サボテンの花 教材分析039

教材分析
つばさ
つばさ

サボテンの花」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、6年生の教科書に載っている「サボテンの花」の教材分析をします。 

サボテンの花:教材分析

🟠サボテンの花:教材分析

 この作品は、東京書籍の6年生の教科書に載っています。  

<作者>

 やなせたかし(やなせ・たかし)さん作

 川上和生(かわかみ・かずお)さん絵

 出典:「復刻版やなせメルヘン名作集」(カザン・2009年年刊)

 やなせたかしさんについて

 1919年(大正8年)生まれです。日本の漫画家、絵本作家、詩人です。本名は、柳瀬嵩です。

 高知県生まれです。東京高等工芸学校図案科(現・千葉大学工学部総合工学科デンザインコース)卒業です。

 「アンパンマン」(キンダーおはなしえほん・フレーベル館・1973年)の生みの親としてたいへん有名です。

 絵本作家・詩人として活躍する前は、編集者、舞台美術家・演出家・司会者・コピーライターなどさまざまな職業をされています。

 1988年(昭和63年)からテレビアニメ「それいけ!アンパンマン」の放送が始まりました。最初は、あまり人気がありませんでしたが、徐々に人気があがり、2023年(令和5年)現在でも放送は続いています。アンパンマンや他の登場人物は、乳幼児や児童などを中心に大人気です。

 2013年(平成25年)93歳の時に、亡くなりました。

<題名>

 題名は「サボテンの花」です。

 題名どおり、サボテンの花について書いていることがわかります。

 6年生の子どもがサボテンについて、前もってどのような知識をもっているのかは指導者として知っておくことも必要かもしれません。

 簡単なサボテンの知識としては、「砂漠など雨の降らないところでも育つ」「葉などに水と栄養分をもっている」「とげがある」などでしょう。

 なお、私が子ども用に作っている「よみもの」で、「サボテン」について簡単な文を書いています。よければ、お読みください。

サボテンに進む外部リンク・よみもの

<設定>

 いつ(時):(明確に書かれていない。)

 どこ(場所):赤い砂ばく。

 だれ(登場人物):サボテンと風。

<人物>

 サボテン……主人公。砂ばくで一人生きている。

 ……サボテンに話しかける。

 旅人……死ぬ直前。サボテンに助けられる。

<あらすじ>

・赤い砂ばくにサボテンが一本立っていた。がっしりとして、全身とげとげだった。

・風が聞いた。「どうしてこんな所に生えているんだ。つらいだけで、役に立たない。」

・サボテンは答えた。「ぼくはここがいい。たたかいながら生きたい。」

・風はふき過ぎた。サボテンは相変わらず、炎熱の中、砂じんの中、荒野の中立っていた。

・ある日、死ぬ寸前の旅人が通った。そして、サボテンに切りつけ、サボテンの水を飲んだ。

・あの時の風がまた言った。「ばかだな。何もしないのに、切られてしまった。」

・サボテンは答えた。「ぼくがあるから、あの人は助かった。生きることは助け合うこと。」

・サボテンの傷口はやがて回復し、気力で立ち直り、さりげなく立っていた。

・ある日、美しい花がさいた。だれ一人見る人もいなかったのに。

<場面>

 物語を、このブログで紹介している方法で、場面を5つに分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。 

①  赤い砂ばくに、がっしりとして全身とげとげのサボテンが一本立っていた。

②  風が「こんな所ではつらいだけだ」と言うが、「サボテンはここがいい」と答える。

③  ある日死にかけの旅人が通りかかり、サボテンを傷つけ、水を飲んで行った。

④  風が「傷つけられてばかだ」と言うが「ぼくがあるから、あの人は助かった。」と言う。

⑤  ある日、だれも見る人はいなかったが、サボテンに美しい花がさいた。

  1234567890123456789012345678901234567890

<人物の会話>

 この物語で、会話をするのは、風とサボテンです。二人の会話は、弟子と師匠の問答のようです。弟子は「人生を生きる意味」を問い、師匠は、それに答えるような会話です。

・1つめの二人の会話は、次のように続きます。

どうしてこんな所に生えているんだい。ここに生えるのはむだなことだ。つらいだけで役にたたない。少し行けば緑の平野がある。そこには水もある。ゆっくりとねむりながらくらせる。

なるほど、そこはいい所らしい。しかし、ぼくはここがいい。ねむるようにくらすより、たたかいながら生きたい。それが生きるということだと、ぼくは思う。

・2つめの二人の会話は、次のように続きます。

ばかだな。君は何もしないのに、切られてしまったじゃないか。」

ぼくがあるから、あの人は助かった。ぼくがここにいるということは、むだじゃなかった。たとえ、ぼくが死んでも、一つの命が生きるのだ。生きるということは助け合うことだと思うよ。

<人物の行動>

 この物語のよさの一つは、厳しい砂漠という自然の中でも、サボテンが凛として立ち、生き続けていることです。次のような行動に表れています。

サボテンは相変わらず立っていた。炎熱の中。うず巻く砂じんの中。かわききった荒野の中

サボテンの傷口はやがて回復した。信じられないほどの気力で立ち直った

サボテンは、ほんのかすかな水を体にためて、さりげなく立っていた

 そして、ご褒美のように花が咲きます。次のように書かれています。

ある日、おどろくほど美しい花がさいた。だれ一人として見る人もなかったのに

<主題>

 この物語の主題は、何でしょうか?

 「人生を生きる意味とは何なのか」ということかもしれません。

 人はだれがも恵まれた環境の中で生まれるとは限りません。過酷な人生が待っているかもしれません。それでも、与えられた環境の中で、精一杯生きることの素晴らしさが書かれているように思います。

 人は、与えられた環境の中で精一杯生きることで、誰かの役に立つことがあります。

 この物語を書いたやなせたかしさんの名作はご存知の通り「アンパンマン」です。アンパンマンの素晴らしい行動の一つに、自分の顔を食べさせてでも人を助けるということがあります。

 このサボテンにも、アンパンマンの行動に通じるものがあるように思います。

<表現の工夫>

 子どもに気づいてほしい表現の工夫に、会話の横にある「言いました」という表現を少し工夫することがあります。会話文であることを示す「言いました」(ここでは、「答えた」と書いてあります)と書くだけでなく、「小さな声で」や「うれしそうに」という言葉をそえたり、「つぶやきました」「さけびました」という言葉に変えたりすることで、表現はとても豊かになります。

 このような表現の工夫は、音読や朗読をする際、どのような読み方をすればいいのかという手がかりにもなります。

 この物語には、次の表現の工夫があります。

サボテンは落ち着いた声で、ためらわずに答えた

サボテンはあえぎながら答えた

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

⭐️ ⭐️

 他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。

世界でいちばんやかましい音 教材分析003に進む内部リンク

大造じいさんとガン 教材分析009に進む内部リンク

海の命 教材分析020に進む内部リンク

雪の夜明け 教材分析023に進む内部リンク

 物語文の教材研究については、次のページもお読みください。

物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む内部リンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました