攻撃的になる:子どもの問題行動(2)

問題行動
つばさ
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子どもはなぜ攻撃してしまうのでしょうか?

 子どもは様々な問題行動をしてしまうことがあります。

 そのような、問題行動の一つに「攻撃的になる」ということがあります。

 今回は、「攻撃的になる:子どもの問題行動(2)」について書きます。

攻撃的になる:子どもの問題行動(2)

🟠攻撃的になる:子どもの問題行動(2)

<子どもの問題行動>

 子どもは、時折、問題行動をしてしまうことがあります。

 学校に関係することでは、暴力行為、いじめ、不登校、仲間はずれ、けんかなどがあります。

 家庭では、兄弟や姉妹でのけんか、親に対する攻撃的な態度、ものを盗むこと、うそをつくこと、家庭のルールを守らないこと、非行に走ることなどがあります。

 そのような家庭などでの問題行動の一つに「ものを壊したり、投げたりするなど攻撃的な行動をとること」があります。

 乱暴な行動をするのは子どもだけではありませんが、大人がものを壊したり、ものを投げて誰かをけがさせたりすると、弁済したり弁償したりする必要が出てきますし、場合によっては、犯罪行為として、警察や裁判所のお世話になることになります。

 子どもがものを壊したり、ものを投げて誰かをけがさせたりした場合は、子どもの代わりに、親や保護者が弁済したり弁償したりする必要もあります。

<なぜ子どもは攻撃的な行動をとるようになるのか?>

 子どもが、ものを乱暴に扱い壊したり、ものを投げたりするなど攻撃的になる原因には、いろいろあります。

 子どもによりその理由にはいろいろあるのでしょうが、ここでは代表的な3つの理由を書きます。

① 言葉の能力が未成熟だから。

 就学前の子どもや小学生の子どもの中には、自分の思っていることを言葉でうまく表せないことがあります。嫌な気持ちになっても、言葉でうまく伝えることができないので、攻撃的な行動にでやすくなるということがあります。

 言葉の発達には個人差や家庭環境が大きく影響します。

 単に年齢が低い場合には、発達を待つ必要があります。理解するまで、ものを乱暴に扱ったり投げたりすることはよくないことであることを繰り返し教えます。子どもが物を使って自分の思いを表そうとする前に、周りにいる大人が、子どもがいやだと感じる気持ちを察して、「いやだったね」と共感するようにするといいのかもしれません。 

② 攻撃することで満ち足りないものを得たいと思うから。

 攻撃的になる子どもの中には、周りの人にかまってほしいという気持ちが強い子どももいます。たとえば、家事をしていて、その前で子どもが自分が描いた絵を見せてくれたら、そのまま「ありがとう」「いい絵だね」だけで終わります。

 しかし、親や保護者などが忙しかったり、下の兄弟がいたりして、親や保護者の注目や愛情が少ないと感じると、上の子が下の子を突き飛ばす行動に出ることもあります。そうすると、親や保護者は、家事の手を止めて「やめなさい!危ないでしょう。」と言って強く反応します。攻撃的な悪いことをした方が、親や保護者がかまってくれると思ってしまうこともあります。

 友だちとの関係でも、乱暴にすることで、友だちの反応は強くなります。乱暴にすると、相手や友だちに嫌われることになるのですが、反応を楽しむことで、自分の存在を相手に印象付けたいと思うこともあるようです。

③ 発達障がいなど発達上の課題があるから。

 子どもの中には、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)の子どもがいます。

 自閉スペクトラム症(ASD)の子どもは、アスペルガーと呼ばれることもある疾患群で、人の気持ちを汲み取りにくい、こだわりが強い、マルチタスクが苦手、感覚過敏などの特性があります。

 注意欠如・多動症(ADHD)の子どもは、不注意、多動性、衝動性、忘れ物が多いなどの特性があります。

 この2つの発達障がいは、別々の疾患ですが、両方の要素を持っている子どもが多いのです。

 発達障がいの子どもは、周りとぶつかることが多く、生きづらいので、そもそもストレスが多くなります。また、発達上の特性から、自分の気持ちを言語することが難しいです。自分が今どうして困っているのかを、自分の中で特定しづらく、困っていることと自分の気持ちが分断されてしまうこともあります。ですから、気持ちがうまく消化しきれません。その上、衝動性の問題もあり、すぐに吐き出してしまい、周りからは攻撃的に見られてしまいます。

<どのような対応をすることが必要か>

① 言葉の能力が未成熟な場合

 この場合の対応としては、言語的発達を加速させていくことが大切です。まずは「いやだったね」と共感して、「こう伝えてみたらどうかな?」と具体的に教えてあげると、だんだん言葉で自分の気持ちを伝えることができるようになります。

 しつけをきちんと行い、ものを投げたり、ものを壊したりしてはいけないことを教えることも必要です。

② 攻撃することで満ち足りないものを得たいと思う場合

 この場合の対応としては、悪いことをするよりも、よいことをした時にこそ、親が強い肯定的な反応をするようにすることです。いい行動をした時こそ、「ありがとう」「うれしいな」と反応したほうが子どもは嬉しくなると思います。

③ 発達障がいなど発達上の課題がある場合

 発達障がいの子どものもつ衝動性については、薬物治療が効くこともあるそうです。

 当然、薬物治療は、医師の仕事ですので、専門医のいる小児科などを受診し、発達検査を受けたり、教育相談をしたりして、子どもの実態を把握した上で、適切な医療的ケアをお願いすることが必要かもしれません。

<攻撃性は良くないことなのか?>

 ただ、日本人の考える攻撃性が必ずしも悪いものではないのではないか、という考えもあります。

 心理療法学者の河合隼雄さんは、「子どもと悪」(岩波書店・1997年)という本の中の「Ⅳ 暴力と攻撃性 :1攻撃性」という文章の中で、次のように書いています。

 英語にアグレッションという言葉があり、日本語では攻撃性と訳される。そこから派生したアグレッシブ(攻撃的ろ訳される)という言葉がある。アメリカ人と話し合っていて、人物評のときに、何某はアグレッシブな人である、というのが肯定的な意味で用いられるのを知って驚いたことがある。そもそも「アグレッシブ」を攻撃的と訳すところに問題があるのかもしれないが、それはやはり日本でいう「元気な」と言うのとは異なる。日本では「元気で仲良く」というのが「よい子」のイメージとして定着している。しかし、アグレッシブな子どもは、自分ということを前面に出し、それを妨害するものに対して向かってゆく姿勢をもっている。これはアメリカでは評価されるが、日本ではやはり「攻撃的」であり、そして少なくとも「よい子」とは言われないのではなかろうか。

子どもと悪:Ⅳ攻撃性:1攻撃性

 もしかすると、わたしたち日本人は、自分の子どもを、自分の扱いやすい「いい子」になるように日頃から育てるようにしているのかもしれません。その中で、子どもが本来もっている普通の行動を抑圧し、型にはめるような行動を知らず知らずの間にしているのかもしれません。

 子どもは、本来、自由気ままなものです。物を投げるのは、よくないことですので、きちんと指導すること必要ですが、強く叱ることは、却って逆効果になることもあります。

 子どもがよくない行動をした時に強く叱るよりも、子どもがよい行動をしたときににっこり笑ってほめる方が、効果的かもしれません。

<子どもの状況を把握し、子どもに合った手立てをとる>

 先程では、攻撃的になる子どもの3つの原因と対応策を書きましたが、子どもが攻撃的な行為をすることには、その子ども固有の原因があります。

 心理的なことが原因の場合が多いのでしょうが、必ずしも同じ原因ではありません。

 ですから、それぞれの子どもに合った対応策をとる必要があります。

 子ども自身に、「なぜ攻撃的な行動をするのか」ということを聞いてもうまく答えられないことも多いように思います。

 子どもが攻撃的になる原因を、子どもをよく観察することで把握し、子どもに合った対応策をとる必要があるかもしれません。

⭐️ ⭐️

 なお、「攻撃的になる」に関係する、次の文章もお読みください。

盗み:子どもの問題行動(1)に進む内部リンク

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