「ずうっと、ずっと、大すきだよ」の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、1年生の教科書に載っている「ずうっと、ずっと、大すきだよ」の教材分析をします。
ずうっと、ずっと、大すきだよ:教材分析
🟠ずうっと、ずっと、大すきだよ:教材分析
この作品は、光村図書の1年生の教科書に載っています。
<作者>
ハンス・ウイルヘルムさん作・絵
久山太市(ひさやま・たいち)さん訳
出典:「ずーっとずっと,だいすきだよ:I’ll Always Love You」(評論社・1988年)
ハンス・ウイルヘルムさん(Hans Wilhelm)について
1945年9月生まれです。ドイツ系アメリカ人の作家、児童書の著者、イラストレーター、アーティストです。
主に子ども向けの本を書きました。200冊以上の本で文章を書いたり、イラストを描いたりしています。 それらは 30以上の言語に翻訳されていて、数多くの国際的な賞を受賞しています。 それらの多くはテレビアニメ化もされています。
ハンスさんの最も有名な本は、「I’ll Always Love You」です。他に「Bunny Trouble」シリーズ、「Tyrone The Horrible」シリーズ、「Waldo」シリーズなどがあります。
ハンスさんは、ドイツのブレーメンで生まれ育ちました。 芸術とビジネスを学んだ後、12年間南アフリカに移り、そこで働き、絵を描き、風刺劇団のメンバーとして活動しました。
彼の執筆活動は、バリ、スペイン、イギリス、その他多くの場所に住んでいた世界一周の2年の旅に出たときに始まりました。
<題名>
題名は「ずうっと、ずっと、大すきだよ」です。
日本で出版された絵本では、「ずーっとずっとだいすきだよ」になっていて、題名が違っています。小学校で教える平仮名の表記では、長音の場合、長音記号「ー」は使いません。そこで、このような変更が教科書会社によってなされたものだと思います。
<設定>
いつ(時):(エルフと過ごした時間)
どこ(場所):ぼくの家
だれ(登場人物):ぼくと犬のエルフ
<人物>
エルフ……せかいでいちばんすばらしい犬。原文では、Elfie(エルフィー)。牝犬。
(牡犬だと思っていましたが、原文ではsheを使っています。)
ぼく……この文を書いている人。エルフといっしょに大きくなった。
にいさん……ぼくのにいさん。
いもうと……ぼくのいもうと。
じゅういさん……エルフを見てくれたじゅういさん
<あらすじ>
・エルフのことを話します。エルフは、せかいでいちばんすばらしい犬です。
・ぼくたちは、いっしょに大きくなった。
・ぼくは、エルフのおなかをまくらにして、いっしょにゆめを見た。
・にいさんやいもうとも、エルフがすきだった。でも、エルフはぼくの犬。
・エルフといっしょにあそんだ。りすをおいかけ、花だんをほりかえし、わるさをした。
・わるさをすると、おこったが、かぞくはみんなエルフが大すきだった。
・でも、だれも、(ぼくをのぞいて)すきだといってやらなかった。
・ぼくはせがのび、エルフはふとった。
・エルフは年をとり、ねることがおおくなり、さんぽをいやがった。
・しんぱいして、じゅういさんにつれていった。じゅういさんにもできることはなかった。
・エルフは、かいだんも上れなくなった。(エルフをだき、かいだんを上る絵。)
・エルフがねるまえには、かならず、「ずっと、大すきだよ。」といった。
・あるあさ、目をさますと、エルフは、よるのあいだにしんでいた。
・エルフをにわにうめ、みんなないた。
・にいさんもいもうともエルフがすきだったが、すきって、いってやらなかった。
・ぼくはかなしかったけど、まいばん、ずうっとだいすきだといっていたから、きがらくだった。
・となりの子が、子犬をくれるといったけど、もらわなかった。
・かわりに、ぼくが、エルフのバスケットをあげた。
・いつか、ぼくも、ほかの犬や子ねこやきんぎょをかうだろう。
・なにをかっても、きっと「ずうっと、ずっと、大すきだよ」といってやるんだ。
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
<場面>
物語を、このブログで紹介している5場面に分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。
① せかいいちすばらしい犬のエルフの話をします。ぼくたちはいっしょに大きくなった。
② エルフとぼくはまい日あそんだ。かぞくもエルフがすきだったけど、すきといわなかった。
③ ときがたち、エルフは年をとり、ねるまえに「ずうっと、大すきだよ」とぼくはいった。
④ あるあさ、エルフはしんだ。かなしかったけど、すきっていってたので気がらくだった。
⑤ 犬をくれることはことわった。いつかなにかをかっても「ずっと大すきだよ」といおう。
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この物語は、犬のエルフのことが大すきだったぼくの話です。
<人物の会話>
ぼくがエルフにいう会話はとても重要です。
・年をとったエルフとねる前に、ぼくはいつも言います。
「エルフ、ずうっと、大すきだよ。」I’ll always love you.
英語では、willが使われています。ぼくは、「今だけ、エルフのことが大すきなのではなく、将来もずっと大すきだよ。」と言っています。
・同じ会話は、エルフが死んでしまい、かなしい時にも出てきます。とても悲しかったけれども、気持ちが楽でした。なぜかというと、いつもこう言っていたからです。
「ずうっと、大すきだよ。」I’ll always love you.
・同じ会話文は、将来飼うかもしれない犬や子ねこや金魚に対しても使われています。
「ずうっと、ずっと、大すきだよ。」I’ll always love you.
ここで取りあげた訳文は、3回とも少しずつ違います。しかし、原文では、全く同じ文になっています。「I’ll always love you.」です。
そして、最後の会話文の訳文が、この物語の題名になっています。
<人物の行動>
この物語では、家族はみんなエルフのことがすきだったけれども、ぼく以外がエルフに対してすきだと言わなかったことが書かれています。
・すきなら、すきと、いってやれば、よかったのに、だれも、いってやらなかった。いわなくても、わかるとおもっていたんだね。
この文章では、もしかすると、ぼくも好きと言っていなかったように、読者に受け取られるかもしれません。しかし、原文では、次のようになっています。
「The trouble was, no one told her except me.」です。直訳すると、「問題は、ぼく以外、だれも彼女(エルフ)に(好きだと)言わなかったことです。」
<主題>
この物語の主題は、何でしょうか?
「愛するペットには、声に出してきちんと『いつまでも、ずっと、好きだよ』と言おう」ということかもしれません。
<表現の工夫>
この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。ここでは1つだけ取り上げます。
1つの大きな工夫は、106ページにある最初の2行です。
この2行だけ、文末が敬体(です、ます)になっています。
次の107ページからは、文末は、常体(だ、である)になっています。
なぜ、このような違いがあるのでしょうか。それは、原文がそうなっているからです。
原文では、この2行は、次のようになっています。
「This is a story about Elfieーthe best dog in the whole world.」直訳すると、「これは、全世界で最高の犬であるエルフィーの物語です。」になります。
この直訳を、「エルフのことをはなします。エルフは、せかいでいちばんすばらしい犬です。」と翻訳家の久山太市さんは、訳されています。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
なお、原文の読み聞かせの動画は、次のところにあります。
I’ll Always Love Youに進む(外部リンク・英文)
⭐️ ⭐️
私は、子ども用のブログ「よみもの」で子どもが読めるような簡単な文章で、犬に関係する文章をたくさん作っています。よければ、お読みください。
ダックスフンドに進む(よみもの) ポメラニアンに進む(よみもの)
他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。
スイミー 教材分析030に進む(内部リンク)
かさこじぞう 教材分析007に進む(内部リンク)
スーホの白い馬 教材分析012に進む(内部リンク)
おにたのぼうし 教材分析018に進む(内部リンク)
モチモチの木 教材分析019に進む(内部リンク)
物語文の教材研究については、次のページもお読みください。
物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む(内部リンク)
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