作家で広げるわたしたちの読書 読書のすすめ(10)

指導方法
つばさ
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一人の作家に焦点を当てて本を読むのも面白い読書体験だと思います。

 読書をすることはとても意味のあることです。

 今回は、光村図書の5年生の教科書に載っている「作家で広げるわたしたちの読書」という単元の学習についてです。

作家で広げるわたしたちの読書

🟠作家で広げるわたしたちの読書

 この単元は、光村図書の5年生の教科書に掲載されている単元です。

<一人の作家の作品を読み続けること>

 小学校も高学年になると、多くの本を読むことができるようになります。

 子どもの中には、読書を続けるうちに、自分の好きな作家や好きな種類の本が出てくることがあります。

 私自身、子どもの頃よく伝記を読んでいました。中学生になると、星新一さんの本を何冊も買って読んでいました。高校生になると、五木寛之さんの本をたくさん買って読むようになりました。

 子どもの中には、映画などの影響で、ハリー・ポッターのシリーズの物語をよく読んだり、シャーロックホームズの探偵小説を読んだりする子どももいます。

 最近、映画化もされた辻村深月さんの「かがみの弧城」(ポプラ社・2021年)を読むことをきっかけにして、辻村深月さんの書いた「ロードムービー」 (講談社青い鳥文庫・2013年) を読むようになる子どももいるかもしれません。

 5年生の光村図書の教科書には、今村光彦さん、上橋菜穂子さん、さくらももこさん、重松清さんの4名の作家が例として挙げられています。

 誰か一人の作家を取り上げて、その作家の書いた文章を読むことで、その作家のことがよくわかるようになることがあります。

 自分な好きな作家をもち、その作家の作品発表と同時に、本を手に入れ、本を読むという習慣は、人生をとても豊かにすることでもあります。

 一人の作家に焦点を当てて読み続けるきっかけとして、この単元の学習はとても素晴らしいと思います。

<作家論を書く>

 光村図書の5年生のこの単元では、学習の進め方として、次のような例を挙げています。

1.ふだんの本の選び方について、友達と話す。

2.作家に着目して、読み広げる。

3.作家を中心に、本をしょうかしし合う。

 当然、このような学習の進め方でもよいと思います。

 今回は、この学習の流れとは違う学習の進め方について紹介したいと思います。

1.一人の作家を選んで、その作家について紹介する文章を書くことを知る。

2.一人の作家の作品を2作品以上読む。

3.2つの作品を選んで紹介しながら、作家に対する自分の考えを書く。

 この単元が載っているのは、夏休みが近い時期ですので、作品を読んだり、文章を書いたりするのは、夏休みや2学期にするなど、少し長期的な期間を設けて単元を設定してもいいかもしれないなと思います。

<1.一人の作家を選んで、その作家について紹介する文章を書くことを知る>

 最初に、どのような学習をするか知ることは大切なことです。

 そこで、私の用意した次のような文章を示すのはどうでしょうか。

 今回は、多くの子どもが知っている作家の方がいいと思いますので、光村図書の3年生の教科書で「ちいちゃんのかげおくり」、4年生の教科書で「白いぼうし」が載っているあまんきみこさんを取り上げることにします。

あまんきみこさんについて

 ファンタジー作品を書くことで有名なあまんきみこさんは、平和を愛する心優しい人です。あまんさんは、1931年(昭和6年)生まれです。日本が第2次世界大戦で世界と戦っていた時、当時は日本の植民地だった中国の満州の大連と言う町に住んでいました。戦争後、2年間もソ連軍が占領している大連で暮らしたことがあります。今回は、あまんさんの作品を2作品とりあげることで、あまんさんについて書きます。

「ちいちゃんのかげおくり」は、戦争のために家族をなくしたちいちゃんのお話です。体の弱いお父さんが出征する前に、ちいちゃんは家族4人ではかまいりに行った帰りにかげおくりをします。かげおくりとは、「十、かぞえるあいだ、かげぼうしをじっと見つめるのさ。十、といったら、空を見あげる。すると、かげぼうしがそっくり空にうつって見える」そんな遊びです。

 夏のある夜、ちいちゃんが住んでいる所にも空襲がありました。お母さんとお兄ちゃんとにげている間に、ちいちゃんはひとりぼっちになってしまいます。そして、防空壕の中で、ちいちゃんはめをさまします。あついような寒いような気がします。のどもかわいています。太陽は高く上がっていました。その時ちいちゃんの耳にはお父さんやお母さんやお兄ちゃんのいっしょにかげおくりをしようという聞こえてきました。ちいちゃんは家族4人でかげあそびをしながらいのちをなくしました。

「あるひあるとき」というのは、あまんさんが子どものときの思い出のようなお話です。近所の小さいユリちゃんが、こけしと遊んでいるすがたを見て、幼いころ遊んでいたこけしを思い出します。父が日本で買ってきてくれたこけしは、大連ではめずらしいもので、ハッコちゃんと名前をつけて、外遊びも防空壕に入るのもいっしょの友だちでした。やがて、終戦をむかえます。

 でも、すぐには日本には帰れませんでした。特に、2度目の冬はスチームのボイラーをたく石炭もなく、家のものを毎日のように売りに行き、売れなかったものをダルマストーブで燃やす生活をしていました。でも、ハッコちゃんは大丈夫、大切な友だちだからと思っていました。でも、引き揚げが3日先に決まった時にハッコちゃんは連れて行けないと言われ、明日出発という日、何度も何度も頭をなでてからハッコちゃんは、ストーブの中に消えていきました。

 どちらの作品でも、今の日本の幸せな世界が描かれています。でも、70年以上前の戦争の時には、命をなくす子ども、大切なものをなくす子どもがたくさんいました。このような作品を通してあまんさんは、平和の大切さを伝えていると思います。私も、これらの作品を通して、戦争のおろかさと、平和の尊さを強く感じました。

あまんきみこさん 教科書の作家①に進む内部リンク

<2.一人の作家の作品を2作品以上読む>

 日々の図書の時間や家庭学習、夏休みなどの時間を使って、自分のお気に入りの作家の作品を2作品以上読みます。たくさん読んで、その中から、作家の訴えたいことを探すようにしてもいいと思います。

 新たに作品を読むだけでなく、以前読んだ作品でもいいことにします。

 教科書に取り上げられている作家だけでなく、宮沢賢治、椋鳩十などの作家の作品もいいのではないかなと思います。

 この教科書には、宮沢賢治の「やまなし」という作品と、「イーハトーブの夢」という宮沢賢治の伝記が載っています。その2つの教材を使うという方法もあるかもしれません。

<3.2つの作品を選んで紹介しながら、作家に対する自分の考えを書く>

 次のような構成で書くといいかもしれません。

  1. はじめ:どの作家にするのかということと、作家の簡単な紹介
  2. なか1:1つめの作品の紹介
  3. なか2:2つめの作品の紹介
  4. おわり:2つの作品の共通点を通して感じたこと

<まとめにかえて>

 教科書に示している指導方法とは少し違う角度から、ひとりの作家に焦点をあてて、読み広げる方法について紹介してみました。教科書に書かれているように、紹介カードに書くという方法も有効だと思います。

 いろいろな方法で単元を進めることができると思います。

 なお、この単元に載っている「カレーライス」という文章の教材分析を次のページに載せています。

カレーライス 教材分析069に進む内部リンク

⭐️ ⭐️

 あわせて読書に関係する文章もお読みください。

お気に入りの本をしょうかいしよう 読書のすすめ(7)に進む内部リンク

はじめて知ったことを知らせよう 読書のすすめ(8)に進む内部リンク

事実にもとづいて書かれた本を読もう 読書のすすめ(9)に進む内部リンク

私と本:ブックトーク 読書のすすめ(11)に進む内部リンク

子どもを本好きにさせる方法 読書のすすめ(1)に進む内部リンク

どうわの王様 読書のすすめ(2)に進む内部リンク

心の養分 読書のすすめ(3)に進む内部リンク

本は楽しむもの 読書のすすめ(4)に進む内部リンク

すてきなこと 読書のすすめ(5)に進む内部リンク

本がいざなう、もう一つの世界へ 読書のすすめ(6)に進む内部リンク

読む力を育てる① 多文種の短い文章をたくさん読むに進む内部リンク

読む力を育てる② 教科書の作品の姉妹作品を読むに進む内部リンク

読む力を育てる③ 読み聞かせに進む内部リンク

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