「サラダでげんき」という文章の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、1年生の教科書に載っている「サラダでげんき」です。
サラダでげんき:教材分析
🟠サラダでげんき:教材分析
この作品は、東京書籍の1年生の教科書に掲載されています。
<作者>
角野栄子(かどの・えいこ)さん作
出典:「こどものとも302号」(福音館書店・1981年)
角野栄子さんについて
1935(昭和10)年、東京府東京市深川区(現・東京都江東区深川)で生まれます。
5歳の時に母を病気でなくします。父は、深川で質屋を営み、物語をよく聞かせてくださったそうです。江戸川区立西小岩国民学校に入学します。
父が出征したために、父が戻るまで、小岩の自宅で、継母と弟と一緒に暮らしていたそうです。
小学4年生の時に、山形県に学童疎開します。学童疎開先の山形県から千葉県に移りました。
終戦後、東京に戻り、大妻中学校に編入後、1953年(昭和28年)に大妻高等学校を卒業し、早稲田大学教育学部英語英文学部に入学しました。
大学時代は、アメリカ文学研究者の龍口直太郎教授のゼミに参加しました。
大学卒業後、紀伊國屋書店出版部に勤務した後、一年ほどで結婚しました。
インテリアデザイナーだった夫の希望で1959(昭和34)年、24歳の時に、自費移民としてブラジルに2年間滞在しました。
早稲田大学の恩師である龍口さんの勧めで、1970年(昭和45)年、35歳の時に、ブラジルでの体験を元に描いたノンフィクション「ルイジンニョ少年、ブラジルをたずねて」(ポプラ社)で作家デビューします。
角野栄子さんの代表作である「魔女の宅急便」(1985年・福音館書店)は、次の2つから着想を得て生まれたそうです。
1つは、大学生の時に、写真週刊誌の「Life」で見た「鳥の目の高さから見たニューヨークの風景写真」と一人娘で、現在アートプロデューサーやイラストレーター、童話作家などをされている「くぼしまりお」さんが、中学生の時に描いた魔女のイラストに着想を得て執筆されたそうです。
<題名>
題名は「サラダでげんき」です。
この題名から、サラダを食べて元気になるお話だということがわかります。
<設定>
いつ(時):おかあさんがびょうきのとき
どこ(場所):りっちゃんのいえ
だれ(登場人物):りっちゃん、おかあさん
<人物>
りっちゃん……主人公。病気のおかあさんになにかいいことをしようと考える。
おかあさん……びょうきになっている。
のらねこ……サラダにかつおぶしを入れるとよいことを教えてくれる。
いぬ……サラダにハムを入れるとよいことを教えてくれる。
すずめ……サラダにとうもろこしを入れるとよいことを教えてくれる。
あり……サラダにおさとうを入れるとよいことを教えてくれる。
うま……サラダににんじんを入れるとよいことを教えてくれる。
しろくま……でんぽうで、サラダにこんぶを入れるとよいことを教えてくれる。
アフリカぞう……サラダに、あぶらとしおとすを入れ、まぜるのをてつだってくれる。
<あらすじ>
・りっちゃんは、おかあさんがびょうきなので、なにかいいことをしてあげたいとおもった。
・かたをたたくか、なぞなぞごっこをするか、くすぐってわらわせるか、それともとかんがえた。
・そして、げんきになるサラダをつくることにした。
・きゅうりをトントン、キャベツはシャキシャキ、トマトもストントンときると、さらにのせた。
・こらねこがのっそりきて、サラダにかつおぶしを入れるといい、といった。
・となりのいぬがとびこんできて、サラダにハムを入れるといい、といった。
・まどにすずめがとんできて、サラダにとうもろこしを入れなきゃ、といった。
・ずらりとならんだありが、「おさとうをちょっぴりがこつ」とおしえてくれる。
・おまわりさんをのせたうまが、サラダにはにんじん、といった。
・しろくまは、でんぽうで、サラダにこんぶをいれるとよいことを、つたえてくれる。
・ひこうきできたアフリカぞうは、サラダに、あぶらとしおとすを入れ、まぜるのをてつだってくれる。
・りっちゃんは、おかあさんに「いっしょにサラダをいただきましょ。」といった。
・りっちゃんのおかあさんは、サラダをたべて、たちまちげんきになった。
<場面>
物語を、このブログで紹介している方法で、場面を5つに分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。
① りっちゃんは、おかあさんがびょうきなので、なにかいいことをしてあげたいとおもった。
② いっしょうけんめいかんがえて、りっちゃんは、げんきになるサラダをつくることにした。
③ ねこ、いぬ、すずめ、あり、うま、しろくまが、サラダづくりをてつだってくれた。
④ さいごに、ひこうきできたアフリカぞうが、まぜるのをてつだい、サラダができた。
⑤ りっちゃんのおかあさんは、サラダをたべて、たちまちげんきになった。
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このお話は、いろいろな生き物がやってきて、りっちゃんのサラダづくりを手伝ってくれる楽しいお話です。ここでは、④場面の中に、6種類の生き物をいっしょに入れましたが、本当は、それぞれに分ける方がいいです。
それに、それぞれの生き物は、やってくる方法もユニークですし、サラダにその食べ物や調味料などを入れとよいとする理由もとてもユニークです。詳しくは、次の人物の会話と行動で説明します。
<人物の会話>
りっちゃんの会話には重要なものがたくさんあります。
ここでは、最初と最後の2つだけを取り上げることにします。
・「あっ、そうだわ。おいしいサラダをつくってあげよう。げんきになるサラダをつくってあげよう。
・「おかあさん、さあ、いっしょにサラダをいただきましょ。」
その他には、いろいろな生き物のりっちゃんへの呼びかけの言葉もいいです。
最初に来たのらねこは言いました。
・「サラダにかつおぶしを入れるといいですよ。すぐにげんきになりますよ。木のぼりだってじょうずになりますよ。ねこみたいにね。」
次に、いぬが言いました。
・「なんといっても、ハムサラダがいちばんさ。これをたべると、ほっぺたがたちまちももいろにひかりだす。ハムみたいにね。」
すずめも言います。
・「チュッ、チュッ。とうもろこし入れなきゃ、げんきになれない。うたもじょうずになれない。チュッ、チュッ。チュピ、チュピ、チュ。」
ありたちも言います。
・「サラダにはおさとうをちょっぴり。これがこつ。おかげで、ありはいつもはたらきものさ。」
うまも言います。
・「なんといっても、サラダにはにんじん。おかげで、かけっこはいつも一とうしょう。」
会話ではありませんが、白くまは、でんぽうでつたえます。
・「サラダにはうみのこんぶ入れろ、かぜひかぬ、いつもげんき。ほっかくかい 白くまより」
最後に、アフリカぞうが言います。
・「まにあってよかったよかった。ひとつおてつだいしましょう。」
そして、さらに、次のように続けます。
・「いや、いや、これからがぼくのしごと。」
<人物の行動>
りっちゃんの行動には重要なものがたくさんあります。
まず、おかあさんにサラダをつくろうとしたりっちゃんの行動は、次のように書かれています。
・りっちゃんは、サラダをつくりはじめました。きゅうりをトントントン、キャベツはシャシャシャキ、トマトもストントントンときって、大きなおさらにのせました。
そこにさまざまな生き物がやってきます。その生き物の行動はとてもユニークです。
・すると、のらねこが、のっそり入ってきていいました。
・そこへ、となりのいぬがとびこんできました。
・まどに、すずめがとんできていいました。
・すると、こそこそと、小さなおとがしました。ありが、ずらりとならんでいました。
・こんどは、おまわりさんをのせたうまがやってきました。
・そのとき、「でんぽうでえす。」とこえがして、でんぽうがとどきました。
このでんぽうは、白くまからきたものです。
・とつぜん、キューン、ゴーゴー、キュというおとがして、ひこうきがとまると、アフリカぞうがせかせかとおりてきました。
・アフリカぞうは、サラダにあぶらとしおとすをかけると、スプーンをはなでにぎって、力づよくくりんくりんとまぜました。
最後の大切な行動は、りっちゃんのお母さんの行動です。
・りっちゃんのおかあさんは、サラダをたべて、たちまちげんきになりました。
<主題>
この物語の主題は、何でしょうか?
読んで楽しいお話ですので、明確な主題があるわけではありませんが、強いていえば、次のようになるかもしれません。
「病気のお母さんのために、りっちゃんといろいろな生き物が知恵を出し合って、サラダを作ること」ということかもしれません。
<表現の工夫>
この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。
特に目立つのは、様子を表すさまざまな擬態語や音(擬声語・擬音語など)が使われていることです。
その時、指導する上で、知っておいてほしいことに、様子を表す言葉の中でも、擬態語は「ひらがな」を使い、音(擬声語や擬音語など)は「かたかな」を使うということがあります。
・りっちゃんは、サラダをつくりはじめました。きゅうりをトントントン、キャベツはシャシャシャキ、トマトもストントントンときって、大きなおさらにのせました。
・すると、のらねこが、のっそり入ってきていいました。
・とつぜん、キューン、ゴーゴー、キューというおとがして、ひこうきがとまると、アフリカぞうがせかせかとおりてきました。
この3つの文の中で、「のっそり」「せかせか」の2つは、様子を表す擬態語ですから、ひらがなが使われています。
同じく「トントントン」「シャシャシャキ」「ストントントン」「キューン、ゴーゴー、キュー」
の4つは、音(擬声語・擬音語など)ですので、かたかなが使われています。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
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他の教材の教材分析については、次のページをお読みください。
かいがら 教材分析073に進む(内部リンク)
スイミー 教材分析030に進む(内部リンク)
他の関係する文章についても、次のページをお読みください。
かたかなと擬態語に進む(内部リンク)
角野栄子さん 教科書の作家②に進む(内部リンク)
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