盗み:子どもの問題行動(1)

問題行動
つばさ
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子どもはなぜ盗みをしてしまうのしょうか?

 子どもは様々な問題行動をしてしまうことがあります。

 そのような、問題行動の一つに「誰かのものを盗む」ということがあります。

 今回は、「盗み:子どもの問題行動(1)」について書きます。

盗み:子どもの問題行動(1)

🟠盗み:子どもの問題行動(1)

<子どもの問題行動>

 子どもは、時折、問題行動をしてしまうことがあります。

 学校に関係することでは、暴力行為、いじめ、不登校、仲間はずれ、けんかなどがあります。

 家庭では、兄弟や姉妹でのけんか、親に対する攻撃的な態度、ものを壊したり、投げたりすること、うそをつくこと、家庭のルールを守らないこと、非行に走ることなどがあります。

 そのような家庭などでの問題行動の一つに「盗み」があります。

 しかし、何かを盗むということは、子どもに限った問題行動ではありません。盗みという行為を大人がすると、それは犯罪であり、多くの場合、警察や裁判所のお世話になることになります。

<なぜ子どもは盗むのか?>

 子どもが盗みをする原因には、いろいろあります。

 たくさんありますが、ここでは3つだけ理由を書きます。

① 物の所有の概念がないから。

 幼い子どもの場合は、自分のものと他人のものという概念がありません。多くの場合、3歳くらいから「これは私のもの」「あれは・・さんのもの」という概念が出てきますが、発達には個人差や家庭環境が大きく影響します。

 単に年齢が低い場合の「盗み」は、発達を待つ必要があります。理解するまで繰り返し教え、子どもが物には所有者がいることを理解するのを待つことが必要でしょう。

 このような場合の盗みは、他の子が遊んでいるものを見ているうちに、触ってしまったり、時にはそのまま自分のもののように扱ってしまったりすることで起こります。そのまま悪気なく家まで持ってきてしまうのを、大人が見て「盗んできた」と思う場合があります。

② 盗むことで満ち足りないものを得たいと思うから。

 親や保護者などが忙しかったり、下の兄弟がいたりして、親や保護者の注目や愛情が少ないと感じて、盗むことがあります。

 勉強や習い事などで忙しくて、自分の時間や自由な時間が足りないと感じることがあるかもしれません。そのような心の隙間をものを盗むことで満たそうとすることがあります。

 本当は、ものを盗んでも、満たされることはないのですが、ものを盗むことで、満たされると感じることもあるようです。 

③ クレプトマニア(病的な窃盗癖)であるから。

 「クレプトマニア」あるいは「病的な窃盗症」と呼ばれる人がいます。

 精神医学的には、国際疾病分類(ICD-10)で、「病的窃盗」とされています。 

 この人たちは、「盗み」を止めたくても自分の意思では止められない病気です。依存症の一種で、この場合の「盗み」は、ほとんど万引きというかたちをとります。 つまり盗むことに喜びをもつ状態といえます。

<どのような対応をすることが必要か>

① 物の所有の概念がない場合

 この場合の対応としては、保護者がものの管理をきちんと行い、見慣れないものが増えていないか見ておく必要があります。

 しつけをきちんと行い、他人のものは勝手に使ったり持ってきたりしてはいけないことを教えることが必要です。

② 盗むことで満ち足りないものを得たいと思う場合

 この場合の対応としては、子どもが何を足りないと感じているのかを子ども自身だけでなく、親や保護者も一緒に考えることが必要です。

 心理療法学者の河合隼雄さんは、「子どもと悪」(岩波書店・1997年)という本の中の「 盗み:3 欲しいものは何か」という文章の中で次のように書いています。

 子どもの場合は成長するためには、何かを「とる」必要がある。そのように考えると、子どもが盗むのは、その子どもの成長にとって、何か「必要不可欠」なものを得ようとしていると考えられる

 もちろん、人間は自分に必要なものを「盗む」のではなく、社会的に容認された方法で得るようにするか、どうしても難しいときは辛抱して他の可能性を探すか、断念するかしなくてはならない。このようなことができてこそ大人であると言える。子どもに対しては、盗みは絶対にいけないと教えていくことが大切だが、それと同時に、その子の成長にとって必要なものを、大人が考えてみなくてはならない

子どもと悪:Ⅲ盗み:3 欲しいものは何か

 本当に何が欲しいのかを子どもと親や保護者が一緒に考えることが大切なようです。

③ クレプトマニア(病的な窃盗癖)である場合

 盗むことが習慣化してしまったものが、クレプトマニア(病的な窃盗癖)です。日本では、まだ認知度も低く、治療法などがきちんと確立されているわけではありません。

 残念なことですが、子どもが万引きしていることを親や保護者が見つけた場合、それが初犯である場合を除くと、それまでに何回も繰り返して、習慣化している場合も多いということがあります。

 クレプトマニア(病的な窃盗癖)は不適切な家庭環境や、摂食障害などの併発も少なくないとされています。

 習慣化してしまった場合は、多くの場合、素人には手が負えということもありえます。専門病院などへ相談することも視野に入れるといいかもしれません。

<子どもの状況を把握し、子どもに合った手立てをとる>

 ここでは、3つの原因と対応策を書きましたが、子どもが盗むという行為をすることには、その子ども固有の原因があります

 心理的なことが原因の場合が多いのでしょうが、必ずしも同じ原因ではありません。

 ですから、それぞれの子どもに合った対応策をとる必要があります。

 子ども自身に、「なぜ盗んだのか」ということを聞いても要領を得ないこともあります。たとえ、子どもが盗んだ原因を話したとしても、そのことが本当の原因ではないこともあり得ます。

 河合隼雄さんは、先ほど紹介した「子どもと悪」(岩波書店・1997年)という本の中で、厳しくしつけもしてきたのに、文房具店からものを盗んでしまった小学2年生の子どもに対し、文具店に子どもの代わりに謝りに行くのも、子ども一人だけで文具店に謝りに行かせるのも何か違う感じがして、河合隼雄さんに教育相談に来られた保護者とのやりとりについて、次のように書いています。

 このようなとき、私はすぐに結論を出すことはしない。これをどう解決するかなどということより、このことによって来談された人が何を発見し、何を自分のものにしていくか、という過程が大切だと思うからである。じっくりと先に述べていったような経過をきいていると、話をすることによって自分をある程度客観化したり、そのときの感情を再体験したりして、その人は自分なりの答を自ら見出していくことが多い。その間に、子どもは盗みまでして「ほんとうは、何が欲しかったのでしょうね。」などと問いかけてみたりする。

 子どもが欲しかったのは、母親の愛情である。それではしつけの方はどうなるのかとすぐ言う人に対して、やさしさと厳しさは両立しないものでしょうかね、などと問いかけたりする。子どもに対するしつけは大切である。これは間違いない。しかし、どのようなことでもスローガンになると硬直する。硬直した思考は単純に二者択一になる。厳しくするか、やさしくするか。前者をとることは後者を否定することだと考える。これは機械のすることで、人間のすることではない。(中略)

 ちなみに、このときは、母親は子どもと一緒に文房具屋にあやまりに行くことにした。

子どもと悪:Ⅲ盗み:3 欲しいものは何か

 子どもが「盗む」という行動をすることは、親や保護者にとって、とてもショックな出来事です。今まできちんとしつけをしてきたのに、それを否定されてしまったように感じるかもしれません。

 しかし、子育ては簡単なものではありません。

 子育ては、決して自分の考えた計画や予定通りに進むものではありません。

 子どもは自分の考えをもつ、親や保護者とは違う個性をもつ人間ですので、自分の思い通りにいかないのが普通です。

 子どもは「盗む」という行為をすることでそのことを改めて教えてくれているのかもしれません。

⭐️ ⭐️

 なお、「盗み」に関係する、次の文章もお読みください。

攻撃的になる:子どもの問題行動(2)に進む内部リンク

相手の話を、ただただ一生懸命に聞くに進む内部リンク):河合隼雄さんの名言

教育書紹介:子どもと悪に進む内部リンク

問題行動に関する事例研究 小学校新任教員研修資料045に進む内部リンク

 

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