説明文の教材研究(7)表現の工夫(対比)

指導方法
つばさ
つばさ

表現の工夫とは何か知っていますか?

 説明文の教材研究の仕方について書いています。

 今回は、「表現の工夫(対比)」について書きます。

説明文の教材研究:表現の工夫(対比)

🟠説明文の教材研究:表現の工夫(対比)

 説明文の教材研究の仕方について書いています。

 今回は、まず最初に「表現の工夫」について書きます。

<表現の工夫>

 説明文の筆者は、自分の考えや意見を読み手にわかりやすく伝えるために様々な工夫をして表現します。

「はじめ・なか・おわり」など構成を考えて書くことも表現の工夫ですし、自分がよく知っていることなのに、わざと疑問(問いかけ)の文で書き出すことも表現の工夫にあたります。

 表現の全てが工夫とも言えるのですが、それでは説明になりませんので、もう少し具体的に書きます。

説明文の教材研究(6)引用」でも紹介しましたが、大阪教育大学名誉教授の小田迪夫氏は、「説明文の授業」(田近洵一編・国土社・1996年)の中で、次のような文章を書いています。

 説明表現の方法に関して指導者が知っておくべき、また学習者に気づかせるべき表現について、以下に列記しておく。

① 対比する述べ方によって、説明対象の特質が明瞭に読み手に伝わる

② 同類の事例の列挙によって、述べようとすることの説得性が強まる。

③ 反復的表現によって、述べようとすることの強調点が読み手によく伝わる。

④ 問いかける言い方(疑説法)によって、読み手の知的欲求が高まる。

⑤ 比喩的表現によって、未知、未経験のものごとの理解が容易になる。

⑥ 引用(権威者の文言、格言など)によって、述べようとすることの信頼性が強められる。

⑦ 数量化されたデータを根拠にすることによって、述べようとすることの確かさが強まる。 

⑧ 程度差のあるものごとを取り上げ比較する言い方で、述べようとすることが強調される。

説明文の授業

 小田迪夫氏は、ここに書かれている8つの事柄は、「説明表現の方法に関して指導者が知っておくべき、また学習者に気づかせるべき表現」だとしています。

 私は、これらの表現の仕方を「表現の工夫」と称しています。

 私は、教員をしていた頃、国語の物語文や説明文などの学習指導計画を作成する際には、書かれている内容の読み取り以外に、作者や筆者などがどのような表現方法を駆使して文章を書いているかを理解する時間を設けるようにしていました。

 学習指導計画において、「筆者の表現の工夫をさがそう」という時間を設けるようにしていました。

 具体的な指導例については、次のページをご覧ください。

説明文の指導の仕方(7)に進む内部リンク

物語を書く指導(5) 指導の工夫③に進む内部リンク

 私が考える「筆者の表現の工夫」は、小田迪夫氏が述べている8つだけではありません。

「対比する述べ方」「同類の事例の列挙」「反復的表現」「問いかける言い方(擬説法)」「比喩的表現」「引用」「数値化されたデータ」「程度差のあるものごとを取り上げ比較する言い方」という8つ以外にどのようなものがあるでしょうか。

 私は、先ほど紹介した「説明文の指導の仕方(7)」の中で、東京書籍の3年生の教科書に掲載されている「パラリンピックが目指すもの」という説明文の「表現の工夫」として、次の10個をとりあげています。

① パラリンピックよりもよく知られているオリンピックから書き出している。

② オリンピックとパラリンピックを比べながら述べている。

③ パラリンピックの競技には、オリンピックの競技のルールの一部を工夫している競技とパラリンピックにしかない競技の2種類があることを説明している。

④ 2種類の競技の代表例として、水泳とポッチャを取り上げている。

⑤ 水泳とポッチャの最初には、小見出しをつけている。

⑥ 「たとえば」という言葉を使い、具体的に説明している。

⑦ 言葉を強調するときに「自由形」「勇気」「公平」などのように「」(かぎかっこ)を使っている。

⑧ 二〇二〇年、四年に一度、一九六四年などの具体的な数字を使っている。

⑨ 分かりやすく説明するために、写真や図など、文字以外の情報も使っている。

⑩ 難しい漢字には、読みがなをつけている。

 いかかでしょうか。

 説明文の教材研究をする際には、「表現の工夫には何があるか」という視点で、教材を見ることもよい方法だと思います。

 すぐに見つからない場合は、小田迪夫氏の挙げている8つの項目を参考にして、自分が行おうとしている説明文を読むのもよい方法だと思いますが、いかがでしょうか?

<対比>

 ここでは、具体的に、いくつかの説明文を使って小田迪夫氏が紹介している「対比する述べ方によって、説明対象の特質が明瞭に読み手に伝わる」ことについて考えてみることにします。

対比する述べ方」を説明するために、ふさわしい教材として、東京書籍の4年生の下巻の教科書に掲載されている「くらしの中の和と洋」があります。

 この説明文は、題名からわかるように日本の暮らしの中にある「和式」と「洋式」の違いを述べている説明文です。

 和室と洋室を取り上げて説明をしています。和室だけを説明する場合よりも、洋室と比べながら説明することで、「和室と洋室」、ひいては、「和式と洋式」の「特質が明瞭に読み手に伝わる」ようになっています。

 また、同じ4年生の説明文として、光村図書の4年生の下巻の教科書に「世界にほこる和紙」という教材が掲載されています。

 この説明文では、主に「和紙」について書かれていますが、時々、私たちが日常生活でよく利用している「洋紙」についても触れられています。よく知っている「洋紙」をとりあげて説明することで、「和紙」の「特性が明瞭に読み手に伝わる」ようになっています。

 2つの説明文は、共に「和」と「洋」を比べて説明していますが、その説明の仕方には少し違いがあります。1つは、「和と洋」をほぼ同じように比べながら説明しています。もう1つは、「和」を中心に、時折、「洋」について軽く触れながら、2つを比べて説明しています。

対比する述べ方の文章は、書かれた目的に応じて、さまざまな書き方をしています。

対比する述べ方の際に合わせて工夫されているもののに、写真や絵、図や表があります。文章だけを示される時よりも、写真や絵などを合わせて示すことで、理解がしやすくなります。写真や絵の効果について話し合わせることも時には必要です。

対比する述べ方」は、教師が何かの文章を書く時にも、とても便利です。

 例えば、アメリカの大統領の決め方を説明するときに、日本の総理大臣の決め方を合わせて説明すると、両方について分かるだけでなく、それぞれの特質がよくわかります。

 そして、この「対比する述べ方」は、子どもが説明文を作文として書く時にも身につけさせたい表現の工夫の1つです。自分の理解した表現方法は、自分の表現に使うことができるようになります。

 なお、関係する次の項目についても、併せて読んでください。

説明文の教材研究(8) 列挙 反復 問いかけに進む内部リンク

説明文の教材研究(9)比喩 数量化 程度差に進む内部リンク

説明文の教材研究(10)なぜ教材研究をするのかに進む内部リンク

説明文の教材研究(1) 教材研究の視点に戻る内部リンク

説明文の教材研究(2) はじめとおわりに戻る内部リンク

物語文の教材研究の仕方(1)に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(1)に進む内部リンク

物語文の指導の仕方(1)に進む内部リンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました