折句という言葉遊びを知っていますか?
学習の中に遊びの要素を取り入れることはとても大切です。
今回は、「言葉遊び」の「折句」を取りあげます。
言葉遊び(1)折句:遊び(4)
🟠言葉遊び(1):折句
<言葉遊びとは?>
言葉には、音声・文字といった表現の仕方があります。人が音声や文字などの言葉を上手に扱うことができるようになると、人生が楽しく豊かなものになります。
多くの人が見て楽しむものに、落語や漫才などがあります。落語や漫才などを見て楽しむことができることも、人が言葉を楽しむことができることの大きな証左といえます。
落語や漫才を見たり聞いたりして楽しむだけでなく、自分でも言葉を使って楽しむことができることはとても素晴らしいことだと思います。
しかし、最初から上手な落語家や漫才師になることができないように、言葉遊びも最初は簡単なものから取り組むのがいいと思います。
言葉遊びには、たくさんあります。子どもたちの好きな「なぞなぞ」も言葉遊びの一種でしょうし、上から読んでも下から読んでも同じ言葉になる「たけやぶやけた」や「しんぶんし」などの「回文」も言葉遊びです。
短歌や俳句の文字数を真似た「狂歌」や「川柳」も言葉遊びです。自分や周りの人々の言動や、社会の様子を、決められた31文字や17文字の中で、楽しく表すことは、作ることも楽しいですし、作られた作品を読むことも楽しいです。
これらの狂歌や川柳を読むと、自然と笑みがこぼれることがあります。
<折句とは?>
今回取りあげる「折句・おりく」とは何でしょうか?
折句とは、ある言葉を使って、それを頭文字にして簡単な文を作ることです。
有名な折句に、伊勢物語の「東下り段」の作品があります。
まず、原文を紹介した後で、現代語訳を載せます。
「伊勢物語:東下りの段:原文」
昔、男ありけり。その男、身を要なきものに思ひなして、
「京にはあらじ、東の方に住むべき国求めに。」
とて行きけり。
もとより友とする人、一人二人して行きけり。道知れる人もなくて、惑ひ行きけり。三河の国、八橋といふ所にいたりぬ。
そこを八橋といひけるは、水ゆく河の蜘蛛手なれば、橋を八つ渡せるによりてなむ、八橋といひける。
その沢のほとりの木の陰に下りゐて、乾飯食ひけり。その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり。
それを見て、ある人のいはく、
「かきつばたといふ五文字を、句の上に据ゑて、旅の心を詠め。」
と言ひければ、詠める。
唐衣 きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ
と詠めりければ、みな人、乾飯の上に涙落として、ほとびにけり。
「伊勢物語:東下りの段:現代語訳」
昔、ある男がいました。その男は、自分の身を役に立たないものだと思い込んで、
「京にはおるまい、東国の方に済むふさわしい国を探しに行こう。」
と思って出かけました。
以前から友とする一人、二人とともに出かけました。一行の中には、道をよく知っている人もいなくて、迷いながら行きました。三河の国、八橋という所に着きました。
そこを八橋といったのは、水の流れる川がくもの足のように八方に分かれているので、橋を八つ渡してあることによって、八橋と言いました。
その沢のほとりの木の陰で、馬から下りて座って、乾飯を食べました。
その沢にかきつばたが、たいそう美しく咲いていました。それを見て、ある人が言いました。
「かきつばたという五文字を、和歌の各句の頭において、旅の思いを詠んでごらんさい。」
と言ったので、その男が詠んだ歌です。
唐衣を着ているうちに、やわらかく身になじんでくる褄のように、なれ親しんだ妻が都にいるので、その妻を残してはるばると遠くまでやって来た旅を、しみじみと悲しく思います。
と詠んだので、一行の人はみんな、乾飯の上に涙を落としてしまい、乾飯が涙でふやけてしまいました。
この物語に出てくる和歌を5(6)音、7音で区切ると次のようになります。
からころも
きつつなれにし
つましあれば
はるばるきぬる
たびをしぞおもふ
頭の文字をとると「かきつはた」(かきつばた)という花の名前が折りこまれていることがわかります。
これが折句です。
ある言葉を使って、それを頭文字にして、簡単な文を作るのです。
<名前を使った折句>
子どもにとって取り組みやすい「折句」としては、自分の名前を使った折句がいいかもしれません。
子どもにさせてみる場合は、教員が自分の名前を折句にして作ったものを紹介したり、有名人の名前を使って折句を作ったものを紹介したりするのがいいかもしれませんね。
例えば、子どもに人気のある俳優の「広瀬すず」さんで作ってみると、次のようになります。
ひたすらに ひらすらに
ろくにねもせず ろくに寝もせず
せいじつに 誠実に
すきなはいゆう 好きな俳優
ずっとつづける ずっと続ける
これは、広瀬すずさんが本当に寝ないで仕事をしているかどうか確かめて作ったわけではありません。でも、誠実そうに、熱心に演技している広瀬すずさんの姿を見て、きっとこうなんじゃないかなと勝手に想像して、広瀬すずさんを表す良さそうな言葉を選んで作ったものです。
この作品を作る時に工夫したことは、短歌のように31文字で表すようにしたことです。
当然、5文字ではない名前の場合は、次のような工夫をすることが必要かもしれません。
はきはきと はきはきと
したせりふでも した台詞でも
もともとが 元々が
かんようなゆえ 寛容なゆえ
なぜかかわいい なぜか可愛い
これは広瀬すずさんと同じように、子どもに人気のある橋本環奈さんが、7文字の名前なので、7文字の名前を5つに分けて作ってみたものです。
折句を作るためには、言葉をたくさん知っている必要があります。言葉が見つからない場合は、子どもは言葉を見つける努力をする必要があります。
見つからない場合は、子どもたちは、自然と辞書や国語辞典に手を伸ばすことになると思います。そこで、今まで知らなかった言葉に出合うことがあるもしれません。
みなさんも一度、折句を作ってみませんか?
そして、楽しければ、授業や宿題に言葉遊びを取り入れてみるといいかもしれません。
きっと楽しいと思いますよ。
⭐️ ⭐️
なお、関係する次のページもご覧ください。
学びに遊びを取り入れる 遊び①に進む(内部リンク)
なぞなぞ(1)遊び②に進む(内部リンク)
なぞなぞ(2)遊び③ に進む(内部リンク)
ビンゴゲーム 遊び⑤に進む(内部リンク)
辞書を引く習慣のつけ方に進む(内部リンク)
漢字学習(2)漢字辞典の引き方に進む(内部リンク)
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