作文のすすめ(15)縦書きと横書き

指導方法

 

つばさ
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縦書きと横書きを上手に書き分ける方法について知りたいです。

 日本語の素晴らしいところの1つに縦書きも横書きもできることがあります。

 今回は「縦書きと横書き」について書きます。

縦書きと横書き

🟠縦書きと横書き

<日本語の特性>

 日本語の特性の1つに、文字を縦書きでも横書きでもできることがあります。

 日本語で使われることの多い文字には、漢字、平仮名、片仮名、ローマ字などがあります。

 ローマ字を除いて、漢字も、平仮名も、片仮名も、四角の中にきちんとおさまりますので、縦書きでも横書きでも書くことができ、読むことができます。

 このような縦書きも横書きも自在に使うことのできる文字は、世界でもあまり多くありません。

 元々、日本語は、中国語の漢字の影響を受けていますので、縦書きが基本です。日本語と同じように中国の影響を大きく受けている韓国語のハングルも基本は縦書きです。しかし、最近は、中国語も韓国語も英語などの西洋の文化を取り入れていますので、日本語と同じように横書きで書くことができます。

 日本の小学校で使う教科書も最近は、国語や書写、道徳の教科書などを除いて、横書きで書かれた教科書が一般的です。

 しかし、日本社会では、縦書きが一般的なものもたくさんあります。

 詩や短歌、俳句、小説などの文芸作品、新聞、漫画などは、縦書きが一般的です。

 週刊誌などの雑誌などでは、縦書きのものも多いですが、横書きのものもあります。

 絵本などは、横書きのものも縦書きのものもありますが、最近は、横書きのものが増えてきているような印象があります。

 このブログも横書きで書いています。

 小学校で発行している学校だよりや学年だよりも横書きが一般的かもしれません。しかし、各学期に1回程度出すことの多い学校新聞やPTA新聞などでは、まだまだ縦書きが一般的なのかもしれません。

 6年生が卒業の時に編集して出版することの多い卒業文集なども縦書きが多いように思います。

 国語の教科書は縦書きなのですが、指導の根拠となる小学校学習指導要領は、横書きになっています。

<世界の横書きと縦書き>

 西洋の文化では、横書きが基本です。英語も、フランス語も、ドイツ語も横書きです。文字は、左から右に向かって書き進めます。

 中国の文化では、縦書きが基本です。中国の漢字の影響を強く受けている日本語では、昔は縦書きが基本でした。この場合、文字は、右上から下に向かって書き、続きは、左に向かいます。

 しかし、世界は広いのでいろいろな書き方があります。

 モンゴル語は縦書きですが、左から右に書き進めます。

 アラビア語は横書きですが、右から左に書き進めます。

 世界の文化には、いろいろあって面白いです。

<縦書きと横書きの違い>

 日本語の場合、何かを書いて発表する時に、縦書きにするのか、横書きにするか、最初に決めないといけないのは、考えてみると不思議な行為なのかもしれません。

 しかし、どちらにしてもよいというのは、日本語の懐の広い、素晴らしいよさとも言えます。

 日本語では、縦書きでも横書きで書いてもいいのですが、全く同じというわけではありません。

 文章の中に、西洋の言葉(英語やフランス語など)や数字がたくさん出てくる場合、縦書きよりも横書きの方が使い勝手はよさそうです。

 数字は、横に書いた場合、たくさんの文字を書くことができます。大きな数字を縦書きで書こうとすると少し工夫がいります。しかし、漢数字を上手に使うと、すごく大きな桁数の数字をほんのわずかな文字数で表すことができます。

<縦書きの際の留意点>

 日本語の文章を縦書きで書く場合、気をつけないといけないのは、数字の扱いです。基本的には、漢数字を使うことが一般的です。

 しかし、絶対漢数字を使わないといけないわけではなさそうです。新聞などでは、多くの場合、漢数字よりも数字を使っています

 子どもの中には、縦書きの場合、漢数字を使うのが一般的であるということに気づいていない子どもがたくさんいます。

 できるだけ低学年の段階で、縦書きでは、漢数字を使うのが一般的であるというルールを教える方がよいと思います。

 多くの国語の教科書では、時折、横書きの文章を上手に取り入れて、横書きと縦書きの特性がわかるようになっています。しかし、全ての学年の教科書でそのような説明がていねいにされているわけではないように思います。

 片仮名の長音の表記「ー」も縦書きの場合、「|」にするのが一般的ですが、この記号についてもきちんとわかりやすく毎年子どもたちに教えているのでしょうか。

 多くの教員は、なぜか子どもには一回説明すると、子どもは理解するものだと思っている人がいます。しかし、そんなに簡単に定着するわけではありません。

 子どもに何かをきちんと理解させようとすると、時と場所と形を変えて20回程度伝えることが大切だと聞いたことがあります。

 縦書きの際には、漢数字を使うことが一般的で、横書きの際には、数字を使うことが一般的であるということを、折に触れ伝えることが大切だと思います。

 縦書きと横書きでは、小さな文字である「っ」「ゃ」「ゅ」「ょ」の位置も微妙に違います

 このこともていねいに教えることが大切だと思います。

<横書きの際の留意点>

 この文章を書くために、インターネットでいろいろ検索していると、とても興味深い論文を見つけることができました。

 茨城大学教育実践研究 34(2015)に掲載されている齋木久美さんと来栖愛美さんによって書かれた「横書き書字指導に関する研究― 指導の実態と課題―」という論文です。ぜひ、一読していただきたい、とても興味深い論文です。

横書き書字指導に関する研究に進む外部リンク

 この論文の最初に「要約」として、次のような記載があります。

 文字を縦書きしていた日本に横書きが登場し、縦書きと横書きが併用されるようになるが、公用文で左横書きが求められるようになったことで、横書きが普及し定着することになる。小中学校の書写学習では、学習したことを日常の書字活動に生かすことが求められており、実社会で主流である横書きについてその書字指導を充実させることが望ましい。

 そこで、横書きが登場する経緯や教科書における横書き教材の分量の推移を調査したところ、少しずつではあるが小学校の書写教科書における横書き教材が増えていることがわかった。しかし、このような状況があるのにも関わらず、大学生を対象にした平成8年と26年の調査から、横書きの指導がほとんどなされていないことが明らかになった。

横書き書字指導に関する研究

 この論文では、私が今この文章で取り上げている「作文」ではなく、「書写」の観点から問題点が書かれていますが、関係することの多い内容だと言えます。

 もう少しこの論文から引用してみます。

 この論文の中では、先行研究者広川芳守さんの「横書き書字指導の研究」(1996年『信大国語教育5』,信州大学国語教育学会)という論文から、「実態調査により、明らかになった字形等の問題点」について引用しています。次のような引用です。

(1)横書きをした場合、誰でも概形が正方形に近くなる傾向がある。

(2)横書きが書きやすい人の方が、概形が正方形に近い傾向がある。

(3)罫線を傾けて書くことにより、縦画が傾く傾向にある。

(4)横書きにより、回転部分の退化が起こる。

(5)字間の幅を統一しにくい

(6)文字の中心が把握しにくい、行が通しにくい

横書き書字指導の研究/横書き書字指導に関する研究

  そして、それぞれの引用について、解説をつけています。

  さらに、齋木さんと来栖さんのお二人は、この論文の「おわりに」で、次のように書いています。

 実社会における横書きの定着をふまえるならば、書写学習で横書きの指導を充実させる必要がある。しかし、小学校書写教科書における横書き教材が増えていても、横書き指導あまりなされていない実態がある。その要因には、書写の授業時数の確保が難しいだけでなく、縦書きしてきた文字を横書きすることによって生じる字形の変容や、横書きで整えて書くことの難しさについて十分な検討がなされていない実情もある。

 こういった課題を改善するためには、手書きすることそのものに多様な実態があることや、縦書き横書きを使い分けているという書字の歴史について、指導者が理解を深めていくことが欠かせない。

 整った字形や配列の留意点のみを学習させるのではなく、文字を手書きしてきた文化的・歴史的背景も、発達に応じて学び深められるような書写学習を目指す必要がある。

横書き書字指導に関する研究

 縦書きと横書きの違いを教えるだけではなく、指導を書写指導にも広げて、整った文字で縦書きの作文も、横書きのレポートも書くことのできる子どもを育てることが大切なのかもしれません。

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 作文の指導については、次のページもお読みください。

作文のすすめ(11)卒業文集に進む内部リンク

作文のすすめ(12)4こま漫画に進む内部リンク

作文のすすめ(13)意見文に進む内部リンク

作文のすすめ(14)感想文に進む内部リンク

作文のすすめ(1)400字作文に進む内部リンク

作文のすすめ(2)400字作文の実際に進む内部リンク

作文のすすめ(3)指導前に、自分が書いてみるに進む内部リンク

作文のすすめ(4)書きたいことがある状態にするに進む内部リンク

作文のすすめ(5)構想表についてに進む内部リンク

作文のすすめ(6)自由作文に進む内部リンク

作文のすすめ(7)子どもの発達段階を知るに進む内部リンク

作文のすすめ(8)低学年向けに進む内部リンク

作文のすすめ(9)中学年向けに進む内部リンク

作文のすすめ(10)高学年向けに進む内部リンク

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