技術の時代 教師の成長段階

成長段階
つばさ
つばさ

技術の時代って何ですか?

 教員には、年齢や経験によって、様々な成長段階があります。

 初任者や新任教員を終えると、次は、様々な「技術」が必要になることが多いです。

 今回は、「教師の成長段階:技術の時代」について書きます。

教師の成長段階:技術の時代

🟠教師の成長段階:技術の時代

<指導技術の大切さ>

 教師を続けていくためには、さまざまな指導技術を身につける必要があります。

技術」には、授業の導入の工夫、指示、発問、指名、板書、ノートの取り方、説明の仕方、話し方、教具や掲示物の使用法、ICT機器の使用など、楽しくわかりやすい授業を進めるだけでもたくさんあります。

 教師は、授業以外にも、さまざまな場面で指導をします。例えば、給食や掃除や係活動などを子どもに主体的に喜んで進めるようにするためには、授業中とは違った「技術」が必要です。

 子どもの興味・関心を惹いたり、困った行動を指導したりするために、ほめ方やしかり方の「技術」を身につける必要もあります。

 初任者や新任教員の時は、このような「技術」がなくても、「体力と情熱」だけで何とかなることもあります。

 拙い授業や指導であっても、子どものことが大好きで、熱心に取り組んでいれば、教師の熱意に対して、子どもはよい反応をしてくれることもあります。

 少々感情的に怒ったとしても、自分のことを考えて、ぶつかってくる先生の熱量に押されて、理不尽な対応でも、子どもは、自然と無理なく納得することがあります。

 しかし、初任者や新任教員のもつ体力や情熱は減退していきます。いつの間にか、全身で子どもにぶつかるのではなく、小手先で対応するようになります。

 このような教師の情熱の減退を、子どもは素早く察知します。本当に自分のことを思って叱ってくれているのか、単に教師の気分が良くないので感情的に怒っているだけなのか伝わります。

 このような「体力と情熱」の減退は普通のことです。

 そのような若気の至りというような拙い指導を補ってくれるのが、指導の「技術」です。

<指導の技術の取得>

 指導の「技術」は、本来は教師になる前に、大学生の時に身につけておくことが必要かもしれません。

 教員になりたての頃は、様々な「技術」を自分が子ども時代に受けた授業や指導の体験や、実習中の指導教官の指導方法から導き出そうとします。

 しかし、多くの教員は、子ども時代から、優等生だった人も多く、学習の理解もよかった子どもであった人が多いので、理解の遅い子どもや授業に身が入りにくい子どもの気持ちが分かりにくいということがあります。

 日本では、残念ながら、教員になってから、様々な指導の「技術」を、自分で身につけていくことを求められることが多いです。

 教員採用試験に合格し、教諭になれば初任者研修制度があります。指導教官がつき指導を仰ぐことになっています。しかし、講師の場合は、その制度はありません。私自身、講師を4年しました。講師の4年間で、概ね基礎的な指導技術を自分で身につけてから、指導教官に指導を仰ぐことになりました。

 ただ、学校現場は、たいへん忙しく、様々な仕事をこなしながら、ていねいな指導を新任教員にするのはむずかしいと思います。

<フィンランドの教員養成制度>

 フィンランドでは、全ての小学校の教員は、大学で5年間学び、修士号を持っています。日本では、大学院を修了した人しか修士号をもっていません。多くの教員は、学位しか持っていません。

 フィンランドでは、座学として、教育学を学びます。児童理解、指導方法、児童心理などの基本的な指導方法を学びます。座学だけでなく、子どもの前に立つ実際的な学習もたくさんします。フィンランドの教育実習は、大学生の5年間に、複数回に分けて、のべ約半年間程度行うそうです。そして、指導教官は、多くの場合は、大学の教官と実習校の教員の2名がつきます。

 一人前の教師として、即戦力になるまで、実習で、ていねいな指導が行なわれます。

 文教大学の学生が作成している「人間科学大事典」の「フィンランドの教員養成」の項目には、「フィンランドの教育実習」について、次のように書いています。

約半年間の教育実習

 実習は、トゥルク大学では、教科担任教師の場合には在学中の5年間で3回ある。まず、1年生のクリスマス前に4週間ある。入学して3ヶ月もすれば、もう授業をすることになる。次に、2年生の2~3月に6週間の実習がある。最後に4年生の9月には、7週間の実習があり、そのうち5週間は自分1人で授業し、2週間は他の実習生のサポートをする。1クラスには4人の実習生が割り当てられ、どの時間も2人がペアになって1人が実習、もう一人がサポートをする役になる。それぞれの実習時間で自分のやりたい教科を固定して担当する。

 小学校教師の場合は、このほかに、3年生に4週間、中学校で特定教科の実習もする。たいてい、男子学生は体育を、女子学生は音楽をとるらしい。合計すると、5年間で20週くらいの教育実習となっており、日本の5週間と比べると時間数だけとっても大きな違いが出てくる。

 しかも学生は、1年生でいきなり実習して失敗し、だからその解決を大学に戻って学び、次の2年生の実習では改善してまたチャレンジし、そこでまた課題を見つけ、さらに学んで3、4年生の実習では自分の得意な分野を伸ばしたり不得意な分野に挑戦して自信をつけるという道筋だ。実践が理論の学びと結びつくようにスケジュールが組み立てられている。

フィンランドの教員養成

 日本の場合、多くの大学の行う教育実習は、4週間程度が一般的です。短期大学の教育学部などでは、2週間の教育実習期間しかない場合もあります。それでも、各自治体の教員採用試験に合格すると、次の年から教諭になり、担任をもち、授業を1日5、6時間程度することになります。

 大学の中には、教師としての指導技術を身につけることを大切にするよりも、教員採用試験に合格するために、採用試験のための勉強や、採用試験で行う面接に力を入れているゼミなどもあります。

 教員の指導力不足が問題にあることがよくありますが、根本的には、教員養成をする大学の質が高まらないことが問題なのかもしれません。

立教大学の学生作成の「人間科学大事典・フィンランドの教員養成」に進む外部リンク

 なお、フィンランドの教育のについては、次のページもお読みください。

教育書紹介:フィンランドの教育力に進む内部リンク

フィンランドの教育のよさに進む内部リンク

<指導技術の取得の仕方>

 指導をするための「技術」の取得の仕方はたくさんあります。自分に合った方法で身につけるのがいいでしょう。

 例えば、次のような方法があります。

勤務校で、指導教官や、学年主任・教科主任などの先輩教員、管理職などから教えてもらう。

自ら進んで研究授業などを行い、事前検討会や授業討議会などで教えてもらう。

校内研修会や教育委員会主催の研修会などで身につける。

教育系大学の附属小学校や他校の研究発表会などに参加する。

教育サークルや大学の教官などが主催する研究会などに参加する。

教育委員会や大学などが公開している教育資料を読む。

教育書や教育雑誌などを読む

日々、授業や指導などを行う中で気づいたことを書き留める

教育系のブログやホームページなどを読む

このブログ「教育よもやま情報」を、時間をかけてじっくり読む。(

 この「教師の成長段階」をまとめる元になった東山紘久氏「遊戯療法の世界」(創元社・1982年)の中で、次のような記述があります。

 技術は自分一人でやみくもにやってもなかなか上達しない良い指導者について教えられるのとそうでないのとでは、進歩に著しい差が生じる。しかし、技術は自分自身に合うように工夫する必要もある先生や先輩の真似をして盗み、やがて自分の味を出さねばならない

東山紘久著 遊戯療法の世界

 個人的に、おすすめの方法は、勤務校の教員の中に、目標にする教員を一人見つけ、指導法などを真似ることです。

 誤解を恐れずに書けば、できれば、異性より同性の教員の方が真似しやすいように思います。

 性格も違いますので、同じやり方でしても同じ結果が得られるわけではありませんが、自分だけでやみくもにやるよりも効果的かもしれません。

 そして、ただ表面的な言動や技術を真似るだけではなく、なぜその方法を取るのかを、どのような考えの元に、その技術を使っているのかを、考えたり、時には、尋ねたりすることも大切だと思います。

 教えを請うても素直に教えてくれないかもしれませんので、しっかり、その技術を使う意図を考える必要があります。

 表面的な「技術」は、時には、授業の質を落としてしまうこともあります。

 できれば、なぜその技術が、多くの子どもにとって効果的なのかが、自分の言葉で説明できるようになれば次の自己理論の時代に移ることができるようになると思います。

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