カレーライス 教材分析069

教材分析
つばさ
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カラーライス」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、「カレーライス」です。

カレーライス:教材分析

🟠カレーライス:教材分析

光村図書の5年生の教科書に掲載されています。

<作者>

 重松清(しげまつ・きよし)作

 唐仁原教久(とうじんばら・のりひさ)絵

 出典:この教科書のために書き下ろされました。

 重松清さんについて

 1963年岡山県で生まれました。中学・高校時代は、山口研で過ごしました。

 日本の作家、小説家です。

 早稲田大学教育学部国語国文学科を卒業しています。卒業後、出版社に勤務した後、田村章、岡田幸四郎などの多数のペンネームをもつフリーライターをしていました。ドラマや映画のノベライズ、雑誌記者、ゴーストライターなどをしていました。

「ビフォア・ラン」(1991年・ベストセラーズ)で作家デビューしました。「ナイフ」(1997年・新潮社)などで注目されます。「ビタミンF」(2000年・新潮社)で直木賞を受賞します。

 主に現代的な家族の姿を題材とした作品を書くことが多いです。日常生活の中に潜む社会的問題を題材にすることのあります。

 多くの小説がテレビドラマ化、映画化されています。

<題名>

 題名は「カレーラース」です。

 カレーライスに関係していることが書かれている物語なのかな、と子どもは思うと思います。

<設定>

 いつ(時):夕食後

 どこ(場所):家の中

 だれ(登場人物):ぼく、お母さん

<人物>

 ぼく……主人公。ひろしという名前。ゲームをセーブしないで切られておこっている。

 お父さん……ぼくの父親。ゲームのセーブをしないでコードをぬく。

 お母さん……ぼくの母親。

<あらすじ>

・ぼくは悪くない。お父さんがゲームをセーブしないで電源を切ったのでおこっている。

・一日三十分の約束を破って、ゲームをしたのはよくなかったけど、あやまらないことにした。

・お母さんはいつもお父さんの味方をして、お母さんはお父さんにあやまるように言う。

・ぼくはそっぽを向く。しかられたのはゆうべ。丸一日たってもあやまらないのは、新記録だ。

・「仲直りしなさいよ。あしたから『お父さんウィーク』なんだから。」とお母さんが言う。

・毎月一週間ほど、母がいそがしい時に、お父さんが夕食を作るために早めに帰ってくる。

・「今朝も『ひろしは、まだすねているのか。』って、落ちこんでたのよ。」と言うお母さん。

・それがいやなんだ。ぼくはすねていない。もっと、こう、なんていうか、もっとー。

・今日もカレーみたい。「また、カレーなの」と言うと、「だったら自分で作ってみれば」と言われた。お母さんはいつもお父さんの味方で、くやしかったのであやまらないことにした。

・「お父さんウィーク」の初日、お父さんはさっそく、特性カレーを作った。

・お父さんは料理が下手だ。カレーのルウがあまったるい。食べていると話しかけてきた。

・「まだ、おこっているのか、けっこう根気あるんだな。」返事しないていた。

・「この前、いきなりコードにぬいちゃって、悪かったな。」あっさり、あやまられた。

・知らん顔して食べていると、お父さんもあきらめたみたいで、もう話しかけてこなくなった。

・次の日の夕食もカレー。「なあ、ひろし、いいかげんきげん直せ。しつこすぎないか。」

・お父さんはちょっとこわい顔になって言った。

・本当は仲直りしようと思っていたけど先手を打たれて、今さらあやまれなくなった。

・「もしもし、ひろしくうん、聞こえますか。」手をメガホンの形にして言った。

・おっかない顔にもどって「いいかげんにしろ」と言った。ぼくはカレーを食べ続けた。

・皿をかたずけているとき、お父さんは「頭がいたい。」とつぶやいた。かぜをひいたのかも。

・翌朝、起き出したぼくに、お父さんは、「悪いけど、先行くから。」家を出て行った。

・「お父さんウィーク」では、早く帰ってくる代わりに朝早く行き、ゆうべの仕事をするのだ。

・お母さんはねている。いそがしい日は真夜中の二時や三時に帰ってきて、ゆっくり出勤する。

・食卓には黄身がくずれた目玉焼きがある。お父さんが作ってくれたのだろう。

・目玉焼きは作れるが、火を使うのはあぶないと、トースターと電子レンジしか使わせてくれない。

・お父さんがぼくのために作ってくれたのはうれしいけど、くやしい。けど、うれしい。

・お父さんに「いってらっしゃい。」を言わなかったのが、急に悲しくなってきた。

・ランドセルの下にはお母さんの手紙があった。「口を聞かないのをさびしがっているよ。」

・学校にいる間、何度も心の中で「お父さん、ごめんなさい。」と練習した。

・夕方、家に帰ると、お父さんがいた。「かぜひき、熱があるから、早退してきた。」

・「晩ご飯、弁当だな。」お父さんが行ったとき「何か作るよ。ぼく、作れるから。」と言った。

・お父さんはきょとんとしていた。でも、いちばんおどろいているのは、ぼく自身だ。

・「いや、でもー。」と言いかけたお父さんは、少し考え「で、何を作るんだ。」と聞いてきた。

・「カレー。」「カレーって、ゆうべもおとといもー。」「でもカレーなの。絶対カレーなの。」

・大きな声で言い張ると、ほっぺたが急に熱くなった。

・「じゃあ、カレーでいいか。」お父さんは笑って、台所の戸だなを開けた。

・「おとといのルウが残っているから。」と甘口のお子さま向けのルウを出してきた。

・ぼくは戸だなの別の場所からお母さんが買い置きしている別のルウを出した。

・「ひろし、それ『中辛』だぞ。からいんだぞ。口の中ひいひいしちゃうぞ。」

・「何言ってんの。お母さんと二人のとき、いつもこれだよ。」お父さんはきょとんとしている。

・「おまえ、もう『中辛』なのか。」意外そうに、半信半疑できいてくる。

・「そうかあ、ひろしも『中辛』なのか、そうかそうか。」とうれしそうに何度もうなずく。

・二人で作ったカレーラースができあがった。お父さんは、ずっとごきげんだった。

・「いやあ、まいったなあ。ひろしも『中辛』なんだな。来年から中学生なんだもんなあ。」

・一人でしゃべって、「かぜも治ったよ。」と笑って、大もりにご飯をよそった。

・食卓に向かってすわった。「ごめんなさん。」は言えなかった。

・けど、お父さんはごきげんで、「別の料理も二人で作ろう」と約束した。

・残り半分の今月の「お父さんウィーク」はいつもよりちょっと楽しく過ごせそうだ。

・「いただきます。」カレーをほお張った。カレーはぴりっとからくて、ほんのりあまかった。

<場面>

 ここでは、このブログで紹介している6場面に分け、1場面を40字程度にまとめてみます。

① 父がゲームをセーブしないで電源を切ったことに対して、ぼくはおこっていた。

② 母の帰りの遅い「お父さんウィーク」の初日は父のカレー。ぼくはだまったままだった。

③  次の晩もカレー。ぼくはあやまりたいけどあやまれない。父はかぜをひいたみたいだ。

④  翌朝、父は目玉焼きを作ってくれた。学校にいる間、何度もあやまる練習をした。

⑤  父は早退していた。カレーを作ることにした。中辛のルウを選ぶことに父は驚いていた。

⑥  二人で作ったカレーができた。あやまれなかったけど、父もぼくもとてもごきげんだった。

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<人物の会話>

 この物語には、重要な会話がいくつかあります。

・重要な会話の一つは、お母さんのぼくへの会話です。

「いいかげんに意地を張るのはやめなさいよ。」

「何度言っても聞かなかったんだから、しょうがないでしょ。今夜お父さんが帰ってきたら、ちゃんとあやまりなさいよ。いいわね。」

「いい。今夜のうちにあやまって、仲直りしときなさいよ。あしたから『お父さんウィーク』なんだから、けんかしたままだとつまらないでしょ、ひろしだって。」

「お父さん、ひろしがよくないことをしたらしかるけど、ひろしのことが大好きなのよ。分かるでしょ。今朝も『ひろしは、まだすねてるのか。』って。落ちこんでたのよ。」

・もう一つの重要な会話の一つは、お父さんのぼくへの会話です。初日の会話は次のように続きます。

「まだおこってるのか。」

「ひろしもけっこう根気あるんだなあ。」

「この前、いきなりコードにぬいちゃって、悪かったなあ。」

「でもな、一日三十分の約束を守らなかったのは、もっと悪いよな。」

・お父さんの会話はたくさんありますが、ぼくが、カレーを作ると言い出し、中辛のカレーを持ち出した時のお父さんの会話もとても面白いです。

「お父さんも手伝うから。で、何を作るんだ。」

「だって、おまえ、カレーって、ゆうべもおとといもー。」

「じゃあ、カレーでいいか。」

「おととい買ってきたルウが残っているから、それを使えよ。」

「だって、ひろし、それ『中辛』だぞ。からいんだぞ。口の中ひいひいしちゃうぞ。」

「おまえ、もう『中辛』なのか。」

「そうかあ。ひろしも『中辛』なのかあ。そうかそうか。」

「いやあ、まいったなあ。ひろしももう『中辛』だったんなあ。そうだよなあ。来年から中学生だもんなあ。」

「かぜも治っちゃったよ。」

・もう一つの重要な会話は、ぼくの心の声です。あやまりたいけどあやまれない、思春期の子どもの心の声がたくさん書かれています。揺れる心がたくさん描かれています。

 分かってる。それくらい。でも、分かっていることを言われるのがいちばんいやなんだってことを、お父さんは分かってない。

 ぼくも本当は、もう仲直りしちゃおうかな、と思っていたところだった。でも、先手を打たれたせいで、今さらあやまれなくなった。ここであやまると、いかにもお父さんにまたしかられそうになったからーみたいで、そんなのいやだ。

<人物の行動>

 3人の行動からもいろいろわかります。ここではお母さんを取り上げます。お母さんは、とてもやさしいです。何とか二人を仲直りさせようとしています。

・朝食を終えて自分の部屋にもどったら、ランドセルの下に手紙が置いてあった。

「お父さんとまだ口をきいてないの。お父さん、さびしがっていましたよ。」

 絵の得意なお母さんは、しょんぼりするお父さんの似顔絵を手紙にそえていた。

<主題>

 この物語の主題は、何でしょうか?

 一言でいうと「家族愛」でしょう。

 父や母からのぼくへの愛。ぼくの成長をうれしがる父の心。

 そして、悪いことをしてあやまらないといけないと分かっているけど、なかなか素直にあやまれない思春期の子どもの心の揺れ動きが描かれていると思います。

 違った角度から、「思春期の男の子とお父さんのすれ違いと和解」がテーマといえるかもしれません。

<表現の工夫>

 この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。

 1つは、ぼくの心の揺れをていねいに書いていることです。

 素直にあやまれない心の動きがたくさん描かれています。

 これを読む小学生の子どもは、よく似た行動をしていることがあるのではないでしょうか。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

⭐️ ⭐️

 この教材は、「作家で広げるわたしたちの読書」という単元に載っている教材です。

作家で広げるわたしたちの読書 読書のすすめ(10)に進む内部リンク

 他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。

なまえつけてよ 教材分析032に進む内部リンク

初雪のふる日 教材分析001に進む内部リンク

世界でいちばんやかましい音 教材分析003に進む内部リンク

大造じいさんとガン 教材分析009に進む内部リンク

世界でいちばんやかましい音 教材分析003に進む内部リンク

 物語文の教材研究については、次のページもお読みください。

物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む内部リンク

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