角野栄子さん 教科書の作家②

作家紹介
つばさ
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作家の「角野栄子」さんの紹介です。

 国語の教科書には、さまざまな作家が出てきます。

 そのような作家の中から一人を取り上げ紹介したいと思います。

 今回は、「角野栄子」さんです。

角野栄子さん:教科書の作家②

イラスト:「ぺるこ」さん

<簡単な経歴>

 角野栄子(かどのえいこ)さん

 1935(昭和10)年1月1日に、東京府東京市深川区(現・東京都江東区深川)で、渡辺栄子(わたなべ・えいこ)さんとして生まれます。

 5歳の時にお母さんを病気でなくします。さみしさを紛らわすために物語をよく空想したそうです。

 幼い頃に突然母親を亡くしたことで次のように、思ったそうです。

 姉と私、弟を残して突然母がいなくなってしまいました。死の意味がわからず、母はどこに行ってしまったのかという恐怖を感じました。その時から『見えない世界』があると思うようになり、さみしさを紛らわすために物語を空想しました。

日本経済新聞社記事 言葉のリズム感 父から継承 2021年9月14日

 お父さんは、深川で質屋を営み、物語(「宮本武蔵」や「ああ無情(レ・ミゼラブル)」などをよく聞かせてくださったそうです。

 江戸川区立西小岩国民学校に入学します。

 お父さんが出征したために、お父さんが戻るまで、小岩の自宅で、新しいお母さんと弟と一緒に暮らしました。

 小学4年生の時に、山形県に学童疎開しました。

 東京の深川の店は、東京大空襲で、焼失したそうです。

 その後、異母兄弟も含めて、6人きょうだい(姉1人、弟2人、妹2人)で育ちました。

 学童疎開先の山形県から千葉県に移りました。

 終戦後、東京に戻り、大妻中学校に編入しました。

 1953年(昭和28年)に大妻高等学校を卒業し、早稲田大学教育学部英語英文学部に入学しました。

 大学時代は、アメリカ文学研究者の龍口直太郎教授のゼミに参加していたそうです。

 大学卒業後、紀伊國屋書店出版部に勤務した後、一年ほどで結婚しました。

 インテリアデザイナーだった夫の希望で1959(昭和34)年、24歳の時に、自費移民としてブラジルに2年間滞在しました。

 早稲田大学の恩師である龍口さんの勧めで、1970年(昭和45)年、35歳の時に、ブラジルでの体験を元に描いたノンフィクション「ルイジンニョ少年、ブラジルをたずねて」(ポプラ社)で作家デビューします。

 角野栄子さんの童話作品では、ポプラ社の「アッチ コッチ ソッチのちいさなおばけ」シリーズなどが有名です。これまでにおよそ250もの作品や書籍が出版されています。

 東京書籍の小学校1年生の国語の教科書に「サラダでげんき」が、掲載されています。

<魔女の宅急便と角野栄子さん>

 角野栄子さんの代表作である「魔女の宅急便」(1985年・福音館書店)は、次の2つのことから着想を得て生まれたそうです。

 1つは、大学生の時に、写真週刊誌の「Life」で見た「鳥の目の高さから見たニューヨークの風景写真」です。

 もう一つは、一人娘で、現在アートプロデューサーやイラストレーター、童話作家などをされている「くぼしまりお」さんが、中学生の時に描いた魔女のイラストです。

 この2つのことから、魔女の宅急便が生まれたそうです。

 みなさんご存知のように、この「魔女の宅急便」は、宮崎駿さんにより1989(平成元)年、アニメ映画化され、大ヒットしました。

 角野さんは、この作品を書いた時は魔女について、それほど詳しかったわけではありませんでしたが、映画の公開に伴い、魔女についての質問されることが多くなったことで、魔女について調べ始めたそうです。その後、魔女に関係する「新魔女図鑑」(ブロンズ新社・2000年)などの本も出されています。

 ただ、この作品が発表された時には、「宅急便」という言葉が問題になったことがあったそうです。

 それは、「宅急便」という言葉は、ヤマト運輸が商標権を持っていたからです。一般的に、比較的小さな荷物を各戸へ配送する輸送便は、「宅配便」といいます。

 しかし、多くの人はそのことを知らないと思います。角野栄子さんも一般名称と思って「宅急便」を用いたのでしょう。

 映画化されるときに、このアニメをそのままヤマト運輸のCMにした物も作られています。なお同映画を元にした登録商標は、スタジオジブリが取得しているそうです。

 角野栄子さんは、「魔女の宅急便」の映画化に際して、当初は唯一の注文として「キキが旅立つ時にキキの故郷の木に付けられていた鈴を鳴らすこと」のみを求めていたそうです。

 その後、制作が進むに連れて、内容が大きく変わることに角野さんの気持ちは少し否定的になったそうです。

 しかし、角野栄子さんと宮崎駿さんは何回も対談されて、角野栄子さんの気持ちは、原作と違うストールにも、徐々に肯定的になったそうです。

 角野栄子さんの紹介とは関係ないのですが、2024年1月に漫画のドラマ化に際して、原作者の漫画家である芦原妃名子(あしはら・ひなこ)さんが、自分の思いとは違うドラマ化と、その後のSNSなどのやり取りなどを苦にして、亡くなられるという、本当に悲しい出来事がありました。

 原作の作品化に関しては、原作者とアニメ化やドラマ化を制作するスタッフとの関係がスムーズでなくなることも珍しくないのかもしれません。しかし、今後、童話や漫画などのドラマ化、映画化などに際しては、角野栄子さんと宮崎駿さんのやり取りなどを参考にして、粘り強く誠実に交渉をしていただきたいと思いました。

「魔女の宅急便」がアニメ化されてからおよそ25年過ぎた2014(平成26)年3月に、魔女のキキ役を小芝風花さんが演じた実写版が公開されました。こちらの作品は、アニメ版とは違い、原作の第1巻・第2巻を基とした実写化です。

 この実写版では、原作者の角野栄子さんがナレーションを担当しています。その上、「パンを受け取る客」として出演もされています。

 角野栄子さんファンにとっては、有名なのかもしれませんが、魔女の宅急便という作品は、次のような6作品にも渡るシリーズ作品です。

魔女の宅急便(福音館書店・1985年)

魔女の宅急便その2:キキと新しい魔法(福音館書店・1993年)

魔女の宅急便その3:キキともう一人の魔女(福音館書店・2000年)

魔女の宅急便その4:キキの恋(福音館書店・2004年)

魔女の宅急便その5:魔女のとまり木(福音館書店・2007年)

魔女の多急便その6:それぞれの旅立ち(福音館書店・2009年)

 最後の「それぞれの旅立ち」では、キキは、とんぼさんと結婚して、ふたごのお母さんになっています。お姉さんのニニと弟のトトはふたごなのに性格は正反対でした。魔女になれるニニはあまり魔女に興味がなくて、魔女になれないトトは魔女に興味津々です。

 キキと同じように13歳になって旅立ちのときを迎えるふたごと、キキをはじめ、コリコの町の人たち、それぞれの新たな旅立ちを描いています。

<最近の角野栄子さんの活躍>

 2000(平成12)年に紫綬褒章、2014(平成26年)に旭日小綬章を受賞されました。

 2018(平成30)年には、国際アンデルセン賞作家賞を受賞されています。

 2023(令和5)年11月には、江戸川区角野栄子児童文学館が開館しました。愛称魔法の文学館で、館長は角野栄子さんがなさっています。

 館内は角野さんのテーマカラーである「いちご色」に彩られています。展示エリアには「魔女の宅配便」の舞台「コリコの町」や、角野のアトリエを再現した常設展示室、企画展示室などが設置されています。

 読書エリアには「子どもから大人までが読めるおもしろい物語」をテーマに、角野栄子さんが選書した絵本などの書籍が約1万冊程度揃えられています。本はランダムに配置され、子どもたちが、自分の本を探す楽しみがあるそうです。

 また、旧江戸川を望む「カフェ・キキ」も併設されています。

江戸川区角野栄子児童文学館に進む外部リンク

 なお、魔法の文学館では、寄附も受け付けているそうです。寄付は、1万円以上ですが、30万円以上すると、素晴らしいプレセントがあります。

 30万円以上寄附いただいた方のお名前で本型銘板を作成し、館内に展示設置いたします。(原則3年間)

 本型銘板には角野さんが考えた本の題名が入ります。

魔法の文学館ホームページ

 2024(令和6)年1月には、角野栄子さん主演のドキュメンタリー映画カラフルな魔女 ~角野栄子の物語が生まれる暮らし~」が公開されました。

カラフルな魔女 ~角野栄子の物語が生まれる暮らし~・オフィシャルサイト外部リンク

 この映画では、角野栄子さんの楽しい日常生活が描かれています。

 例えば、次のような事柄です。

 角野さんは散歩が好きなこと

 ブラジルに長期滞在をされていたこと

 ブラジルでの少年との出会いを描いた作品が初めての作品だったこと

 とてもピンク色が好きなこと

 めがねがとても好きなこと

 角野栄子さんの初めての作品である「ルイジンニョ少年、ブラジルをたずねて」で描いたブラジル少年(映画ではかなりご高齢になられていましたが)と、60年ぶりの再会をしたこと

 角野さんの図書館(先程紹介した魔法の文学館)ができたこと

 ぜひ、たくさんの方に、この映画を見ていただきたいです。

 そして、私自身改めて、角野栄子さんの作品をたくさん読みたいな、と思いました。

 この映画は、もともとNHKのスタッフが約4年間に渡り、角野栄子さんを取材をしたドキュメントが元になっています。

 そのNHKにおいて、「カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし めぐる時間 めぐる物語」という番組が放送されます。

 NHKのEテレで、2024(令和6)年2月4日(日)午後6:00〜午後6:30(30分間)放送されます。

 再放送は、NHK Eテレで、2024(令和6)年2月5日(月)午後1:30〜午後2:00(30分間)放送されます。

 この番組の紹介ページに進む外部リンク・NHK

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カラフルな魔女 角野栄子さん ドキュメンタリー①に進む内部リンク

魔女の宅急便① 誕生とアニメ化 ファンタジーを読む②に進む内部リンク

魔女の宅急便②:通過儀礼 ファンタジーを読む③に進む内部リンク

魔女の宅急便③:シリーズ化 ファンタジーを読む④に進む内部リンク

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