今回も「魔女の宅急便」について書きます。
「魔女の宅急便」というお話は日本で最もよく知られているファンタジー作品のひとつです。
今回は、「魔女の宅急便③:シリーズ化」について書きます。
魔女の宅急便③:シリーズ化
イラスト:ぺるこさん
🟠魔女の宅急便③:シリーズ化
<魔女の宅急便のシリーズ化>
魔女の宅急便は、世界16か国で翻訳されている角野栄子さんの代表作です。
魔女の宅急便は、元々この作品だけで終わる予定でした。しかし、続編が次々に作られ、2009(平成21)年までに6巻まで続き、終了しています。
次の6作品です。
魔女の宅急便(福音館書店・1985年)
魔女の宅急便その2:キキと新しい魔法(福音館書店・1993年)
魔女の宅急便その3:キキともう一人の魔女(福音館書店・2000年)
魔女の宅急便その4:キキの恋(福音館書店・2004年)
魔女の宅急便その5:魔女のとまり木(福音館書店・2007年)
魔女の多急便その6:それぞれの旅立ち(福音館書店・2009年)
では、なぜ1巻で終わる予定だったのに、6巻まで続くことになったのでしょうか。
その理由について、角野栄子さん自身が話をされている動画があります。
2024(令和6)年2月4日にNHKのEテレで放送された「カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし/めぐる時間 めるぐ物語」の中で、角野栄子さんは、講演会で次のような話をされています。
あのね、1巻で終わるつもりだったの。そしたら、「続くはどうなんですか?」という話がおきたのね。キキがだんだんだんだん大きくなるじゃないですか。だんだん大きくなると、恋もあるだろう、ライバルも出てくるだろう。そのままにしておくわけにはいかないのよ。サザエさんみたいに。
めぐる時間 めるぐ物語
この放送では、続けて、ナレーターの宮﨑あおいさんが、次のように続けます。
魔女の宅急便は、角野さんが48歳の時から20年以上にわたって書き継いだライフワーク。13歳で魔女になるために修行を始めたキキが、母となって、子どもたちの旅立ちを見送るまでが描かれます。
めぐる時間 めるぐ物語
最後の6巻では、キキはとんぼさんと結婚して、ふたごのお母さんになっています。お姉さんのニニと弟のトトは、ふたごなのに性格は正反対でした。魔女になれるニニはあまり魔女に興味がなくて、魔女になれないトトは魔女に興味津々です。
キキと同じように13歳になって旅立ちのときを迎えるふたごと、キキをはじめ、コリコの町の人たち、それぞれの新たな旅立ちを描いています。
<13歳という年齢>
13歳という年齢は、子どもから大人へ向かう思春期真っ只中の年齢といえます。
キキの住む世界では、13歳という年齢はとても大きな意味をもっています。
この本の中に次のような文章があります。
人間と魔女が結婚をして、生まれた子どもが女の子のばあいは、たいてい魔女として生きていくのが普通でした。でもたまにはいやがる子もいるので、十歳をすぎたころ、自分で決めてよいことになっていました。もし魔女になると決心がつけば、ただちにおかあさんから魔法をおしえてもらって、十三歳の満月の夜をえらんで、ひとり立ちをすることになります。この魔女のひとり立というのは、自分の家をはなれ、魔女のいない町や村をさがして、たったひとりで暮らしはじめることです。
魔女の宅急便
日本では、13歳というのは、ちょうど、中学生になる年齢です。小学校から中学校に進むというのは、日本に住む少女や少年にとっても、キキほどではないでしょうが、とても大きな意味をもつ年齢といえるかもしれません。
体が大きく変化し始め、心も、幼いころや小学生のころとは、変わってきます。
心身ともに大きな変化を迎える思春期の子どもをそばで見守る大人にとっても、子どもにどう接するのかはとても難しい問題です。
「魔女の宅急便」において、13歳のキキは、母親の干渉について、次のような感想をもちます。
「かあさんはひとり立ちのことになると、大げさにさわぐんですもの。それになんでも口をはさみたがるでしょ。とたんに話がややっこしくなっちゃまうんだもん」
魔女の宅急便
思春期の子どもにどのように接するのかは、親や周りの大人にとって、なかなか困難な作業なのです。
ほっておいても、かまってくれないとすねたり、さみしがったりするでしょうし、過度な干渉は、キキのように、「大げさにさわぐ」と思われてしまいます。
つかず離れず、接するのがいいのでしょうが、その見極めが上手にできる大人は少ないのかもしれません。
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