銀色の裏地 教材分析113

教材分析
つばさ
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新しい教材の「銀色の裏地」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、5年生の教科書に載っている「銀色の裏地」の教材分析をします。

 この教材は、2024年(平成6年)の4月から採択されている教科書で新たに付け加えられた教材です。

銀色の裏地:教材分析

🟠銀色の裏地:教材分析

 この作品は、光村図書の5年生の教科書に載っています。2024(令和6)年からの新教材です。  

<作者>

 石井睦美(いしい・むつみ)さん

 しんやゆう子(しんや・ゆうこ)さん

 出典:この教科書のために書き下ろしされました。

 石井睦美さんについて

 1957年(昭和32年)生まれです。日本の児童文学作家で、翻訳家です。

 神奈川県生まれです。本名は、三浦さんです。

 フェリス女学院大学文学部を卒業されています。卒業後、児童文学作家の前川康男さんに師事して、創作活動をはじめました。

 出版社の青土社で、芸術総合誌の「ユリイカ」の編集者をした後、「五月のはじめ、日曜日の朝」(岩崎書店・1989年)で第3回毎日新聞はないちもんめ童話大賞・第8回新美南吉児童文学賞などを受賞しました。

 その他の著書には、「そらいろのひまわり」(草土文化・ 1989年)、「ちっちゃな家族 とがりねずみの暮らし」(ポプラ社・2000年)などがあります。

 2005年から2013年1月までは、季刊児童文学雑誌「飛ぶ教室」(第1期:楡出版、第2期:光村図書)の編集人をつとめていました。

 絵本の翻訳も行い、2006年には、訳書のサラ・マクメナミー作「ジャックのあたらしいヨット」が、第53回産経児童出版文化賞を受賞しました。

<題名>

 題名は「銀色の裏地」です。

 裏地ということから、何かの衣服の裏地が銀色であることに関係する物語なのだと予想されます。何のことかよく分かりませんが、子どもがとても興味をひくような題名であることは確かです。

 物語を読み進め、銀色の裏地の意味を知ると、深い意味のある言葉なのだと、とても感心させられます。

<設定>

 いつ(時):クラスがえの合った日の午後。

 どこ(場所):児童館。

 だれ(登場人物):理緒、あかね、希恵。

<人物>

 理緒……主人公。クラスがえで、仲のいい友だちと別のクラスになってしまう。姓は、坂本。

 あかね……仲よし三人グループの一人。

 希恵……仲よし三人グループのもう一人。

 お母さん……理緒の母親

 高橋さん……理緒と同じクラスになり、席もとなりになる。

 土田君……給食をいっしょに食べるクラスメイト。幼なじみ。

 上野君……給食をいっしょに食べるクラスメイト。

 おじいさん……高橋さんのおじいさん。銀色の裏地の意味を高橋さんに教えてくれた人。

<あらすじ>

・クラスがえで、理緒、あかね、希恵の仲よし三人グループはクラスが分かれ理緒は一人になった。

・その日の午後、児童館で三人でかんバッチを作りながら、理緒は不満を口にした。

・「理緒の気持ち、すごく分かる。」と言いつつ「でも」と続けるあかね。

・「これからだって、こうして遊べるよ。」と言われて、理緒はとても悲しく思えた。

・「あかねちゃんたちは、あなたをはげまそうとしたの。ぐずぐすしなで、元気に登校しなさい。今日もいい天気。」という母に言われて、理緒は、げんかんを出た。

・「いい天気って、うそばかり。思いっきりくもりじゃん。」とおかしくなる理緒。

・理緒は、くじ引きでいい席を引き当てるぞ、と意気ごんだ。

・くじで決まった席は高橋さんとかべの間。

・高橋さんとは初めて同じクラスだが、昨年作文コンクールで賞を取ってことを知っていた。

・つんとしましている様子に思えたのは、理緒が文章が書くのが苦手だからかもしれない。

・なんだか話だけにくいと感じ、教科書をわすれたら見せてと、心の中でかべによびかけた。

・給食の時間、理緒は、高橋さんと土田君と上野君とつくえを付けた。

・高橋さんは、給食をおいしそうに食べ、楽しそうにおしゃべりしている。

・おもしろそうな人と思えたが、なぜがすなおに喜べない自分にもやもやする理緒。

・「なんて顔してんの。」という幼なじみの土田君の声に「しいたけが入っていたから。」とごまかす理緒。

・すると、高橋さんは、「しいたけ、わたしも苦手。だから、これは、食べたことのない、世界一おいしいものだと想像して食べることにしている」との話をする。

・放課後、理緒はあかねと希恵が仲よく帰るのを見たが、理緒は、見送ることしかできなかった。

・そこに、「坂本さん、今日プレーパーク行かない。」と高橋さんから声がかかる。

・「プレーパーク。」ときき返すと「今日は、空を見るのに絶好の天気だから。」という高橋さん。

・プレーパークは、児童館のとなりにあるしばふの広場だ。

・理緒は、何度も空を見上げるが、朝と同じくもり空だ。なのに絶好の天気ってどういうこと。

・不思議に思いプレーパークに着くと、高橋さんは入り口で理緒を待っていた。

・高橋さんは、ずんずんしばふに入っていくとためらいもなく、横になる。

・「高橋さんもやってみて。」というので、理緒も横になると、高橋さんが何かつぶやく。

・「なんて言ったの。」と聞くと、「銀色の裏地。」との言葉。

・意味を考えていると、疑問にも答えるように高橋さんは、空を見上げたまま続ける。

・「全ての雲には銀色の裏地がある。これは、外国のことわざなんだけどね。」

・「くもっていても、雲の上には太陽があり、雲の裏側は銀色にかがやいている。だから、銀色の裏地をさがそうという歌があるんだって、おじいちゃんが教えてくれた。くもった、じゃなく、

こまったことやいやなことがあっても、いいことはちゃんとあるんだって。」

・もしかして、わたしの気持ちに気づいていると思いつつ、理緒はだまって空を見上げつづけた。

・あの厚い雲の向こうに太陽があるので、裏側は銀色にかがやいていると想像するのはすてきなこと。

・理緒は、急に今朝のお母さんのことを話したくなった。

・「朝からくもっていたのに、うちのお母さんは、『今日もいい天気』って言ったんですだよ。」

・「おもしろいお母さんだね。あ、いいお母さんって意味だけど。」という高橋さん。

・「うん」と理緒は返事をした。はずむような声が出ていた。

<場面>

 この物語は、教科書の36ページの学習の手引きのページに、「三つの場面に分かれている」と書かれていますが、このブログで紹介している方法で、場面を5つに分け、1場面を40字程度にまとめてみます。 

①  理緒は、クラスがえであかねと希恵と分かれ不満をもつが、気持ちをわかってもらえない。

②  次の日、席がえがあり、となりの席は高橋さん。なんだか話しにくそうと感じる理緒。

③  給食時苦手な食べ物は「世界一おいしいものと思うようにしてる」と教えてくれる高橋さん。

④  あかねと希恵を見ても見送るしかできない理緒に「パークに行こう。」とさそう高橋さん。

⑤  銀色の裏地という言葉でこまったことがあってもいいことをさがそうと勇気づけられた理緒。

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<人物の会話>

 このお話に出てくる主人公の理緒の心情は、思春期の子どもにありがちなのですがゆれ続けます。

 ここで、重要な会話は、理緒の会話ではなく、理緒に伝えられる3つの会話です。

 1つめは、お母さんの会話です。

・「あかねちゃんたちは、あなたをはげまそうとしていたんでしょ。いつまでもぐずぐずしないで、さ、元気に登校しなさい。ほら、今日もいい天気。」

 2つめは、しいたけが苦手だと言う理緒に対する高橋さんの会話です。

・「しいたけ、わたしも苦手。だから、食べるときに、これはまだ食べたことのない、世界一おいしいものだって想像して食べることにしている。」

 3つめは、「銀色の裏地」について説明する高橋さんの会話です。

・「全ての雲には銀色の裏地がある。これ、外国のことわざなんだけどね。」

・「うん、くもっていても、雲の上には太陽があるから、雲の裏側は銀色にかがやいている。だから、銀色の裏地をさがそう。そういう歌があるんだって、おじいさんが教えてくれた。くもったーーじゃなかった。こまったことがあっても、いやなことがことがあっても、いいことはちゃんとあるんだって。」

 これらの3つの会話などを通して、仲よしの友だちとクラスが分かれ、悲しんでいた理緒の心もはずむような声が出るまで変化していきます。

<人物の行動>

 人の心情は、行動からも分かることがあります。

 たくさんあるのでしょうが、ここでも理緒のたくさんの行動の中から3つに絞って書くことにします。

 1つめは、朝登校をしぶる様子の理緒の行動です。

 お母さんからは、「いつまでもぐずぐずしないで、さ、元気に登校しなさい。」と言われます。

 人間いやなことがあると、行動はゆっくりぐずぐずするものです。

 2つめは、高橋さんに対する第一印象が変わった時の理緒の行動です。

 理緒は、最初は高橋さんのことを「つんとしている」と思っていましたが、高橋さんが給食をおいしそうに食べ、楽しそうにおしゃべりをして、全然つんつんしていないこと、それどころか、おもしろい人のようだ、という発見をしても、すなおに喜べなくて、喜べない自分にもやもやしていました。その時、理緒は不思議な顔をしていたみたいです。幼なじみの土田君によると「おこっているような、こまっているような、そんな顔」をしていたみたいです。

 3つめは、あかねと希恵を見た時の理緒の行動です。

・これまでだったらすぐに追いかけたはずなのに、理緒は、二人の後ろすがたを見送ることしかできなかった。

 気持ちが落ちこむと、行動も消極的になってしまうようです。

<主題>

 この物語の主題は、何でしょうか?

 題名の「銀色の裏地」の意味について主人公の理緒が理解し、行動や気持ちがよい方向に変化するということなのかもしれません。

 世の中や人生には、受け入れがたいような「こまったことやいやなこと」があります。でも、高橋さんが説明するように「こまったことがあっても、いやなことがあっても、いいことはちゃんとあるんだって」と思えるかどうかは、とても大切なことのようです。

 この物語では、クラスがえで、仲よし三人グループははなれてしまったが、代わりに理緒は、新しい高橋さんという仲よしの友だちができたということなのかもしれません。

<表現の工夫>

 このお話での表現の工夫の一つは、理緒の心情がていねいに、なおかつ、ユーモラスに表現されていることです。

 あかねにはげまさられながらも、理緒の心は複雑です。

・「うん。」と答えながら、だからってそれでいいってことにはならないんだと理緒は思った。三人でいても、なんだかもう、二人と一人みたいだった。

 お母さんにいい天気と言われても厚い雲におおわれている空を見て理緒は思います。

・「いい天気って、うそばかり、思いっ切りくもりじゃん。」

 お母さんのいいかげんさに、はらが立つよりおかしさがこみ上げてきた。よし、今日のくじ引きはいい席を引き当てるぞ。理緒はそう意気ごんだ。

 となりの席が高橋さんになり、なんとなく話しかけにく様子に理緒はとまどいます。

・なんだか話しかけにくいーー。

 理緒は右を向いて、教科書をわすれたら見せて、と心の中でかべによびかけた、それからすぐに、見せられるわけないでしょ、と自分で自分につっこみを入れた。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

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 他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。

大造じいさんとガン 教材分析009に進む内部リンク

初雪のふる日 教材分析001に進む内部リンク

世界一美しいぼくの村 教材分析002に進む内部リンク

世界でいちばんやかましい音 教材分析003に進む内部リンク

海の命 教材分析020に進む内部リンク

雪の夜明け 教材分析023に進む内部リンク

 物語文の教材研究については、次のページもお読みください。

物語文の教材研究の仕方(1)基本的な考えに進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(2)視点に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(3)設定・人物に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(4)あらすじ・場面に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(5)会話・行動に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(6)主題に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(7)表現の工夫に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(8)指導法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(9)指導方法に進む内部リンク

物語文の教材研究の仕方(10)目標と教材の関係に進む内部リンク

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