自然のかくし絵 教材分析026

教材分析

自然のかくし絵」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、「自然のかくし絵」です。

自然のかくし絵:教材分析

🟠自然のかくし絵:教材分析

 この教材は、東京書籍の3年生の教科書に掲載されている説明文です。

<作者>

 矢島稔(やじま・みのる)作

 出典:「自然のかくし絵ー昆虫の保護色と擬態」(偕成社・1983年)

 矢島稔さんについて

 日本の昆虫学者です。

 1930年(昭和5年)、東京府豊多摩郡野方町(現・東京都中野区)に生まれました。子どもの頃に、日本昆虫学会主催のコンクールで論文が入賞し、昆虫学者になろうと考えました。

 東京学芸大学を卒業し後、豊島園昆虫館の創設を手伝いました。その後、上野動物園水族館館長、多摩動物園園長、群馬県立ぐんま昆虫の森園長などをされていました。

 2022年(令和4年)4月に亡くなりました。

<題名>

 題名は「自然のかくし絵」です。

 題名を見た時に、自然の中にある「かくし絵」とは一体何だろうとふしぎに思える題名です。

 題名から、子どもが何だろうと興味をもつところが、とても工夫された題名です。

 この「自然のかくし絵」という題名は、最後の段落にも出てきます。

<はじめとおわり>

はじめ

 木のみきにとまったセミや葉のしげみに下りたバッタを見失うことがある。セミやバッタは、木のみきや草の色と見分けにくい色をしている。見分けにくい体の色は、てきから身を守るのに役立つ。身をかくすのに役立つ色のことをほご色という。

 具体的な虫の様子から説明をはじめ、簡単に「ほご色」について説明しています。

おわり

 ほご色は、どんな場合でも役立つとはかぎらないが、てきにかこまれ生きるこん虫には役立っている。ほご色は、自然のかくし絵だといえる。

 「ほご色」がこん虫の役に立つことと、ほご色が、題名でも示されている「自然のかくし絵」になっていることについて書いています。

説明文の教材研究(2) はじめとおわりに進む内部リンク

<形式段落>

 形式段落は、全部で12段落です。

 形式段落毎の簡単な内容は、次の通りです。

① 木のみきにとまったセミや葉のしげみに下りたバッタをふと見失うことがある。

②   セミやバッタはまわりと見分けにくい色でてきから身を守る。この色をほご色という。

③   こん虫は、ほご色によって、どのようにてきから身をかくしているのだろうか。

④   コノハチョウの羽のうらはかれ葉のような色で、羽をとじた形も木の葉にそっくりだ。

⑤   トノサマバッタは二色あり、自分の体の色がほご色になるような場所をえらんですむ。

⑥   まわりの色のへんかに合わせ体の色をかえるゴマダラチョウのよう虫のような虫もいる。

⑦   このほかにも、ほご色によって上手にてきから身をかくし、身を守るこん虫がいる。

⑧   では、こん虫は、どんなときでもてきから身を守ることができるのだろうか。

⑨   こん虫を食べる生き物が色を見分ける力は、人間と同じくらいなのでほご色は役立つ。

⑩   こん虫はきまった時間だけ活動し、ほかの時間はじっと休むことで、身をかくしている。

⑪   こん虫は動いたときには、するどい目をもつ鳥やトカゲに食べられることがある。

⑫   ほご色はずいぶんこん虫の役に立つ。ほご色は、自然のかくし絵だということができる。

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説明文の教材研究(4) 段落関係と要点に進む内部リンク

<意味段落>

 ここでは、4つの意味段落に分かれていると考えてみることにします。

①~②段落:序論(はじめ)

 見失うことのあるセミやバッタの例から、こん虫はまわりから見分けにくい色で、てきから身を守っていることを説明し、このような色のことを「ほご色」ということを説明しています。

③~⑦段落:本論1(なか1)

 こん虫は、ほご色によって、どのようにてきから身をかくしているのかということを、コノハチョウ、トノサマバッタ、ゴマダラチョウのよう虫などの具体例をもとにして説明しています。

⑧~⑪段落:本論2(なか2)

 こん虫は、どんなときでもてきから身を守ることができるのかということを説明しています。こん虫は、きまった時間だけ活動し、長い時間じっとしてしているが、動いたときには食べられることもあることが書かれています。

⑫段落:結論(おわり)

 どんな場合でもほご色が役立つとはかぎりません。しかし、てきにかこまれて生きるこん虫の役に立っています。ほご色は、自然のかくし絵だということができるしょうと、書いています。

<大事な言葉>

 自然、かくし絵、木のみき、葉のしげみ、てき、ほご色、こん虫、あざやかな、かれ葉、かっ色、活動、動作

 なお、私が子ども用に作っているよみもの」で、「蝶々」について簡単な文をいろいろと書いています。よければ、お読みください。

蝶々ちょうちょに進む外部リンク・よみもの

ちょう一生いっしょうにすすむ外部リンク・よみもの

まもちょうにすすむ外部リンク・よみもの

説明文の教材研究(5) 大事な言葉と要約に進む内部リンク

<表現の工夫>

問いかけ

 この説明文では、2つの疑問を提示しています。

こん虫は、ほご色によって、どのようにてきから身をかくしているのでしょうか。

では、こん虫は、どんなときでもてきから身を守ることができるのでしょうか。

 問いかける言い方(疑説法)によって、読み手の知的欲求が高まり、その答えを知りたくなりますので、文章を読みたくなります。

説明文の教材研究(8) 列挙 反復 問いかけに進む内部リンク

<比喩的表現>

 この説明文の題名の「自然のかくし絵」という表現そのものが、「比喩的表現」です。

 この説明文では、「ほご」について具体的な虫の例を取りあげて説明しているのですが、「自然のかくし絵」という表現をすることで、子どもたちの理解が進みます。

 また、本文の中でも、コノハチョウという虫の羽を「かれ葉のような色」と表すことで、どのような色をしているかよくわかるようにな書き方になっています。

説明文の教材研究(9) 比喩 数量化 程度差に進む内部リンク

同類の事例の列挙

 この説明文では、ほご色を使って身を守るこん虫の具体例を3つも出しています。具体的に、コノハチョウ、トノサマバッタ、ゴマダラチョウのよう虫という3つの例を出すことで、「ほご色が身を守るのに役立つ」という筆者の述べようとすることの説得性が強まることになります。

対比

 「鳥やトカゲなどが色を見分ける力は、人間と同じくらいです」と書きます。よくわかっている人間と比べることによって、説明対象である「鳥やトカゲ」の特質が明瞭に読み手に伝わるようになっています。

説明文の教材研究(7) 表現の工夫(対比)に進む内部リンク

写真

 扉の写真を含めて、8つの写真を使っています。言葉で説明するだけではわかりにくいこん虫やほご色についても、写真があることで、視覚的にもとてもよくわかるようになっています。

<要旨>

 この説明文では、『「自然のかくし絵」と言い換えることのできる「ほご色」が、こん虫がてきから身を守るために、とても役立っていること』について説明しています。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「説明文の教材研究」で取りあげたいくつかの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

⭐️   ⭐️

 なお、説明文に関係する次の項目についても、併せて読んでください。

説明文の教材研究(1) 教材研究の視点に進む内部リンク

説明文の教材研究(3) 文章の構成に進む内部リンク

説明文の教材研究(6) 引用に進む内部リンク

説明文の教材研究(10)なぜ教材研究をするのかに進む内部リンク

説明文の指導の仕方(1)指導計画に進む内部リンク

説明文の指導の仕方(10)に進む内部リンク

⭐️   ⭐️

 他の説明文の教材分析も併せてお読みください。

ウナギのなぞを追って 教材分析004に進む内部リンク

数え方を生みだそう 教材分析005に進む内部リンク

さわっておどろく 教材分析006に進む内部リンク

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