きつつきの商売 教材分析033

教材分析
つばさ
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きつつきの商売」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、3年生の教科書に載っているきつつきの商売」の教材分析をします。 

きつつきの商売:教材分析

🟠きつつきの商売:教材分析

 この作品は、光村図書の3年生の教科書に載っています。  

<作者>

 林原玉枝(はやしばら・たまえ)さん作

 村上康成(むらかみ・やすなり)さん絵

 出典:「おはなし さいた2 森のお店やさん」(アリス社・1998年)この作品集には、12編のお話が入っていて、森のいろいろな動物が商売をすることが書かれています。

 林原玉枝さんについて

 1948年(昭和23年)生まれです。日本の児童文学者です。

 広島県尾道市生まれました。幼少期は、ゆたかな自然環境の中で、雑草や小さな生きものたちにふれて育ちます。1991年に「おばあさんのすーぷ」(女子パウロ会・1990年)で「第1回けんぶち絵本の里大賞」を受賞しています。

 主な作品に、「ふしぎやさん」(アリス館)、「なおちゃんのハンカチ」「ねこの商売」(ともに、福音館書店)、「森のおくの小さな物語」「ライ麦をたべたろばのロバート」(ともに、冨山房インターナショナル)などがあります。

<題名>

 題名は「きつつきの商売」です。

 題名から、鳥のきつつきが、何かの商売をすることがわかります。どんな商売だろうと、とても興味がわきます。

 なお、私が子ども用に作っている「よみもの」で、「きつつき」について簡単な文を書いています。よければ、お読みください。

きつつき Woodpeckersに進む外部リンク・よみもの

<設定>

 いつ(時):(書かれていない)

 どこ(場所):森。

 だれ(登場人物):きつつき。

<人物>

 きつつき……「おとや」という商売を始める。

 野うさぎ……お客さん。

 野ねずみの家族……おとやの音を家族で聞きにくる。夫婦と十ぴきの子どもたち。

<あらすじ>

・きつつきは、おとやというお店を開いた。

・できたての音、すてきな音を聞かる。四分音符1こにつき、どれも百リラ。

・まっさきに来たのは、茶色いみみをぴんと立てた野うさぎで、ぶなの音をゆびさした。

・きつつきは、野うさぎをつれて、ぶなの森にやってきて、野うさぎを木の下に立たせた。

・きつつきは、ぶなの木のみきを、くちばしで力いっぱいたたいた。コーン。

・野うさぎは、きつつきを見上げたまま、だまって聞いていた。

・きつつきも、うっとりと聞いていた。

・ぶなの森に、雨が降りはじめた。きつつきは新しいメニューを思いついた。

・きつつきがぶなの木のうろから空を見上げていると、「おはよう、きつつきさん」と声がした。

・野ねずみの家族が、みんなできつつきを見上げていた。

・きつつきは、「おとやの新しいメニューができたんですよ。」と言った。

・「でもね、もしかしたら、あしたはできないかもしれないから。」と言うきつつき。

・「じゃあ、とくべつのメニュー。ぼくたちは、うんがいいぞ。それも百リル。」

・「いいえ、今日のは、ただです。」というきつつき。

・野ねずみの家族は、前からすてきな音をきかせてもらえることを知っていたけど、今日やっとみんなで来てみたと言う。朝からの雨で、何もできないから。

・「だから、ひとつ、聞かせてください。」野ねずみの家族は、そろってうれしそうに言った。

・葉っぱのかさをさした十ぴきのこねずみたちは、そろってきつつきに目をむけた。

・「さあ、いいですか。今日だけの特別な音です。お口をとじて、目をとじて、聞いてください。」

・みんなは、しいんとだまって、目を閉じました。

・目をとじると、そこら中のいろんな音がいちどに聞こえてきた。

・ぶなの葉っぱのシャバシャバ。地面からのバシバシピチピチ。葉っぱのかさのバリバリ。そして、ぶなの森のずっとおくふかくから、ドウドウ、ザワザワ。

・「ああ、聞こえる、雨の音だ。へえ。うふふ。」

・野ねずみたちは、みんなにこにこうなずいて、ずうっと、とくべつなメニューの雨の音につつまれていた。

<場面>

 物語を、このブログで紹介している方法で、場面を5つに分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。 

① きつつきは、四分音符1こにつき百リラの音を聞かせる、おとやというお店を開いた。

②  きつつきは、野うさぎに、ぶなの木のみきを、くちばしでたたいて、音を聞かせた。

③  雨の日、森に、野ねずみの家族が、きつつきの音を聞きにやってきた。

③  きつつきは、新しい音ができたことと、今日は、ただで聞かせると言うことを伝えた。

④  きつつきは、野ねずみたちに、口と目を閉じさせ、雨のなる音を聞かせた。

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 元々この物語は、2場面からできています。それをあえて、5つの場面に分けてみました。

<人物の会話>

 この物語には重要な会話がいくつかあります。

 ここでは、1つだけあげます。きつつきと野ねずみたちの会話です。きつつきは、少しずつ謎ときをするように音について話をします。

・「今朝、できたばかりのできたてです。

・「でもね、もしかしたら、あしたはできないかもしれないから、メニューに書こうか書くまいか、考えたんです。

・「そうです。とくとく、とくべつメニュー。

 そして、よりよく音を聞かせるために、最後にこう言います。

・「さあ、いいですか。今日だけのとくべつの音です。お口をとじて、目をとじて、聞いてください

 ここでは、だまるために口をとじて、よく聞くために目をとじて聞くと、雨のさまざまな音が聞こえてきます。それが、おとやの新しい音でした。

<人物の行動>

 会話文の横には、「言いました」と書くことが普通です。でも、その時の様子をうまく表そうとすると、少し言葉を添えたり、「言う」を違う言葉にすることがあります。ここでは、そのような行動の書き方が巧みです。きつつきと野うさぎの会話では、次のような行動があります。

「さあ、いきますよ。いいですか。」

 きつつきは、木の上から声をかけました。野うさぎは、きつつきを見上げて、こっくりうなずきました。

 野ねずみが喜んでいる行動の表現もとても巧みです。次のような表現です。

野ねずみたちは、みんな、にこにこうなずいてそれから、目を開けたりとじたりしながら、ずうっと、ずうっと、とくべつメニューの雨の音につつまれていたのでした

<主題>

 この物語の主題は、何でしょうか?

音のすばらしさ」ということかもしれません。

 きつつきの商売として、きつつきは2つの音を客の野うさぎと野ねずみに聞かせます。

 1つは、きつつきのふなの木をたたく「カーン」という音。もう1つは、口と目をとじてきく雨の音。どちらもすてきです。「おとや」という店の名に恥じないすばらしい音です。

 それが、この物語の主題なのかもしれません。

<表現の工夫>

 この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。

 この物語で素晴らしいのはオノマトペです。

 実は、日本語で、片仮名を使うのは、3つの場合だけです。

 1つめは、外来語。2つめは、外国の固有名詞。そして、3つめは、ここでも出てきた音です

 このことは、実は大人でもよく理解していないことが多いのです。

 詳しくは、私の書いた次の文章をお読みください。

「カタカナ」と「かたかな」、正しいのはどっち?に進む内部リンク

 ここでは、音の表現がとても工夫されています。

 1つめは、きつつきがぶなの木をたたいたカーンという音

 2つめは、さまざまな雨の音

 ジャバジャバジャバ。バシバシピチピチ。バリバリバリ。ドウドウドウ。ザワザワザワザワ。

 実に多彩です。

 この学習のある日に、もし雨が降る日があれば、一度、雨のよく聞こえる場所に移動して、どのような雨の音がするか、口と目を閉じて見いてみるというのも面白い試みかもしれないな、と思います。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。


⭐️ ⭐️

 他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。

初雪のふる日 教材分析001に進む内部リンク

世界一美しいぼくの村 教材分析002に進む内部リンク

世界でいちばんやかましい音 教材分析003に進む内部リンク

大造じいさんとガン 教材分析009に進む内部リンク

雪の夜明け 教材分析023に進む内部リンク

ゆうすげ村の小さな旅館 教材分析027に進む内部リンク

白いぼうし 教材分析031に進む内部リンク

なまえつけてよ 教材分析032に進む内部リンク

 物語文の教材研究については、次のページもお読みください。

物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む内部リンク

 2年生の子どもが書いた物語

絵本  みくのふしぎなピアノに進む内部リンク

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