作文のすすめ(19)提案文

指導方法
つばさ
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提案文の書き方について知りたいです。

 作文の文種の1つに提案文があります。

 今回は、「提案文」について書きます。

提案文

🟠提案文

<提案すること>

 小学校の作文の1つに提案文の指導があります。

 小学校学習指導要領には、提案文に関する説明として、次のような記載があります。

 ア 事象を説明したり意見を述べたりするなど,考えたことや伝えたいことを書く活動

 考えたことや伝えたいことを文章に書く言語活動を例示している。  

 事象を説明する文章を書くとは,対象となる事象について,表面に表れている事実を説明するのみならず,その事実が生起した背景や原因,経過などを整理して書き表すことである。例えば,調査などを通して明らかになったことを解説する文章などが考えられる。  

 意見を述べる文章を書くとは,理由や事例を明確にしながら,筋道を立てて自分の考えを述べることである。例えば,自分の考えを,異なる立場の読み手に向けて主張する文章や,自分たちの生活をより良いものにするために提案する文章,事物のよさを多くの人に推薦する文章などを書くことが考えられる。


小学校学習指導要領解説 国語編

提案文」という表現は、使われていませんが、「異なる立場の読み手に向けて主張する文章」「自分達の生活をよりよくするものにするために提案する文章」「事物の良さを多くの人に推薦する文章」の3つの文章を例として挙げています。

 子どもも高学年になると、社会に対する関心も高くなり、さまざまなことに関して疑問や問題意識をもち、自分なりの考えや意見をもち、そのことを他者に向けて提案することができるようになります。

 ただ、意見をもつだけでなく、できたらその思いを他者に向けて発信できるようになると素晴らしいと思います。

<SDGs(持続可能な開発問題)>

 今の世の中に限ったことではありませんが、私たちの身の回りには様々な問題があります。

 世界の多くの人々もそのことに気づいていて、国際連盟では、2015年9月に国連総会で、2030年までに、SDGs(持続可能な開発目標)という次のような17の目標を採択しました。

 1.貧困をなくそう:No poverty

 2.飢餓をゼロに:Zero hunger

 3.すべての人に健康と福祉を:Good health and well-being 

 4. 質の高い教育をみんなに:Quality education

 5.ジェンダー平等を実現しよう:Gender equality

 6. 安全な水とトイレを世界に:Clean water and sanitation

 7.エネルギーをみんなに、そしてクリーンに:Affordable and clean energy 

 8. 働きがいも経済成長も:Decent work and economic growth

 9. 産業と技術革新の基盤を作ろう:Industry , innovation and infrastructure

 10.人や国の不平等をなくそう:Reduced inequalities

 11.住み続けられるまちづくりを:Sustainable cities and communities

 12.つくる責任、つかう責任:Responsible consumption and production

 13.気候変動に具体的な対策を:Climate action

 14.海の豊さを守ろう:Life below water

 15.海の豊さも守ろう:Life below water

 16.平和と公正をすべての人に:Peace , justice and strong institutions

 17.パートナーシップで目標を達成しよう:Partnerships for the goals 

 今を生きる者のつとめとして、そのような問題があることを知り、自分のできることに取り組むことはとても大切なことです。

 小学生の子どもにどこまで実効性のあることができるかわかりませんが、問題を知り、自分の頭で考え、自分の考えを表出することはとても重要なことだと思います。

 光村図書の6年生の教科書では、「私たちにできること」という教材名で、「具体的な事実や考えをもとに、提案する文章を書こう」という単元を設けています。

 なお、私が子ども向けに書いているよみもの」では、「エスディジーズ SDGs」や「働く子ども」「に関して、漢字に読みがなをつけた簡単な文章を用意しています。

エスディジーズ SDGsに進む外部リンク・よみもの

働く子ども working childrenに進む外部リンク・よみもの

食物ロス Food Lossに進む外部リンク・よみもの

<学習の進め方>

 提案文を書くための大まかな学習の進め方は、次のようになると思います。これは、あくまで私が考える進め方です。光村図書の教科書には、違う進め方が記載されていますし、学級の実態によって、当然、違う進め方もあると思います。

1 身の回りにある問題に気づき、何ができるか考える。

2 資料を集める。

3 提案文の構成を考える。

4 提案文を記述する。

5 提案文を読んでもらう。

6 学習のまとめをする。

<1.身の回りにある問題に気づき、何ができるか考える>

 このような学習においては、子どもの関心や意欲はとても大切だと思います。

 多くの学級では、教科書に「提案文を書こう」という単元があるので取り組むことになることが多いのかもしれません。

 しかし、子どもが問題意識をもち、少しでも身の回りにある問題について、何らかの具体的な提案をしたいと考えるかどうかで、作文の中身は大きく変わってくると思います。

 教科書に書かれた「私たちにできること」という文章を読むことで、さらっと導入することもできると思います。

 最近耳にすることの多い「SDGs」とは何か知っているか聞き、SDGsについて簡単に調べることで、世界には様々な問題があり、多くの人が問題解決に向けて取り組んでいること、自分たちでも何か提案できることはないか考えてみようと投げかけるという方法で導入することもできると思います。

 また、提案文を誰に向けて書くのかということも最初に明確にしておく必要もあるかもしれません。読み手は、学級の友だちなのか、家族なのか、学校の他の学級や学年の人に向けてなのか、世の中の多くの人に向けてなのかについても、最初に明らかにしておくことは大切だと思います。

 読み手を学級で揃える方法もあるでしょうし、子ども一人一人が違うという選択をすることもできると思います。

<2.資料を集める>

 このような提案文を書くためには、資料を集めることが一番むずかしいことのひとつでしょう。

 教科書には、「本やインターネットで調べたり、インタビューをしたりして」とさらっと書いていますが、簡単なことではありません。

 インターネットで調べて、自分の関心のある内容の書いてあるサイトにたどり着いたとしても、多くの場合、子どもたちは、戸惑うことになります。書かれている内容が難しすぎることが多かったり、読めない漢字がたくさん出てきて、理解できないことも多いからです。

 学校にある本や図書などの場合は、子ども向けに内容が整理されていたり漢字に読みがながついていたりするので読めるかもしれませんが、学級の子どもの人数分ふさわしい本や図書が揃っているとは限りません。

 前もって地域の図書館などと連携して必要な本を借りて置く必要があるかもしれません。

<3.提案文の構成を考える>

 作文を書く場合、大まかな書き方を示すということはとても大切なことです。

 多くの子どもが作文に苦手意識をもつことのひとつに、「何をどのように書けばいいかわからない」ということがあります。今回、提案文というあまりなじみのない文章を書く場合、「何」については、資料を集めることで解決できます。

 そして、「どのように」ということに関しては、ひとつの典型的な型を示すことで、子どもは安心することができます。

 教員の示した型通りに書いてもいいでしょうし、自分なりにアレンジを加えて書いてもいいと思います。

 ただ、子どもに「自由に書いてごらん。」と伝えるよりも、教科書に示しているような「①提案のきっかけ(きっかけとなった経験、現状や問題点など)、②提案(具体的な内容、提案が実現したときの効果)、③まとめ」(光村図書・6年生)という型を示すことは、とてもよい方法だと思います。

<4.提案文を記述する>

 実際の記述に入る前には、教員が子ども一人一人に対して、資料がきちんと揃っていること、構成がしっかり決まっていることを確かめておく必要があります。

 何をどのように書くのか決まっていないのに、時間だけを与えても書けるわけはありません。

この2つがきちんと決まっていれば、子どもはほっておいても書き始めることになります。

 多くの作文の時間の成否は、子どもが作文を書き始める前に、子どもの頭の中に書きたいことがある状態になっているかどうかです。

 何も書きたいことがないのに、子どもの鉛筆が動き出すことなんてありません。

 私たち教員の役割は、子どもが作文を書き出す前に、子どもを書きたいことがある状態に導くことです。

<5.提案文を読んでもらう>

 最初に考えた相手に向けて読んでもらうことが大切でしょう。ただ、学級で学習をしていますので、書いた提案文を学級の友だちで読み合い、アドバイスをし合い、推敲するという方法を取ることもできるかもしれません。

 学級で学ぶことのよさのひとつは、自分と同じような能力で、自分と比較的よく似たことを考える友だちがたくさんいて、その友だちの感想やアドバイスをもらえるということです。

 学年に割り当てている掲示板に提案文を掲示するという方法を取ることができるかもしれません。実際に書いた作文を読んでほしい人に届けるという方法を取ることができるかもしれません。新聞社や役所などに送るという方法を取ることができるかもしれません。誰かに渡す場合は、評価をする必要があるでしょうから、コピーを取っておくことも必要です。

<6.学習のまとめをする>

 提案文を書いた感想を簡単に書くこともできるでしょうし、学級の友だちと読み合い、感想を伝え合うことができるかもしれません。Flipというソフトを使って相互交流をしてもいいかもしれません。

Flipの活用(相互鑑賞・交流) 情報教育に進む内部リンク

⭐️ ⭐️

 作文の指導については、次のページもお読みください。

作文のすすめ(1)400字作文に進む内部リンク

作文のすすめ(2)400字作文の実際に進む内部リンク

作文のすすめ(3)指導前に、自分が書いてみるに進む内部リンク

作文のすすめ(4)書きたいことがある状態にするに進む内部リンク

作文のすすめ(5)構想表についてに進む内部リンク

作文のすすめ(6)自由作文に進む内部リンク

作文のすすめ(7)子どもの発達段階を知るに進む内部リンク

作文のすすめ(8)低学年向けに進む内部リンク

作文のすすめ(9)中学年向けに進む内部リンク

作文のすすめ(10)高学年向けに進む内部リンク

作文のすすめ(11)卒業文集に進む内部リンク

作文のすすめ(12)4こま漫画に進む内部リンク

作文のすすめ(13)意見文に進む内部リンク

作文のすすめ(14)感想文に進む内部リンク

作文のすすめ(15)縦書きと横書きに進む内部リンク

作文のすすめ(16) 日記の指導に進む内部リンク

作文のすすめ(17)系統を考えた指導に進む内部リンク

作文のすすめ(18) お気に入りの表現に進む内部リンク

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