ブックトークをするのも面白い読書体験だと思います。
読書をすることはとても意味のあることです。
今回は、光村図書の6年生の教科書に載っている「私と本」という単元の学習についてです。
私と本:ブックトーク
🟠私と本:ブックトーク
この「私と本」という単元は、光村図書の6年生の教科書に掲載されている単元です。
<読書経験>
小学校も高学年になるとかなりの数の本を読む経験をしている子どもがいます。
とはいえ、その読書経験は子どもによりかなり差があります。
例えば、サッカーのボールの扱いに例をとって考えてみましょう。
幼稚園や低学年の子どもの頃から、サッカークラブなどに入部してサッカーに親しみ、日々、サッカーボールに触れ、遊んだり、練習を繰り返したりしている子どもは、リフティングが100回以上できる子どももいるでしょう。ボールを自由自在に扱うようになっている子どももいるかもしれません。しかし、学校の体育の授業で、サッカーをしたことしかない子どもでは、ボールをきちんとけることもなかなかできないでしょう。
同じ小学校の6年生の子どもでも、今までの経験によって、ボールの扱いは全く違います。
これと同じように、日常的に日々本に触れ、親しんできた子どもであれば、積極的に進んで図書館を訪れたり、本屋さんで好きな本を買ったりして、自分の好きな本を読むことに楽しみやよさを感じているでしょう。しかし、子どもの中には、学校の国語の時間や図書の時間にしか本を読まない子どももたくさんいます。このような子どもに読書経験を聞いても、あまり思い浮かばないことも考えられます。
このように、子どもの読書経験は、同じ6年生であってもずいぶん違ってきます。
とはいえ、この単元に書かれているように、子どもが自分の読書経験を振り返る学習をすることはとても意味があることです。
光村図書の6年生のこの単元「私と本」では、学習の進め方として、次のような例を挙げています。
1.自分と本との関わりを考える。
2.印象深い本について、友達と話す。
3.本のテーマに着目して、読み広げる。
4.テーマを決めて、ブックトークをする。
当然、このような学習の進め方でもよいと思います。
しかし、もっと「ブックトーク」に特化した単元を構成してもいいように感じます。
<ブックトークとは>
ブックトークとは、あるテーマに沿って、何冊かの様々な種類の本を紹介することです。
多くの場合、教師や学校司書などが国語の授業などの中で行うことが多い取り組みです。ただ、ブックトークを見聞きした経験のある高学年の子どもであれば、自分が紹介する本の数を絞れば、ブックトークをすることもできるように思います。
例え、子どもが選ぶテーマが同じであったとしても、本を探す経験は、子どもが今後の読書生活を広げるきっかけになると思います。
今回は、次のような単元の流れを考えてみました。
1.教員の行うブックトークを見聞きし、ブックトークを知る。
2.ブックトークのテーマを決める。
3.テーマに合わせた本を3冊程度選ぶ。
4.紹介する本の順番などを考え、簡単なシナリオを書く。
5.少人数でブックトークを何回がする。
この単元の流れは、あくまで一例です。自分の学級に合わせて授業の流れを考えてもらうとよいように思います。
また、この単元の流れで時間がかかるのは、3のテーマに合わせた本を選ぶことです。これを夏休みなどの長期休業に合わせるなどの工夫をすると、時間をかけて本を選んだり、本を読んだりすることができるかもしれません。
普段の国語の授業のように、短い期間の間に単元を終わらせるのではなく、少し長い期間をかけて単元を進めるという形式も考えられると思います。
<1.教員の行うブックトークを見聞きし、ブックトークを知る>
まず、ブックトークを見聞きした経験がなければ、子どもはブックトークをすることなどできないと思います。
ブックトークを見聞きした経験がなければ、教員が自分なりのテーマを決めて、ブックトークを子どもに示してみることが大切なように思います。
ここでは、「恐竜」というテーマで考えたブックトークの例を示してみます。
恐竜は好きですか?
私は、恐竜をテーマにしたブックトークをします。恐竜をテーマにしたのは、3年生の時に国語の時間に「鳥になったきょうりゅう」という話を読んで、恐竜に興味をもつようになったからです。
紹介する1冊めは、図鑑の「恐竜」です。この本では、様々な恐竜について詳しく説明しています。この本を通して、私は、たくさんの恐竜の名前や特徴などを覚えることができました。今でも時々この本を見ては、楽しんでいます。
2冊めは、宮西達也さんの書かれた「おまえうまそうだな」です。この絵本には、アンキロサウルスの赤ちゃんと肉食恐竜のティラノサウルスが出てきます。今にも、ティラノサウルスに赤ちゃん恐竜が食べられそうになった時、事件が起こります。どのような出来事が起こったかについては、ぜひこの本を読んでみてください。
3冊めは、詩人の谷川俊太郎さんとイラストレーターの下田昌克さんの作った「恐竜がいた」という本です。詩人の谷川さんの詩に下田さんの絵がとてもかっこよくそえられています。この本の中に出てくる好きな詩を読みます。(「ぼくのきょうりゅう」という詩を読む)
わたしは、恐竜がとても好きです。本当にいたらきっとこわいのだろうけれども、それでも本当の恐竜に会ってみたいという気持ちはどんどんふくらみます。どれもとても面白い本です。ぜひ読んでみてください。
まず、どのようなことをするのかを知ることはとても大切なことです。
この例のような教師のブックトークを見聞きすることで、子どもは、ブックトークに興味を持つようになると思います。
なお、今回、ブックトークに使った本は次の通りです。
「新版恐竜 (小学館の図鑑NEO) 」(冨田幸光著・小学館・2014年)
「おまえうまそうだな」(宮西達也著・ポプラ社・2003年)
「恐竜がいた」(谷川俊太郎著・下田昌克絵・スイッチパブリッシング・2016年)
<2.ブックトークのテーマを決める>
ブックトークのテーマは、自分の興味・関心のあることであれば、なんでもいいと思います。
恐竜、犬、猫、魔法、宇宙、サッカーなどの好きなスポーツなど自分の興味があることなら何でもいいと思います。
まず、自分の好きなテーマをひとつ決めることからブックトークの準備が始まります。
<3.テーマに合わせた本を3冊程度選ぶ>
次にすることは、テーマに合わせた本を探すことです。
この時に活用するとよい方法が2つあります。
1つは、実際に学校の図書館や近くの公立図書館に出かけて本を探すことです。本屋さんに行くという方法もありますが、本を買うためには費用がかかりますので、学校の授業ではあまりお勧めできません。できれば、今回の学習は、学校の授業でするということを考えれば、家に既にある本を除いて、新たに買うという行為は禁止してもいいかもしれません。少しハードルを上げるということも時には必要だと思います。
もう1つは、ネット環境を使って、地域の公立図書館の「本を探す」検索機能を使うことです。
わたしも今回、先程のブックトークを考える際に利用しました。
このように読みたい本を探すために様々な検索機能を活用できる能力を高めることはとても大切なことです。
小学校の6年生であれば、よほど遠くに公立図書館があるのでなければ、本の予約をした上で、本を借りに行くこともできると思います。
そして、自分の興味がある本の中から、今回のブックトークに使う本を3冊選ぶことにします。
あまり本の数が多すぎると、一人のブックトークが長くなりすぎますので、3冊程度が適当だと思います。
ただ、読書があまり得意でない子どもがいるかもしれませんから、そのような子どもに対しては、絶対に3冊と決めつけるのではなく、簡単な絵本を紹介してあげたり、場合によっては2冊でもいいようにしたりしてもいいように思います。
子どもの実態に合わせて支援するということはとても大切です。
<4.紹介する本の順番などを考え、簡単なシナリオを書く>
教員の行なった原稿などを示して、自分なりのシナリオを書く時間をもちます。
原稿用紙に実際に話す通りに台本を書いてもいいでしょう。
自分の話す内容を箇条書きにしてもいいでしょう。
要は、自分なりにブックトークができる心構えや準備ができれば、大丈夫です。
その際、次のようなブックトークの手法を教えておくのことも大切です。
・実際に本(表紙)を見せる。
・必要に応じて、中のページを見せる。
・気に入った表現などを実際に声に出して読む。
・シナリオは作っていても、ブックトークをする時には、シナリオを読むのではなく、声を出すときには、シナリオから目を離し、聞いている人の方を見るようにする。
<5.少人数でブックトークを何回がする>
学級全体の前でブックトークをするようにすると、ブックトークをする機会は1回しかありません。でも4~6人程度の少人数でブックトークをすると、聞き手を変えて、何回かブックトークをする機会ができます。
このような学習では、何回か同じことができる機会を設けるというのは大切なことのように思います。繰り返し行うことで、緊張することも減りますし、スムーズに自分なりのブックトークができるようになると思います。
なお、この単元に載っている「森へ」という文章の教材分析を次のページに載せています。
森へ 教材分析070に進む(内部リンク)
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