個別指導の技術について知りたいです。
小学校の学習は、基本的には集団での学習です。
しかし、子ども1人1人の実態に合わせた指導をすることで子どもの力は伸びます。
今回は、「個別指導の技術」について書きます。
個別指導の技術
🟠個別指導の技術
<空白の禁止>
小学校の学習は、基本的には集団での学習が基本になります。
しかし、子どもの実態は様々です。
ある1時間の授業において、学級内の全ての子どもが、教師が提示した授業の目標や学習のめあてを達成するためには、教師は様々な技術を駆使する必要があります。
個別指導をする時にも、教師は技術をもっておくことが大切です。
この時にもっとも大切だと思うのが、向山洋一氏が「授業の腕をあげる法則」(明治図書・1985年)という本の中で取り上げた「授業の原則十ヵ条」という記述の中の1つの原則です。
それは、次のようなものです。
第七条 空白禁止の原則
たとえ一人の子どもでも空白な時間を作るな。
授業の腕をあげる法則
向山氏は、次のように続けます。
子どもの一人一人を机によんで指導するときがある。指導されるとよくわかり、すぐに課題が終えてしまうことがある。終ったから、何をしようかと思うと、何もすることがない。
教師の方はというと、次々に押しよせる子どもに個別指導をするのでテンテコ舞である。
課題をやり終えた子どもが次々と生まれてくる。
その子たちは、はじめチョロチョロといたずらを始める。やがて大胆になり、そのうち教室は騒然となる。
これは、当然ながら教師が悪い。
ヴェテランといわれる教師はここの所がしっかりしており、新卒の教師はここが駄目だから「教室の静けさ」に差が出てくる。
さて、空白を作らないためには、指示の原則がある。
授業の腕をあげる法則
さて、ここで問題です。向山氏は、どのような指示を行うのでしょうか。どのような指示を行えば、空白を作らずにすむのでしょうか。次の文章を読む前に少し考えてみてください。
向山氏は次のように続けます。
まず全体に、大きな課題を与えよ。然る後に個別に指導せよ。
これを逆にしてはならない。
時々、全体に指示を与えないで、個別に指導している人がいる。これなど、最悪の部類である。
授業中の個別指導は「完全にさせる」ではなく「短く何回もさせる」ということを原則にせよ。
授業中の個別指導は「短く何回も」というような形でやって「どんなことをしても完全に」というのは、特別の時間を作って指導するときにまわした方がいい。
授業の腕をあげる法則
全体に何をするのかを明確に伝え、その課題に取り組ませます。そして、全ての子どもが何かしている間に、机間指導をしたり、ノートをもってこさせたりして、子どもの様子を把握します。
そして、支援の必要な子どもには、言葉がけをしたり、個別の説明をしたりします。学級の大部分の子どもは、自分の課題をしているわけですから、教師が1人の子どもに個別指導をしていても、問題はありません。
しかし、いつまで経っても子どもは自分の課題や作業をしているわけではありません。そのうちに課題や作業を終える子どもが出てきます。空白な時間になってしまう子どもが出てきてしまいます。そうすると、最初と一緒で、教室が騒がしくなってしまいます。
では、どうすればいいのでしょうか。向山氏はさらに続けます。
終わった後の発展課題は必ず用意しておく。
練習問題をやらせていても、漢字を書かせていても、はやい子、おそい子がいる。
「はやく終った子」は何をするのか、準備しておかなければならない。
一年生で足し算を教えている時に、私は「一から十まで足しなさい」「二十から三十まで足しなさい」というような問題を与えた。
こんなことでも、やっていると更に発展する。「一から百までの数のうち、二、四、六・・・(偶数)を足すといくつになりますか」というのを解く子が生まれてきた。
楽しく、挑戦しがいのある問題を準備しておくのは、教師なら当然のたしなみであろう。
授業の腕をあげる法則
私は、算数の場合は、よく同じ数のたし算を9回するように指示していました。
どういうことかというと、なんでもいいので、好きな数字を1つ選びます。
例えば37にしましょう。これをたしていくのです。
37+37=74 74+37=111 111+37=148
148+37=185 185+37=222 222+37=259
259+37=296 296+37=333 333+37=370
このように同じ数を9回たすと、初めの数の10倍の数になります。
このような発展問題では、答えが自分で確かめられるようにしておかないと、教師はその答え合わせのために時間が取られるようになります。それでは、個別指導する時間なんで生まれません。
工夫は必要です。
同じように考えると、ある数(56)の10倍の数(560)から、ある数(56)を10回引いていくと、0になるという応用問題を解くこともできます。
かけ算やわり算ができる子どもの場合は、ある数に2、3、4‥9を順にかけた後、2、3、4‥9で順に割っていくと元の数になります。
国語の場合は、漢字のしりとりなどをさせました。
漢字のしりとりについては、次のページを見てください。
自由研究 国語(じゆうけんきゅう こくご)に進む(このブログの姉妹ブログ「よみもの」に進む)
もっとも簡単な空白を埋める方法は、読書かもしれません。しかし、静かに読書できるようになるためには、地道な指導が必要です。何かの楽しい学習や作業をさせるというのが、もっとも簡単に子どもの空白を埋める方法です。
<短時間の評価と支援>
個別指導における2つめの技術です。
それは、短時間で評価するということです。
例えば、授業中に算数の問題を10問出して、できた子どもから教師に見にこさせる場合、3つできた子どもからノートをもってくるように指示します。
(勿論、全部できた子どもは、先程述べたような算数の発展問題をすることはクラスのルールとして伝えておきます。)
そして、3問のうち、最初の1つだけ見て○をしてノートを返します。1つできていたら、後の問題も自力でできることが多いからです。間違えた子どもには、どこが違うのか、短時間で伝え、正しい解き方を支援をします。全員の分を3問とも見て評価していると、ノートを見てもらうために並ぶ子どもの列がどんどん長くなってしまいます。残りの問題は、後から全体で答え合わせをすればいいのです。
しばらくすると、ノートを持ってこない子どもたちがいます。残念なことに、解き方がわからないので解くことができない子どもです。その子どもたちを呼んで、しっかり個別指導をします。
この他にも個別指導の技術はたくさんあると思います。しかし、まずは、この2つの技術を身につけるだけでも、あなたの指導力は高まると思います。
なお、今回は、向山洋一氏の「授業の原則十ヵ条」の1つを取り上げあげましたが、他の原則については、次のページをご覧ください。
授業の原則十ヶ条に進む(外部リンク)
さらに、向山洋一氏について知りたい場合は、次のページをご覧ください。
プロの技術を身に付けたいのなら身銭を切れに進む(内部リンク)
なお、個別指導の具体的な指導として「大きなかけ算を指でする」算数の指導についてもお読みください。
大きなかけ算を指でする:算数の指導に進む(内部リンク)
具体的な個別の配慮の仕方として、次の資料もお読みください。
音読指導(4)読みやすくする工夫に進む(内部リンク)
リライト教材:教育用語⑤に進む(内部リンク)
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初任者研修資料一覧に進む(内部リンク)
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