがあるため、使い方も教えないといけません。ある一つの言葉が指すものにも、さまざまな特徴があり、似た言葉である「皿」「わん」「湯のみ」「花びん」との関係で決まってきます。

⑤~⑦段落:本論2(なか2)

 小さな子どもはかぎられた例をもとに言葉を使っているので、おもしろいまちがいをします。ある子は「歯でくちびるをふんじゃった。」と言いましたが、これはどうしてなのでしょうか。この子どもは、 「ふむ」と「かむ」は、「あるものを上からおしつける動作」を表す似た言葉なので、覚えた言葉を別の場面で使おうとして失敗したのです。

⑧~⑩段落:本論3(なか3)

 似たことは外国語を学ぶときにも起こります。ある留学生は「朝食にスープを食べました。」と言いました。これは日本語の「食べる」と英語の「eat」の意味のはんいがちがったからおこったことです。同じようなことは、韓国語や中国語など世界中の言語で起こります。一つの言葉をどのはんいまで広げて使うかは、言語によってことなります。

⑪~⑫段落:結論(おわり)

 母語でも外国語でも、言葉を学ぶときには言葉の意味の広がりを考え、そのはんいを理解して、面として理解することが大切です。言葉の意味を面として考えることは、言葉やものの見方を見直すことにもつながりますので、これからも、「言葉の意味は面である」ということについて考えてほしいです。   

<大事な言葉>

 言葉、意味、広がり、特徴、場面、留学生、母語、言語、点、面、見直す、きっかけ、見方

説明文の教材研究(5) 大事な言葉と要約に進む内部リンク

<表現の工夫>

問いかけ

 この説明文ではたくさんの問いかけや疑問文が使われています。

知らない言葉に出会ったとき、あなたはどうしますか。

このとき本当に言葉の意味がわかったのでしょうか。

それでは、言葉の意味に広がりがあるとは、どういうことなのでしょうか。

あなたが、小さな子どもに「コップ」の意味を教えるとしたらどうしますか。

それなのに、どうしてこんな言いまちがいをしたのでしょうか。

それでは、どうしてこのような表現をしたのでしょうか。

あなたは、これまでに「かむ」と「ふむ」が似た意味の言葉だと思ったことはありましたか。

どうしてスープは「食べる」ではなく、「飲む」というのか、考えたことがありましたか。

 このような問いかける言い方(疑説法)によって、読み手にいろいろなことを考えさせることができますし、さらに、読み手の知的好奇心が高まる効果があります。

説明文の教材研究(8) 列挙 反復 問いかけに進む内部リンク

同類の事例の列挙

 この説明文では、いくつかの言い間違いをもとに説明をしています。

 一つは、幼い子どもの「歯でくちびるをふんじゃった。」という間違い。

 もう一つは、留学生の「朝食にスープを食べました。」という間違い。

 この2つの間違った言葉の使い方を通して、言葉の意味の範囲や日本語と英語で似た言葉のもつ範囲の違いについて、読者の理解を助けています。

対比

 日本語と韓国語と中国語の言葉の違いを比べて説明しています。日本語の「持つ」「かかえる」「せおう」のようなよく似た言葉の使い方が、韓国語でも中国語でも少しずつ違い、一つの言葉をどの範囲まで広げて使うか言語によって違うことを説明しています。

 対比するような説明をすることで、説明することの意図が明瞭に読み手に伝わるようになっています。

説明文の教材研究(7) 表現の工夫(対比)に進む内部リンク

イラスト

 この説明文には、3枚のイラストが出てきます。

「さまざまなコップ」と「日本語と英語の違い」「日本語と韓国語と中国語の違い」です。

 言葉で説明することに加えて、イラストを使って視覚的に表現することで、筆者の伝えたいことがよりよくわかるようになっています。

<要旨>

 この説明文では、「言葉の意味が本当にわかるためには、言葉の意味には広がりがあり、面で考えることが大切だ」ということが書かれていると思います。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「説明文の教材研究」で取りあげたいくつかの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

⭐️ ⭐️

なお、 なお、この教材を使って、「要旨のまとめ方」を書いた文章があります。

説明文の学習(2)要旨のまとめ方:光村図書編に進む内部リンク

 この教材については、次のページに私なりの指導計画を作って載せています。

言葉の意味が分かること・指導計画:読者との交流に進む内部リンク

⭐️   ⭐️

 なお、説明文に関係する次の項目についても、併せて読んでください。

説明文の学習(1)要旨のまとめ方に進む内部リンク

説明文の教材研究(1) 教材研究の視点に進む内部リンク

説明文の教材研究(3) 文章の構成に進む内部リンク

説明文の教材研究(6) 引用に進む内部リンク

説明文の教材研究(9) 比喩 数量化 程度差に進む内部リンク

説明文の教材研究(10)なぜ教材研究をするのかに進む内部リンク

⭐️ ⭐️

説明文の指導の仕方(1)指導計画に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(2)2次と3次の指導に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(3)指導計画の実際に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(4)1次の指導の実際に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(5)2次の指導の実際①に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(6)2次の指導の実際②に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(7)筆者の表現の工夫に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(8)3次・調べ学習に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(9)3次・書く時の指導に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(10)に進む内部リンク

⭐️   ⭐️

 他の説明文の教材分析も併せてお読みください。

想像力のスイッチを入れよう 教材分析015に進む内部リンク

天気を予想する 教材分析024に進む内部リンク

「弱いロボット」だからできること 教材分析011に進む内部リンク

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