今回は、単元目標の設定と教材との関係をもう少し詳しく述べていきます。
単元目標と教材の関係
学習指導は、①「子どもの実態」を考え、②「目標を設定」し、③「教材の価値・よさ」を考え、④「指導の方法」を工夫していくことが必要です。
国語科の学習指導案を見ますと、大きく2種類の指導案があります。
1つは、「大造じいさんとがん」や「ごんぎつね」というように主たる教材名をそのまま指導案の単元名(教材名と書く場合もある)にしています。
もう1つは、「興味のある本を紹介しよう」や「読書による異文化交流会をしよう」というように主たる学習活動を単元名にしています。
算数や理科の場合、教材名がそのまま単元名になることが多いのですが、国語の場合は指導者により単元名に揺れがあります。
単元名をどのように書くかで指導者の思いがわかります。
「ごんぎつね」という教材文そのものを教えようとしているのか、「ごんぎつね」という教材文を使いながら、国語科の何らかの能力(知識や技能、思考力・判断力・表現力等)を育てようとしているのかということです。
一般的には、「次、教科書に『ごんぎつね』出てくるけど、どう教えようか?」と考える指導者が多いのかもしれません。
単元全体の学習の目標や流れを考えてから教えるというより、「まず、この時間は全文を読んであげて、感想を書かせよう。次に、意味調べの時間を1時間とろう。それから、指導書に書いてあるように、場面を4つに分けて、教科書についているワークシートを配って、ワークシートに書かせてから、答えあわせをして・・・。」というように、とりあえず毎時間どう学習を進めていこうかと考えることが多いのではないでしょうか。
日々、いろいろな教科を指導し、校務分掌をこなし、日々起こるもめごとに対し、個別指導を行うことで、あっという間に夕方になるという現状では、いたしかたないのかもしれません。
しかし、願わくば、1学期に一回(それでも無理な場合は、1年に一回)は、単元全体の学習の目標や流れを考えてから学習指導を行ってほしいと思います。
教員の時に、物語文を題材に物語文を書く指導をしたことがあります。
2年生の教材にあまんきみこさんの「名前を見てちょうだい」という物語文があります。
お母さんからぼうしに名前を刺繍してもらった「えっちゃん」のお話です。
風でぼうしが、きつね、牛のいる場所に次々に飛ばされていきます。なぜかそれぞれの場所でぼうしの名前が、ぼうしをもっている人物の名前にかわってしまいます。
その度にえっちゃんは「名前を見てちょうだい」と言います。その言葉をいうと風でまたぼうしが飛ばされます。3回目にぼうしをひろった大男はぼうしを食べてしまいます。
おこったえっちゃんは、大きくなって「ぼうしをかえしなさい」とさけびます。大男はしぼんでぼうしが返ってきます。えっちゃんはまた遊びに出かけます。
3回同じようなことが繰り返されるお話です。
この教材を使って「できごとが3回くりかえされるお話を書こう」という実践をしました。
この教材文を子どもと一緒に読み、お話の面白さを楽しみました。
そして、この教材文が同じような会話文や行動が繰り返し出てくることをおさえていきました。
教材を読み終わった後、このお話のように同じようなことが3回繰り返されるお話を書こうと伝えました。人物を考え、場所がどのように変わっていくのかを考え、どのようなことが繰り返されるのか考えました。そして、作文を書いていきました。
この学習では、物語を楽しく読むという目標以外に、物語の設定を真似て、ふしぎなお話を書くという目標を設定し、学習を進めました。
教材を分析し、物語の設定などがわかると、指導書に載っている以外の新たな学習目標や学習活動を設定することが可能です。
なお、この実践で子どもに書いてもらったお話を、子ども向けブログ「よみもの」とこのブログで、配信しています。実践の具体的な内容を、子どもが書いた作品からご覧ください。
「よみもの・みくのふしぎなピアノ・1話」に進む(外部リンク)
みくのふしぎなピアノ(全文)に進む(内部リンク)
また、この実践についてまとめたものは、次のページに書いています。
物語を書く指導(1)に進む(内部リンク)
一度、どのような能力(知識や技能、思考力・判断力・表現力等を育てることができるのかという視点から教材分析してみることをおすすめします。
また、読む力を育てる方法には、次のような方法もあります。
読む力を育てる① 多文種の短い文章をたくさん読むに進む(内部リンク)
読む力を育てる②教科書の作品の姉妹作品を読むに進む(内部リンク)
⭐️ ⭐️
他の物語文の教材研究については、次のページをお読みください。
物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(2)視点(題名)に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む(内部リンク)
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