いま、必要なユーモア教育の技術という本の紹介をします。
小学校は、学ぶところです。
しかし、その学びの場は、楽しくユーモアのある場であるといいなと思います。
今回は、「いま、必要なユーモア教育の技術」という本について紹介します。
いま、必要なユーモア教育の技術
🟠いま、必要なユーモア教育の技術
<ユーモアとは>
ユーモアとは、どういう意味でしょうか。日本では、「ユーモア」とは、「その場にいる人を和ませる、笑いの起こるような会話や動作」のことでしょう。「ユーモアのある人」とは、「その場にいる人を楽しい気持ちにさせ、笑いを誘うような会話をしたり文を買いたりできる才能やセンスのある人」のことでしょう。
言い換えると、ただ単に笑いをとるのではなく、一定の品を保ちつつ、相手を傷つけずに楽しませたり、笑わせたりすることです。人を傷つけたり、人を不快な気分にさせるようでは、笑いが起こってもユーモアがあるとは言わないのかもしれません。
<学校におけるユーモア>
学校は、真面目に勉学に勤しむ場です。しかし、できれば、無味乾燥に勉学に勤しむのではなく、時折、笑いが起こるような、楽しく、明るい場であればいいなあ、と思います。学校生活の中では、時折教員や子どもが楽しい話題をもちだし、笑いが起こるような教室であることは大切なことのように思います。
当然、教室で笑いが起こる話題などは、誰かを傷つけたり、仲間はずれにしたり、馬鹿にしたり、外見や容姿を中傷したりするようなものであってはいけないと思いますが、楽しく、明るくなるような話題であれば、少しぐらい授業から逸脱するようなことがあってもいいのかもしれません。
教員は、基本的には真面目な人が多く、あまり冗談なども言わない人も多いのかもしれませんが、子どもとの学校生活の中では、ゆとりをもって、子どもが時折、くすっと笑うようなお話をすることがあってもよいと思います。
勿論、教員は、噺家や漫才師ではありませんので、いつも楽しいことを言えるわけはありません。しかし、教員の口から、明石家さんまさんのような楽しい会話が少しでもあったり、冗談を言う子どもを優しくフォローしたりすることがあれば、多くの子どもにとって、学校はもっと楽しい場になるのかもしれません。
授業の中にユーモアのある話題が出てくると、子どもはもっと授業を楽しいと感じるのかもしれません。
<有田和正さんについて>
今回紹介する「いま、必要なユーモア教育の技術」という本は、有田和正さんによって執筆され、2003年に明治図書から出版されました。
この本は、次のページから購入することができます。
いま、必要なユーモア教育の技術が購入できるページ(外部リンク)
有田和正氏は、長年、筑波大学附属小学校の教員でした。有田氏は、社会科を中心に実践をする教師でした。
「追求の鬼を育てる」という言葉を作って、教育界に新しい風を吹かせたすぐれた教育者です。
調べがいのある「教材」を開発し、子どもに「はてな?」と思わせるような優れた「発問」や「指示」を行い、子どもを「追求の鬼」に変容させ、工夫された「板書」をして、子どもを育てていました。
多くの著書を執筆した有田氏ですが、私も次のような本を買い、勉強しました。
「追求の鬼を育てる」(有田和正著・明治図書・1989年)
「『はてな?』で育つ子どもたち」(有田和正著・図書文化・1989年)
「ノート指導の技術」(有田和正著・明治図書・1991年)
有田氏は、筑波大学附属小学校を退官後、愛知教育大学教授になりました。
残念なことに、2014年に亡くなられています。
<有田和正氏のユーモアの例>
有田和正氏が紹介しているユーモアに「うんこのホテルにはプールがあるよ。」という文があります。
この文を読んで、どのような意味かわかりますか?
この本の中から、少し引用します。
黒板に、ゆっくりと、しかも大きく
「うんこのホテルにはプールがあるよ」
と書いた。何人かの子どもがクスクス笑い出した。しかし、意味のわからない子どもは「なんだろう」と笑っている子の方をキョロキョロみている。そこで、
「今、笑った子はユーモアのセンスのある子です。どうして笑ったのか、そのわけをいってください」
という。
「あのね、『うんこのホテル』なんてないでしょう。『うん』のあとに『点』をつけるのを忘れていると思うから」
という。一年生でもちゃんとわかるのである。
これで、キョロキョロ組もようやく、「おかしいわけ」がわかり、遅れて笑うことになる。「うん」の次に「、」を打つと、S君がすかさず、
「これが、本当に『てんで話にならない」というやつだね」
といったので、教室じゅう大笑いになり、しばらく止まらなかった。実に絶妙のタイミングでいったのである。
「S君のユーモアのセンスはすごい!」と大いにほめた。
これで、「文に点を打つことの大切さ」を一度で体得した。点のぬけた文を書くと、「うんこのホテルだよ」という。あわてて点を打つ。
いま、必要なユーモア教育の技術
この授業では、子どもを楽しませつつ、文に点を打つことの大切さを学ばせています。
見事な授業だと思います。
一年生の子どもに向かって、次のような授業をした場合と比べてみるとどうでしょうか。
「今日は、文に点を打つことについて学びます。では、はじめに、今日の学習のめあてを、黒板に書きますから、見ていてくださいね。『ぶんには、てんをうちましょう』はい、では、みんなで一緒に黒板のめあてを、読んでみましょう。」
同じ、文に点を打つことの大切さを学ぶ授業でも、子どもへのインパクトと、理解度には多いに違いが生まれてくるように思います。
教育の場においても、ユーモアとは、とても大切で、有益なものです。
有田氏の学校では、しばらくしてから、運動会があり、学校に来た学級の子どもの弟くんから、有田氏は、「うんこの先生」と声をかけられたそうです。「何よ、うんこの先生って?」とお母さんから叱られた弟くんは、「うんこのホテルにはプールがあるの先生だよ」といったそうです。そうすると、周りの多くの人が、この授業のことを知っていて、大笑いをしていたそうです。
有田氏は、続けて書いています。
面白い話はすぐに広がる。そして、人々を楽しませる。子どもたちに、自然に覚えさせる。
大人も子どもも、こんなユーモアのあふれる話を待っている。だから、ユーモアのある話は子どもも、大人も引きつける。面白がせて教育すると効果も上がる。だったら、この手法を使わない手はない。
いま、必要なユーモア教育の技術
有田氏は、この本の中で、ユーモアのもつ教育効果について書かれています。この例を見るだけでも、確かに、ユーモアには、教育的な力があることが、よくわかります。
<「いま、必要なユーモア教育の技術」という本>
この本は、次のような章立てで構成されています。
1章 「ユーモア教育」で子どもとクラスを変えよう
2章 ユーモアは「笑いの練習」から
3章 子どもの「明るい面」を伸ばす
4章 すぐ笑えるのは能力のある証拠
5章 ユーモアのセンスの鍛え方
6章 「ユーモア」をアップするいくつかの方法
7章 「子どものユーモア力」をアップする技術と教材の開発を
8章 生活面でもさりげなく鍛える
9章 ユーモアを育てる教育
いま、必要なユーモア教育の技術
いかがでしょうか。この章立てを見るだけでも、有田氏の考えるユーモア教育の一端がわかるのではないでしょうか。
ぜひ、自分なりに、学校生活や授業の中に、ユーモアを取り入れてみてください。
教員がユーモアを学校の授業や日常生活の中に取り入れると、きっと、子どもは、今までよりももっと学校が楽しいと感じると思います。
⭐️ ⭐️
なお、子ども向けに書いた「笑い話」が、次のところにあります。
読んでみて、面白いと思えば、子どもに紹介してみてください。
ぼくがしました I did it.にすすむ(姉妹ブログ、よみもの)
だいじょうぶですかにすすむ(姉妹ブログ、よみもの)
ずっとあなたが…にすすむ(姉妹ブログ、よみもの)
かけこみ乗車にすすむ(姉妹ブログ、よみもの)
なお、有田和正氏の名言については、次のところに書いています。
工夫しながら勉強する教師は必ず伸びるに進む(内部リンク)
どんな子どもでも好きにならなければ、教育は成立しないに進む(内部リンク)
他の本の紹介もお読みください。
教育書紹介:フィンランドの教育力に進む(内部リンク)
教育書紹介:もしドラに進む(内部リンク)
教育書紹介:子どもと悪に進む(内部リンク)
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