物語文の指導では,考えを発表し合うことは,大切なんですか。
物語文の指導の仕方を考えています。
ここでは、次のことを書きます。
自分の考えを発表し合い、互いの考えを知り合うことを楽しむこと
自分の考えを発表し合い、互いの考えを知り合うことを楽しむこと
物語文で指導すべきこと・身につけさせることは、次の3つです。
○ すらすら音読できることを楽しむこと。
○ 物語の設定を知り、あらすじを楽しみ、読書に親しむこと。
○ 自分の考えを発表し合い、互いの考えを知り合うことを楽しむこと。
今回は,3つめのことについて書きます。
🟠小学校学習指導要領における記載
物語文の学習に限ったことではないと思いますが、特に、物語文の学習では、自分の考えを発表し合い、互いの考えを知り合うことを楽しむことが大切だと思います。
平成29年告示の「小学校学習指導要領国語編」では、「読むこと」の指導事項として、「考えの形成」と「共有」について、それぞれの学年で、次のようなことを指導するように記載されています。
オ 文章の内容と自分の体験とを結びつけて,感想をもつこと。
カ 文章を読んで感じたことやわかったことを共有すること。
第1学年及び第2学年の内容/〔思考力,判断力,表現力等〕/C 読むこと
オ 文章を読んで理解したことに基づいて,感想や考えをもつこと。
カ 文章を読んで感じたことや考えたことを共有し,一人一人の感じ方などに違いがあることに気付くこと。
第3学年及び第4学年の内容/〔思考力,判断力,表現力等〕/C 読むこと
オ 文章を読んで理解したことに基づいて,自分の考えをまとめること。
カ 文章を読んでまとめた意見や感想を共有し,自分の考えを広げること。
第5学年及び第6学年の内容/〔思考力,判断力,表現力等〕/C 読むこと
金子みすゞさんの詩「私と小鳥と鈴」の中に「みんなちがって、みんないい」という一節があります。
算数や理科のようにどちらかといえば、答えが1つのことが多い教科では、多くの子どもが発表しても、2×3の答えは、6でしかありません。
(勿論、そのような結果に至る学習の中で、考え方や答えの導き方には、様々な考え方や答え方はあります。)
そのような学習に比べ、国語、とりわけ、物語文の学習では、ひとりひとりの子どもの考えに広がりをもつことが期待できます。
勿論、明らかな間違いもあるでしょうし、子どもの考えや発表が全て正しいわけではありませんが、発問を工夫したり、学習の仕方を工夫したりすることで、様々な感想や考えや意見を引き出すことができます。
🟠市毛勝雄さんの考え
市毛勝雄氏は、「文学教材の授業改革論」(明治図書、1997年)の中で、文学教材(物語文)の指導として、「作品全体にわたる子どもたちの自由な感想を話し合う「感想の時間」(まるごと一時間)」をもつことをすすめています。
子どもたちにとっては「自由な感想」の時間は収穫の多い時間である。人の自由な感想は他の子どもたちの感想を刺激し、影響を与える。子どもたちの感想は、揺れやすい。また、それでよい。人生経験が乏しい子どもたちは、文学の世界で起こる様々な事件や人間の心理の有様について、驚いたり、意外に思ったり、不思議がったりする。その一つ一つを授業の中で解決する必要はない。むしろ子どもが1つの文章の表現について長い間いろいろ考え、クラスの仲間と本音で語り合うことが、「言語能力」を鍛えることになるのである。それだけに、先生が「内容指導」として主題はこれだと語ったり、大事な事件はこれだと決めつけたりする指導をしてはいけない。そういう指導は、子どもたちが自分の言葉で自分の考えをまとめる貴重な経験の「場」を奪う、心ない干渉行為である。
市毛勝雄著 文学教材の授業改悪論 明治図書 1997
市毛先生の考えが全面的に正しいわけではないかもしれませんし、反対の考えの方がいるかもしれません。
また、「単元を貫く言語活動」の学習方法を信望する方にとっては、このような学習方法は単元を貫いていないと思う方もいると思います。
ただ、上記のように考える国語科の専門家がいるというのを知っていてもいいと思いますし、そのような国語の時間があってもよいと思います。
🟠互いの感想や考えなどを知り合う際の留意点
子どもがお互いの感想や考えを交流したり,共有したりする際には,いくつかの留意点があります。
大切なこととして,一部の子どもの発表の場にならないようにすることです。
学級には,指導者の発問や指示に対して,素早く反応できる子どももいれば,じっくり考えて、すぐに反応できない子どももいます。
交流の際には,自分の考えをノートやワークシートなどに書くなど、一人一人が自分で考える時間をもつことが大切だと思います。
そして,指導者の役割としては,机間指導を行い、2つのことを行います。
1つは,戸惑ったり,困ったりして,どうしたらよいかわからなくなっている子どもを支援し,自分の感想や考えがもてるように働きかけることです。
もう1つは,子どもの中の誰がどんな感想や考えをもっているのか、意見の分布を把握することです。
そして、どのような順番で,感想や意見を聞いていけばよいのか整理し,指名計画を立てることです。
そのためには,教材研究をして,事前にどのような感想や意見が出そうか予測しておくことも必要だと思います。
物語文の指導の仕方(4)に進む(内部リンク)
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