ヤドカリとイソギンチャク 教材分析043

教材分析
つばさ
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ヤドカリとイソギンチャク」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、「ヤドカリとイソギンチャク」です。

ヤドカリとイソギンチャク:教材分析

🟠ヤドカリとイソギンチャク:教材分析

 この教材は、東京書籍の4年生の教科書に掲載されている説明文です。

<作者>

 武田正倫(たけだ・まさつね)作

 参考図書:「さんご礁のなぞをさぐって」(文研出版・1990年)を元にして、この教科書のために書き下ろされたものです。

 武田正倫さんについて

 1942年(昭和17年)に東京で生まれました。日本の動物学者です。

 横浜国立大学学芸部生物学科を卒業後、九州大学大学院農学研究科博士課程を修了されています。

 日本大学助手、国立科学博物館研究官、主任研究官、動物第三研究室長を歴任後、東京大学理学部教授になりました。

 主な研究テーマは、十脚甲殻類を中心とした動物分類系統学です。

<題名>

 題名は「ヤドカリとイソギンチャク」です。

 題名を見た時に、子どもの中には、ヤドカリとイソギンチャクの関係について書かれたものと思う子どもがいるかもしれません。

 海に住むヤドカリとイソギンチャクの関係について知りたいと思う子どももいるでしょう。

<はじめとおわり>

はじめ

 最初に、「ヤドカリの仲間で、さんごしょうに多いソメンヤドカリは、貝がらにイソギンチャクを付けて歩き回っています。」と書いています。

 その後、中には九つのイソギンチャクを付けているものがいたことも書かれていて、ヤドカリやイソギンチャクを好んでいることがよくわかります。

おわり

 最後に、「さんごしょうの美しい海では、いくつものベニヒモイソギンチャクを貝がらに付けた、ソメンイソギンチャクを見ることができます。ヤドカリとイソギンチャクは、たがいに助け合って生きているのです。」と書かれています。

 どちらにも、ヤドカリとイソギンチャクのことが書かれていますが、おわりでは、明確に「助け合っている」ことが書かれています。

<形式段落>

 形式段落は、全部で12段落です。

 形式段落毎の簡単な内容は、次の通りです。

① ヤドカリは、イソギンチャクをつけていることがある。

② なぜ、ヤドカリは、いくつものイソギンチャクを貝がらにつけるのか。

③ それを調べるために、実験をした。

④ タコのいる所にイソギンチャクをつけていないヤドカリを放すと、タコに食べられる。

⑤ タコのいる所にイソギンチャクをつけたヤドカリを放すと、タコに食べられない。

⑥ ヤドカリは、イソギンチャクをつけることで身を守ることができる。

⑦ ヤドカリは、イソギンチャクをどのようにして自分の貝がらにうつすのか。

⑧ カナダのロス博士は、次のような観察をした。

⑨ ヤドカリは、イソギンチャクを見つけると、はがして自分の貝がらにつける。

⑩ イソギンチャクは、ヤドカリにつくことで何か利益があるのか。

⑪ 動けないイソギンチャクは、ヤドカリにつくことで動くことができ、えさが手に入る。

⑫ ヤドカリとイソギンチャクは、たがいに助け合って生きている。

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説明文の教材研究(4) 段落関係と要点に進む内部リンク

<意味段落>

 ここでは、5つの意味段落に分かれていると考えてみることにします。

①段落:序論(はじめ)

 ヤドカリが、たくさんのイソギンチャクをつけていることがあることについて書いています。

②~⑥段落:本論1(なか1)

 疑問1とその疑問への実験を通した答えについて書かれています。

 疑問1とは「なぜ、ヤドカリは、イソギンチャクを貝がらをつけているのか」です。

⑦~⑨段落:本論2(なか2)

 疑問2・3とその疑問への観察を通した答えについて書かれています。

 疑問2とは「ヤドカリは、どうやってイソギンチャクを自分の貝へうつすのか」です。

 疑問3とは「ヤドカリが、イソギンチャクのはりでさされることはないのか」です。

⑩~⑪段落:本論3(なか3)

 疑問4とその疑問への観察などを通した答えについて書かれています。

 疑問4とは「イソギンチャクは、ヤドカリの貝がらにつくことで何か利益があるのか」です。

⑫段落:結論(おわり)

 最後に、ヤドカリとイソギンチャクは、互いに助け合っていることについて書いています。

<大事な言葉>

 ヤドカリ、イソギンチャク、さんごしょう、観察、タコ、しょく手、利益

 なお、私が子ども用に作っている「よみもの」で、「ヤドカリ」や「珊瑚礁」などについて簡単な文を書いています。よければ、お読みください。

ヤドカリ Hermit Crabsに進む外部リンク・よみもの

珊瑚 coralに進む外部リンク・よみもの

珊瑚礁 Coral Reefに進む外部リンク・よみもの

珊瑚礁の役割 Role of Coral Reefsに進む外部リンク・よみもの

説明文の教材研究(5) 大事な言葉と要約に進む内部リンク

<表現の工夫>

問いかけ

 この説明文では、4つの疑問を提示しています。

 疑問を提示し、それに応える形で論が進んでいきます。とてもわかりやすい説明になっています。

 最初の疑問は、次の通りです。

なぜ、ヤドカリは、いくつものイソギンチャクを貝がらに付けているのでしょうか。

 次に、2つの疑問を続けてあげています。

ヤドカリは、石に付いたイソギンチャクを、どうやって自分の貝がらにうつすのでしょうか。

ヤドカリは、イソギンチャクのはりでさされることはないのでしょうか。

 最後に、4つめの疑問をあげています。

イソギンチャクは、ヤドカリの貝がらに付くことで、何か利益があるのでしょうか。

 この問いかける言い方(疑説法)によって、読み手の知的欲求が高まり、その答えを知りたくなりますので、文章をさらに読みたくなります。

写真とイラスト

 この説明文には、扉に1枚、本文中に1枚の写真と5枚のイラストがあります。

 言葉で説明することに加えて、写真があることで、ヤドカリとイソギンチャクとタコとの関係がとてもよくわかるようになっています。

 ヤドカリがイソギンチャクを自分の貝がらにつけるイラストは、どのような過程で貝殻につけていくのかよくわかるようになっています。

<要旨>

 この説明文では、「ヤドカリとイソギンチャクは共生関係にある。」ということが説明されています。

 ヤドカリとイソギンチャクは、一緒に住むことで互いに利益があることがよくわかります。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「説明文の教材研究」で取りあげたいくつかの視点に基づいて行ったものです。

 なお、NHK for Schoolに、「イソギンチャクとヤドカリ」の動画があります。

イソギンチャクとヤドカリに進む外部リンク)2分34秒

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

⭐️   ⭐️

 なお、説明文に関係する次の項目についても、併せて読んでください。

説明文の教材研究(1) 教材研究の視点に進む内部リンク

説明文の教材研究(2) はじめとおわりに進む内部リンク

説明文の教材研究(3) 文章の構成に進む内部リンク

説明文の教材研究(4) 段落関係と要点に進む内部リンク

説明文の教材研究(5) 大事な言葉と要約に進む内部リンク

説明文の教材研究(6) 引用に進む内部リンク

説明文の教材研究(7) 表現の工夫(対比)に進む内部リンク

説明文の教材研究(8) 列挙 反復 問いかけに進む内部リンク

説明文の教材研究(9) 比喩 数量化 程度差に進む内部リンク

説明文の教材研究(10)なぜ教材研究をするのかに進む内部リンク

説明文の指導の仕方(1)指導計画に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(10)に進む内部リンク

⭐️   ⭐️

 他の説明文の教材分析も併せてお読みください。

ウナギのなぞを追って 教材分析004に進む内部リンク

数え方を生みだそう 教材分析005に進む内部リンク

さわっておどろく 教材分析006に進む内部リンク

ありの行列 教材分析010に進む内部リンク

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