かがみの弧城:ファンタジーを読む①

ファンタジー作品
つばさ
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かがみの弧城」という素晴らしい作品があります。

 映画「かがみの古城」が、2022年12月22日から公開中です。

 今回は、「かがみの弧城」について書きます。

かがみの弧城:ファンタジーを読む①

🟠かがみの弧城:ファンタジーを読む①

 今回紹介するファンタジー作品は、辻村深月(つじむら・みづき)さんの書かれた「かがみの孤城」です。

 この作品は、2017年(平成29年)にポプラ社から発行されました。2018年(平成30年)には、本屋大賞も受賞しています。小学生の子どもでも読めるように、全ての漢字に読みがなをつけた児童書版も出版されています。

この物語や映画については次のページを見てください。

ポプラ社:かがみの孤城に進む外部リンク

映画「かがみの孤城」に進む内部リンク

<子どもにとって学校とは?>

 学校というところは、多くの子どもにとって楽しいところです。

 しかし、一部の子どもにとっては、とても恐怖を感じるところでもあります。

 何かの事柄が理由になり、学校に通えなくなることがあります。

 多くの子どもにとって、学校に通うことは普通のことです。

 しかし、さまざまな理由で通えなくなることがあります。

 今学校に通えなくなることの一番大きな理由は、不登校です。

 なぜ、不登校になるのかということに関しても、理由は様々です。

 友だちからのいじめを受けたからという明確な理由がある場合もありますが、全ての子どもの理由が、その子ども自身やその子どもの親にとって明確なわけではありません。

 中には、なんとなく行けないという子どももいます。

 不登校の子どもに対して、その子が不真面目で怠惰だから学校に行けないのだとか、親がしっかりしていないから行けないのだとか、その子どもの状況がよくわかっていないのに決めつける人もいますが、行かないのではなく、行けないことも多いのです。

 学校に行きたいのに、お腹が本当に痛くなっていけなくなることもあるのです。

 学校に行っていない状態だけを見て、自分で行かないことに決めたという間違った印象をもっている人もいますが、中には、前の晩に明日こそ学校に行こうと決め、親にそのことを話して約束し、学校に行く準備までしたのに、朝になると学校に行けないという子どももいます。

 学校に通えなくなる理由には、不登校だけではありません。

 病気になってしまって学校に行けなくなることもあります。

 白血病や心臓病、腎臓病、癌など、子どもが学校に通えなくなるような病気もたくさんあります。昨日まであんなに元気だったのに、急に病気になってしまうこともあります。

 なぜ、病気になってしまったのだろうと思うこともありますが、その理由は誰にもわかりません。多くの病気になった人は、なぜ自分だけ病気になってしまったんだろうと思いますが、その理由は明確にわかるわけではありません。

 なぜ、どうして病気になってしまったのかと嘆いても病気が治るわけではありません。

 そのような病気になった子どもも学校に行けなくなります。

 どんなに学校に行って勉強がしたくてもできません。まずは、病気を治すことに専念する必要があるからです。

<かがみ=ふしぎな世界に行くきっかけ>

 このような何らかの理由で学校に行けなくなった子どもが7人、鏡を通して、ある城に集められました

 それが、今回紹介する「かがみの弧城」のはじめの状況です。

 この物語に出てくる主人公の女の子は、こころさんです。

 それから約1年を通していろいろなことが起きます。

 このようなファンタジー作品では、現実世界からふしぎな世界に移る時に、何らかのきっかけがあります。

 この物語では、そのきっかけが、鏡です。

 かがみの孤城に集められた7人の中学生たちは、みんなかがみを通して、この城にやってきました。

 ファンタジーの世界では、さまざまなものやことが、現実の世界からふしぎな世界にいくきっかけになります。

 5年生の教科書に出てくる宮沢賢治さんの注文の多い料理店では、ごうごうと吹く風が、現実の世界とふしぎな世界を結ぶきっかけになりました。

 2年生の教科書に出てくるあまんきみこさんの書かれた「名前を見てちょうだい」でも、ふしぎな風が帽子を飛ばすことで、ふしぎな世界に入っていきます。

<数字の7・ふしぎな数字>

 この物語では、7という数字も大きな意味をもちます。

 日本では、虹は七色です。他の国では決して七色と決まっているわけではないそうです。

 7という数字はラッキーな数字とされています。

 西洋においても、数字7には、特別の意味があります。旧約聖書の「創世記」には、「神が天と地と万象とを6日間で創造し、7日目を安息日とした。」 と記されています。数字の「7」は聖なる数であるとされていますし、一週間が7日ある理由も、そのことが関係しています。

 ピタゴラスは、7を人間の成長における区切りの数と考えていたそうです。7歳までを幼児期、14歳までを児童期、21歳までを少年期、28歳までを青年期、49歳までを成人期、56歳までを中老年期、63歳までを老年期としていました。

 その他、「七草がゆ」「七不思議」「七福神」など、7がつく言葉もたくさんあります。

 子どもの好きなお話でも7の出てくる話があります。「おおかみと七匹の子やぎ」です。

 このファンタジー作品では、この「おおかみと七匹の子やぎ」というお話も大きな意味をもっています。

 このファンタジー作品では、数字の「7」という数字にも大きな謎が含まれています。

<本当によく練られたストーリー>

 この「かがみの弧城」というお話は、とてもよく練られたストーリーです。

 見事としか言いようがありません。

 随所に散りばめられた伏線も、最後には見事に回収されています。

 さぞ最初にきちんとよく考えてストーリーを作ったのだろうと思いましたが、どうやらそうではないみたいです。

 作者の辻村深月さんは、この作品が映画化され、公開される直前の2022年12月21日に、日本テレビの「ZIP!」という番組に出て、アナウンサー水卜麻美さんのインタビューで、次のように答えています。

辻村さん:「私の場合は、とりあえず書いてみてから徐々にわかることが多いです。

辻村さん:「『かがみの孤城』でいうと、城の秘密があるじゃないですか。あの(城の)秘密に気づけたのが夏休み過ぎたところで、あ、わかった、って思った。

水卜さん:「なに、それ、すごい。

辻村さん:「閃いたとかではなくて、こころたちが教えてくれたみたいな感じです。

 この物語は、5月から3月まで続くのですが、3分の1程度書き進めたところまで、辻村さん自身も秘密がわからないまま書いていたそうです。

 毎回作品を「今回は、駄作になっちょうかもしれない覚悟で毎回書いていて、今までもどうにかなったという蓄積だけでやっている」そうです。

辻村さん:「逆に言うと設計図をガチガチに固める書き方だとできないものなんですね。そうすると、多分それ以上のものにならなかったり、設計図作ったところで満足してしまうかもしれないな、と思う。

また、水卜麻美さんから「なぜあんなに(学生の気持ちが)わかるのか?」と尋ねられて、こう答えています。

辻村さん:「水卜さんと同じ感想を現役10代の子どかからいただくんです。今大人に見えているけど私も実は昔、子どもだったんだよ、という気持ちになるんですよね。みなさんが共感してくれるのも中学生や子どもの時の自分はもう違うものと思っていてもやっぱり自分の心の中にいるんですよね。

 この作品以外にも、辻村深月さんの作品はたくさんありますが、どの作品もとても素晴らしいです。

 冬休みのこの時期、映画からでも、物語からでもいいので、ぜひ、この素晴らしい作品に接してほしいと強く思います。

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