相手の話を、ただただ一生懸命に聞く

教育者の名言、格言
つばさ
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今回は、河合隼雄氏の言葉を紹介します。

 本を読んでいると、時々、感心する言葉に出逢うことがあります。

 今回は、河合隼雄氏の「相手の話を、ただただ一生懸命に聞く」を紹介します。

相手の話を、ただただ一生懸命に聞く 

🟠相手の話を、ただただ一生懸命に聞く 

<河合隼雄さんについて>

 以前書いたこともありますが、私が学生時代から好きな臨床心理士に河合隼雄さんがいます。 

 大学のゼミの先生がカウンセラーでしたので、遊戯療法やカウンセリングに興味をもっていました。

 学生時代、私にもっとカウンセラーとしてのセンスがあれば、大学院に進学して、心理療法士やカウンセラーになってもいいかもしれないと思ったこともあります。

 学生時代から河合隼雄さんの本はよく読んでいました。教師になってからも、河合隼雄さんの本からは、いろいろなことを学ことができました。

 河合隼雄さんは、1928年に生まれ、京都大学の理学部を卒業後、大学院に在籍されながら、高校の数学の教員をされていました。教員をしながら心理学の勉強も進め、ロールシャッハテストという心理分析の方法を学びました。のちに、スイスに渡り、日本人初のユング派の分析家の資格を取られました。

 ロールシャッハテストというのは、性格検査のひとつです。被験者にほぼ左右対称のインクのしみを見せて何を想像するかを述べてもらい、その言語表現を分析することによって、被験者の思考過程や心理的な問題、障がいなどを推定するものです。

 河合隼雄さんは、日本における分析心理学の普及・実践に貢献し、臨床心理士の資格制度構築にも尽力されました。

 臨床心理士としても、カウンセラーとしても、超一流ですし、教育、心理学、子育て、日本人論など今読んでも有益な著書はたくさんあります。

 残念なことに、2007年に、79才でお亡くなりになりました。

<相談にのること>

 小学校の教員をしていると、子どもや保護者、時には同僚の教職員から相談を受けることがあります。

 本当は、子どもや保護者などは、私たち教員を信頼し、心の内面に関係するような真剣な相談をされますので、きちんと相談にのることができる必要があります。

 しかし、残念ながら、私たち教員は、どちらかというと、教えることに慣れ、教える技術を磨くことに喜びをもつ人種ですので、相談を受けていても、相談に対する正解を見つけて、ついつい自分の考えを伝えたくなる習性があります。

 相手の話を聞かないで、ついつい自分の考えを伝えてしまう傾向があります。

 教員は、限られた時間の中で、いかに効率的に効果的に子どもに学習内容を気づかせ、理解させるかということに思いを巡らせる傾向がありますので、相談の場においても、ついつい話を聞くことよりも、自分の考えを伝えることを重視してしまいがちです。

<相手の話を、ただただ一生懸命に聞く>

 ただ何かを教えるというのではなく、誰かの相談にのる場合は、この方法はあまりうまくいかないことが多いみたいです。

 様々な心理的な問題、例えば、不登校、盗み、暴力行為、いじめ、勉強不振などの問題に対して解決策を見つけるためには、河合隼雄さんのようなカウンセラーは、私たち教員とは少し違うアプローチの方法をとるみたいです。

 それは、今回紹介している「相手の話を、ただただ一生懸命に聞く」ということです。

 河合隼雄さんの著書「心の天気図」(毎日新聞社・1990年/新版・PHP研究所・1995年)に、次のような文章があります。

 僕は、僕は、相談とかカウンセリングということの根本は、「相手の話を、ただただ一生懸命に聞く」ことではないかと思っています。これはもう、最初にして最後のテーマで、それに尽きるんじゃないかと思う。

 みなさんも身近で、相談をしたり、されたりするのを見たらわかると思いますが、最後まで、「真剣に、ただ聞く」という人は、まずいないでしょうね。

 たとえば、うちの子が勉強しなくて困っている、というお母さんがいて、いかに心配か話しだしたとする。そういうのを聞いているうちに、もうウズウズしてきて「あら、お宅のお子さんは、よく勉強してるじゃない」とか、「勉強しなくたって、いろいろ道はあるわよ」なんて、口だしをして言い切ってしまう。相手のことを聞くというより自分の意見を発表したい気持がつよくて(笑)、黙ってられないんですね。

 ただただ真剣に聞く、というのは、黙っているだけだから、楽だろうなんて、とんでもない、それじゃ「真剣」が抜けています。それは、真剣ふうとでも言うか、やはり自分を主役にしている場合が多いですね。ただただ聞くのは、ほんとに、ものすごくエネルギーがいることなんですね。

 だれでも、人の役に立ちたいという気持ちは強いんです。だから、相談を受けたときも、なんか良いことを言ってあげたいわけです。ところが、人に「良いこと」を言ってもらっても、あまり役にたたないことが多い(笑)。

 アドバイスが役に立つ時というのは、アドバイスをあげた人より、むしろ、もらった人の力量のせいだといえます。だって、アドバイスを生かすちからを、その人が持っているわけだから。

「相談」というと、相手の話を聞いて、それに対して「良いこと」を言ってあげて、その「良いこと」を相手が実行して、自分が感謝される(笑)、そういうパターンを想像しがちですが、どうも、そんなときは、「相談を聞いてやってる自分」が主役ですね。親切をしてあげる自分が嬉しい、みたいな……。

 相談をされると、はじめは誰でもそうなりがちです。やっぱり人の役に立ちたいし、立つのは嬉しいし、ところが、そんなに簡単に人の役に立てるようなことはないと、わかってきます。

 たとえば登校拒否の子どもについて相談された場合、もし、どんなことがあっても学校に行かせるべきだ、ということに問題を限定すれば、方法は見つかるかもしれない

 しかし、その子が学校に行くことで、より不安になることだって、あるかもしれないですから、そこまで考えると非常に難しい。 

こころの天気図

 なお、この著書は、詩人の工藤直子さんが聞き手になってお話を聞く形式の本です。

 この本は、次のところから購入することができます。

こころの天気図が購入できるところに進む外部リンク

<人の話を聞くことのむずかしさ>

 河合隼雄さんが言うように、「相手の話を、ただただ一生懸命に聞く」ということはなかなかむずかしいことのようです。ついつい自分の考えを話してしまいたくなってしまいます。

 「相手の話を、ただただ一生懸命に聞く」ことができるか、ということはとてもむずかしいことですが、子どもや保護者の心の問題に寄り添うことが必要な私たち教員にはとても必要な能力なのかもしれません。

 この「相手の話を、ただただ一生懸命に聞く」という態度は、何かに対して迷っている子どももつ保護者にとっても必要な態度なのかもしれません。

⭐️ ⭐️

 河合隼雄さんや心理的なアプローチに関係する記事が、次のページにあります。

教育書紹介:子どもと悪に進む内部リンク

説教の効果はその長さと反比例するに進む内部リンク

ほめ方・しかり方 小学校初任者研修011に進む内部リンク

教師による教育相談に進む内部リンク

登校拒否は心の病気であるに進む内部リンク

母親ノート法(1)母子の会話パターンに進む内部リンク

母親ノート法(2)快・不快と評価基準に進む内部リンク

母親ノート法(3)議論しないことに進む内部リンク

母親ノート法(4)説教しないことに進む内部リンク

母親ノート法(5)否定的感情の処理に進む内部リンク

母親ノート法(6)代弁しないことに進む内部リンク

母親ノート法(7)要求をきくことに進む内部リンク

母親ノート法(8)親の心、子どもの心に進む内部リンク

母親ノート法(9)戸惑う親の心に進む内部リンク

母親ノート法(10)不登校の理由に進む内部リンク

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