「雪は新しいエネルギー」の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、「雪は新しいエネルギー」です。
雪は新しいエネルギー:教材分析
🟠雪は新しいエネルギー:教材分析
この教材は、教育出版の6年生の教科書に掲載されている説明文です。
<作者>
媚山政良(こびやま・まさよし)さん・文
出典:この教科書のために書き下ろしされたものです。
媚山政良さんについて
日本の工学者、工学博士です。主な研究テーマは、熱工学です。
1946(昭和21)年に北海道で生まれました。
室蘭工業大学工学部卒業後、北海道大学工学研究科博士課程を修了されます。
1976年より室蘭工業大学文部技官、1983年より室蘭工業大学助教授、2008年より同大学教授、2012年の退官後は、同大学名誉教授を務めました。
雪を用いた冷熱エネルギー研究(雪氷熱利用)の第一人者として知られています。媚山さんが開発した雪冷房システムは、各地で実用化されています。
<題名>
題名は「雪は新しいエネルギー」です。
副題は、「未来へつなぐエネルギー社会」です。
最近、エネルギー価格が上昇したり、地球温暖化などに影響しないように、クリーンなエネルギーが必要だったりすることを多くの子どもは知っていますので、雪がエネルギーになるという話は、子どもがとても興味をもつ話題だと思います。
<はじめとおわり>
○ はじめ
最初に次のような文から始まっています。
・今、世界各地で、地球温暖化による異常気象や環境問題が起こっています。南太平洋の島々では、海面上昇による水没の危機がせまっています。日本でも、最高気温が三十五度以上の猛暑日が増加しています。私たちが石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を大量に使用することで、大量のエネルギーと引きかえに、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出していることが、地球温暖化化の大きな原因といわれています。
○ おわり
最後の段落では、次のように書いています。
・日本には、雪のほかにも太陽光や水、風、地熱といった豊かな自然の力があります。化石燃料にたよらない新しいエネルギー利用の観点から、自分たちの暮らしている地域の自然の力を見直してみましょう。それが、環境にやさしい新しいエネルギー社会をつくりだすことにつながっていくのです。
<形式段落>
形式段落は、全部で、22段落です。
形式段落毎の簡単な内容は、次の通りです。
① 世界各地で、地球温暖化による異常気象や環境問題が起こっていて、その原因は化石燃料を使用することだ。
② 化石燃料にたよらない社会をどのようにつくりだすとよいのか。
③ エネルギーについて考えてみる。エネルギーとは、「何かにはたらきかけ変化させる力」で、化石燃料以外の再生可能エネルギーが注目されている。
④ 「雪はエネルギーだ」と言われどう思うか。雪は、温度を下げる「冷熱エネルギー」と考えられる。
⑤ 雪国では、雪が積もると道路が通れない、雪の重みで停電になるなどやっかいな存在だ。
⑥ 雪の冷熱エネルギーが利用できると、雪国の暮らしを変える可能性がある。
⑦ 日本では、昔から冬の氷や雪を夏までたくわえる「氷室」があり、雪の冷熱エネルギーを使ってきた。
⑧ この「氷室」の機能を現代にも利用する実験を行った。貯蔵庫を断熱材でおおい、そこに雪と野菜を入れると、電気を使わなくても、低い室温を保てた。
⑨ 貯蔵庫で野菜を長期保存したあとで調べると、ながいもは鮮度を保って保存でき、じゃがいもはあまくなった。
⑩ 野菜を「氷室」で長期保存する施設は、雪国の多くの地域にある。
⑪ 夏の冷房に雪を利用すると、石油を節約でき、二酸化炭素の排出をおさえることができる。
⑫ 北海道のモエレ公園にある「ガラスのピラミッド」という施設では、冬に雪を地下の貯雪庫に保存し、夏の冷房に利用している。
⑬ 北海道の洞爺湖の主要国首脳会議では、冬に雪を保存し、報道関係者用の施設の冷房に利用した。
⑭ 北海道の新千歳空港では、大量の雪を保存し、夏の冷房に必要なエネルギーの約三割をまかなっている。
⑮ しかし、夏に雪を利用するには雪の保存という課題がある。どうすればいいのか。
⑯ 人口二百万人弱の札幌市は、豪雪都市で、除雪作業で集められた雪は年間千五百万トンになる。
⑰ 二〇〇〇年、北海道で雪の保存実験が行われた。四月に四メートルの雪山を作り、バークともみ殻の層でおおうと、半年後まで二・五メートルの雪山を残すことができた。
⑱ こうして、雪をどのように保存するかという課題の解決方法が見つかり、雪国で真夏に雪の利用が可能になった。
⑲ このように雪を新たなエネルギーとして利用する方法はさまざまな分野に拡大している。
⑳ 雪の冷熱エネルギーの課題は今後も考えていく必要がある。雪の利用は雪国に限られている。エネルギー効率が低い。保存施設導入には費用がかかる。
㉑ とはいえ、日本の国土の半分以上は雪国で、人口の十五パーセントが住んでいる。
㉒ 日本には、雪以外にも太陽光、水などの豊かな自然の力がある。自然の力を見直して、環境にやさしい新しいエネルギー社会をつくる必要がある。
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<意味段落>
ここでは、5つの意味段落に分かれていると考えてみることにします。
①~④段落:序論(はじめ)
世界各地で、地球温暖化による異常気象や環境問題が起こっていて、その原因は化石燃料です。化石燃料にたよらない社会をどのようにつくりだすとよいのでしょうか。エネルギーとは、「何かにはたらきかけ変化させる力」のことで、化石燃料以外の再生可能エネルギーが注目されています。「雪はエネルギー」です。雪は、温度を下げる「冷熱エネルギー」と考えらます。
⑤~⑩段落:本論1(なか1):氷室の利用
雪国では、雪はやっかいな存在ですが、雪の冷熱エネルギーが利用できると、雪国の暮らしを変える可能性があります。日本では、昔から冬の氷や雪を夏までたくわえる「氷室」があり、雪の冷熱エネルギーを使ってきました。「氷室」の機能を現代にも利用する実験を行い、貯蔵庫を断熱材でおおい、そこに雪と野菜を入れると、低い室温を保てた上、野菜を長期保存したあとで調べると、ながいもは鮮度を保って保存でき、じゃがいもはあまくなりました。野菜を「氷室」で長期保存する施設は、雪国の多くの地域にあります。
⑪~⑭段落:本論2(なか2):雪冷房
夏の冷房に雪を利用すると、石油を節約でき、二酸化炭素の排出をおさえることができます。北海道のモエレ公園にある「ガラスのピラミッド」という施設では、冬に雪を地下の貯雪庫に保存し、夏の冷房に利用しています。北海道の洞爺湖の主要国首脳会議では、冬に雪を保存し、報道関係者用の施設の冷房に利用しました。北海道の新千歳空港では、大量の雪を保存し、夏の冷房に必要なエネルギーの約三割をまかなっています。
⑮~⑱段落:本論3(なか3)実験3
しかし、夏に雪を利用するには雪の保存という課題があります。どうすればよいのでしょうか。人口二百万人弱の札幌市は、豪雪都市で、除雪作業で集められた雪は年間千五百万トンになります。二〇〇〇年、北海道で雪の保存実験が行われました。四月に四メートルの雪山を作り、バークともみ殻の層でおおうと、半年後まで二・五メートルの雪山を残すことができました。こうして、雪をどのように保存するかという課題の解決方法が見つかり、雪国で真夏に雪の利用が可能になりました。
⑲~㉒ 段落:結論(おわり)
このように雪を新たなエネルギーとして利用する方法はさまざまな分野に拡大しています。雪の冷熱エネルギーの課題はいろいろあります。雪の利用が雪国に限られていること、エネルギー効率が低いこと、保存施設導入には費用がかかることなどです。とはいえ、日本の国土の半分以上は雪国で、人口の十五パーセントが住んでいます。日本には、雪以外にも太陽光、水などの豊かな自然の力があります。自然の力を見直して、環境にやさしい新しいエネルギー社会をつくる必要があります。
<大事な言葉>
地球温暖化、異常気象、環境問題、猛暑日、化石燃料、温室効果ガス、再生可能エネルギー、冷熱エネルギー、氷室、貯蔵庫、断熱材、鮮度、洞爺湖、主要国首脳会議(サミット)、豪雪、削減、
<表現の工夫>
「問いかけ」
この説明文では、次のような問いかけ文が使われています。
・私たちは、化石燃料にたよらない社会をどのようにつくりだしていけばよいのでしょうか。
・みなさんは、「雪はエネルギーだ。」と言われたらどう思いますか。
・どのようにすればよいのでしょうか。
このような問いかける言い方(説疑法)によって、読み手にいろいろなことを考えさせることができますし、さらに、読み手の知的好奇心が高まる効果があります。
「数量化」
この説明文では、たくさんの数字や量が出てきます。
・三十五度以上、約千七百トン(小学校のプール五はい分)、広さ約六百平方メートル(テニスコート三面ぐらいの広さ)、広さ約一万一千平方メートル(野球のグラウンドくらいの広さ)、約三割、人口二百万人に近い、年間千五百万トン、二千万立方メートル(小学校のプール約四万五千はい分)、高さ四メートル、厚さ三十から四十センチメートル、二・五メートル、数万トンから数百万トン、一年に五百億トンから九百億トン、人口の十五パーセント
このような数量化されたデータを根拠にすることによって、述べようとすることの確かさが強まります。
「写真とイラストなど」
この説明文には、扉の写真を含めて9枚の写真と3枚のイラストと、2つの折れ線グラフと1つ地図があります。
言葉で説明することに加えて、写真やイラスト、グラフや地図があることで、言葉で説明していることがよりよくわかるようになっています。
<要旨>
この説明文では、「地球温暖化が問題になっている中、雪という再生可能エネルギーを使い、化石燃料にたよらない、自然の力を使った新しいエネルギーの利用の仕方が考え出されていること」が具体的に説明されています。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「説明文の教材研究」で取りあげたいくつかの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
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