「世界でいちばんやかましい音」という物語文の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、「世界でいちばんやかましい音」です。
世界でいちばんやかましい音:教材分析
🟠世界でいちばんやかましい音:教材分析
この教材は、学校図書の4年下と東京書籍の5年上に掲載されています。
中学年と高学年の両方の教科書に掲載されている教材は、あまりありません。
<作者>
ベンジャミン・エルキン(Benjamin Elkin)作
松岡享子(まつおか・きょうこ)訳
太田大八(おおた・だいはち)絵(絵本・学校図書)
朝倉めぐみ(あさくら・めぐみ)絵(東京書籍)
出典:「世界でいちばんやかましい音」(こぐま社・1999年)
原文:The Loudest Noise in the World(The Viking Press・1954年)
ベンジャミン・エルキンさんについて
1911年、アメリカ合衆国のボルチモアに生まれます。高校の教師などを経て、執筆活動に入李ました。子どもの時からお話を語ることが好きでした。教師をしていたときも生徒にお話を語っていました。第2次世界大戦が始まり、周囲に語るべき子どもがいなくなった時に、物語を書き始めました。
<題名>
題名は「世界でいちばんやかましい音」です。英語の題名は、「The Loudest Noise in the World」です。この題名から、世界でいちばんやかましい音とはどんな音かな、という興味が湧きます。
題名を読むだけで、どんなお話がとても興味がそそられます。
<設定>
いつ(時):むかし
どこ(場所):ガヤガヤという都
だれ(登場人物):王子様
<人物>
ギャオギャオ……主人公。ガヤガヤの都に住む王子様。
王様……主人公のギャオギャオ王子の父。ガヤガヤの王様。
町の人々……ガヤガヤの国に住む住民。
ひとりのおくさん……小さな町に住むおくさん。
だんなさん……おくさんの夫。
<あらすじ>
・ずいぶん昔、ガヤガヤという世界でいちばんやかましいところがあった。
・町の人々は、自分たちでもやかましい音を立て、そのことを自まんしていた。
・中でもギャオギャオという王子は、とりわけやかましかった。
・王子様の誕生日が近づき、王様はおくり物には何がいいか尋ねた。
・王子様は、「世界でいちばんやかましい音が聞きたい」と望んだ。
・王子様の誕生日に向けて全世界でいっせいにさけぶ計画がつくられた。
・誕生日に「ギャオギャオ王子、お誕生日おめでとう」とさけぶことになった。
・ある日、一人のおくさんが、だんなさんに、自分も世界でいちばんやかましい音を聞きたいという願いを話した。
・その願いは、少しずつ世界の人に広まっていった。
・みんなは、自分だけ声を出さないで、世界でいちばんやかましい音を聞きたいと思った。
・王子様の誕生日がやってきた。
・世界の何億という人が、世界でいちばんやかましい音を聞くために耳をすました。
・その結果、全くのちんもくがおとずれた。
・みんなは、自分だけと思って声を出さなかったので、王子様に悪いことをしたと反省した。
・では、王子様はどう思ったのだろうか?
・王子様は、生まれて初めて、小鳥の歌、木の葉が風にそよぐ音、小川を流れる水の音を聞き、とてもよろこんだ。
・王子様は、静けさと落ち着きを知り、それがすっかり気に入った。
・それから、ガヤガヤの国は、世界でいちばん静かな町になった。
なお、この部分については、リライト教材として、漢字に読みがなをつけたものを、姉妹ブログの「よみもの」に用意しています。
世界でいちばんやかましい音(あらすじ)に進む(外部リンク・よみもの)
<場面>
ここでは、このブログで紹介している「物語を5場面に分け、1場面を30字程度にまとめる」という方法でして、分析をしてみます。
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
①昔、ガヤガヤという、世界でいちばんやかましい国があった。
②王子様は誕生日プレゼントに世界でいちばんやかましい音を望んだ。
③ある町の奥さんは自分もいちばんやかましい音を聞きたいと望んだ。
④世界の人も同じ望みをもつ中、王子様の誕生日の日がやってきた。
⑤ちんもくが訪れ、王子様は喜び、世界でいちばん静かな国になった。
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この物語は、昔、ガヤガヤという世界でいちばんやかましい国があったことから始まっています。
その国には、ギャオギャオという、やかましい音が好きな王子様がいて、誕生日プレゼントに世界でいちばんやかましい音を聞きたいと望みます。
ガヤガヤの国の人々もやかましい音が好きなので、自分だけ音を出す振りをして、王子様と同じように、その音を聞きたいと望みます。
誕生日の日、みんなの思いが一致して、思いがけず、全くの沈黙が訪れてしまいます。
人々は、自分の行いをはじ、王子様に悪いことをしたと反省します。
しかし、王子様は、世界でいちばんやかましい音の代わりに、全く沈黙を手に入れます。
今まで聞いたことのない鳥や風や川の音などの自然の音を聞くことができます。
みんなの利己的な願いが結果として、王子様にすばらしい静かな音をプレゼントすることになります。
それから、人々も、世界でいちばんやかましい町から世界でいちばん静かな町に生まれかわったことを喜びます。
<人物の会話>
この物語には、重要な会話がいくつかあります。
1つめの重要な会話は、王子様と王様の会話です。
誕生日のおくり物は何がいいと尋ねる王様に、王子様は言います。
「ぼく、世界でいちばんやかましい音が聞きたい。」
この言葉は、題名につながる重要な言葉でもあります。
王様と王子様は、大きな音を出す計画をいろいろと練ります。でも、王子様はなかなか納得しません。
王様は、だんだんいらいらし始めます。
「おまえに何かいい考えでもあるのか?」
王子様は、答えます。
「世界中の人が、一人残らず、同時にどなったら、どんな音になるだろうって?」
王様は思います。
「これを実現させたら、歴史に名前が残るわけじゃ。」と。
2つめの重要な会話は、小さな町のおくさんとだんなさんの会話です。
奥さんは自分の望みをだんなさんに話します。
「わたし、世界でいちばんやかましい音というのを、ちょっと聞いてみたい気がするの。」
ここでも、題名に関係する言葉が出てきます。
だんなさんは答えます。
「おまえの言うとおりだ。」
「そのとき、ほかの人といっしょに口だけ開けて、声を出さないでいたら?ほかの連中の出す声が、いったいどんなものが聞けるわけだ。」
そして、その望みは、少しずつ、世界の人へと伝染してしまいます。
<人物の行動>
人の行動は本当にふしぎなものです。他の人に任せて、自分だけはずるをしてもばれないのではないかと思うことがよくあります。
重要なことは他の人に任せて、自分だけは、ずるをしてもいいのではないかと思うことは決して珍しいことではないのかもしれません。
みんなは自分だけは許されるだろうと思って、音を出さないことを選択します。
その結果、全くの沈黙が訪れます。
しかし、悪いことをしたというみんなの思いに反して、王子様には思いもかけないすばらしい自然の音や静けさというプレゼントを渡すことができます。
<主題>
この物語の主題は、何でしょうか?
「いちばんやかましい音」と「静けさと落ち着き」の対比です。
王子様h、「世界でいちばんやかましい音」を望んだ結果、「沈黙と自然の音」という思いがけないプレゼントを受け取ることになります。
<表現の工夫>
この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。
○表現の工夫の1つは、最初と最後の看板の対比でしょう。
・これよりガヤガヤの都
世界でいちばんやかましい町
・ようこそ、ガヤガヤの都へ
世界でいちばん静かな町
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
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他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。
初雪のふる日 教材分析①に進む(内部リンク)
世界一美しいぼくの村 教材分析②に進む(内部リンク)
物語文の教材研究については、次のページもお読みください。
物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む(内部リンク)
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