音読指導(5)間を意識して読む

指導方法
つばさ
つばさ

音読では、間を意識することも大切なんですか?

 小学校の国語の時間には、音読をすることがあります。

 今回も、音読が上手になる方法について書きます。

 その指導法として、「音読指導:間を意識して読む」ことについて書きます。

音読指導:間を意識して読む

🟠間を意識して読む

<句読点と間>

 小学校の音読指導で、よく行われていることの1つに、句読点で間を開けるということがあります。

読点(、)の時は、1つ、句点(。)の時は、2つ、数を心の中で数えましょう。」という指導がされることがあります。しかし、句読点を意識しすぎることはよくありません。句読点は、書くときに、読み手が意味を理解しやすくするための印です。句点(。)は、文末につけますので、ほとんどの人が同じようにつけますが、読点(、)には、明確な基準がありません。書き手によって、読点(、)は思い思いに自由につけているのが実情です。

 例えば、次の文を読んでみてください。

公園から駅までを歩く間に3、4人の人に出会った。

 どうでしょうか。この読点(、)は、出会った人が「34人」ではなく、「3人か4人ぐらいの人」という意味を表すために使っています。

 この文を音読するときに、3と4の間に間をとって読むと、かえって不自然に聞こえるのではないでしょうか。

 この例からもわかるように、句読点と間は、必ずしも一致しないことがあります。

<3つの「間」を意識する>

 元NHKアナウンサーであり、その後、関西国際大学経営学部教授をされた高梨敬一郎さんは、「音読や朗読では、書かれている内容を聞き手に届けることが大切である」と主張されています。

 そして、そのためには、「『間』が伝わる決め手」であるとしています。

 高梨さんによると、「間」には、3つあるそうです。

1つめは、息継ぎのための「間」

2つめは、次の言葉を強調するための「間」

3つめは、意味のつながりをより確実に伝えるための「間」

 この3つの「間」について、高梨さんは、「これが本当の朗読だ」(大阪書籍・2005年刊)で次のように書かれています。

 私は朗読教室で「ミスター間」とあだ名されたことがあります。教室で、私の口から出る言葉で一番多いのが、「間」だと言うのです。たしかにそうかも知れません。読む上で私が最も重視しているのが「間」だからです。適正な「間」があるかないかが、伝わり方に大きく影響するからです。

 私たちは日常会話では、意昧のつながりが終わったところ、多くは「丸」のところで身体中の息を吐いてしまうのです。だから下がるのです。どんなに短いしゃべりでも同じことをしています。吐ききりますから、自然に息を吸います。息を吸っている間は、何も話すことができません。わずかですが沈黙の時間があります。これが「息継ぎのための『間』」です。

 この「間」は、読み手にとっては息を自然に吸っている時間ですが、実は聴き手にとっても大事な時間なのです。聴き手はこのわずかな時間のうちに読み手が前に言ったことを反芻して、しっかり理解しようとしている時間でもあるのです。ですから聴き手に伝わる上で非常に貴重な時間なのです。聴き手は字を見ていません。耳から入ってくる読み手の声だけが頼りです。「間」なしに読まれてしまうと、直近の文の内容が理解できないので読みについていけなくなってしまうのです。

 「間」にはもう二つの役割があります。一つは、「次の言葉を強調するための『間』」です。たとえば次の文を見てください。

 私がかねがね行きたいと思っている国は、フランスではなくドイツです。

 この場合、強調したいのは「ドイツ」です。多くの人が、ある言葉を強調したいときにする方法はその言葉を高く発音することです。そうすると、「ドイツ」だけが耳に残って、他の言葉とのつながりがあいまいになりがちです。そこで、「ドイツ」を特に高く発音するのではなく、「ドイツ」の前に短い「間」を置いてみてください。そうすると、「ドイツ」が文全体の中でしっかり理解できるのです。これが、「次の言葉を強調するための『間』」です。

 もうひとつの「間」は、「意味のつながりをより確実に伝えるための『間』」です。仮に二人の登場人物、吉田と坂井がいたとします。吉田は前から登場していて、職業は教師です。そこへ、学生である坂井が初めて登場した場面です。

 隣の部屋で話し合っていたのは、吉田と坂井という学生でした。

 この文の後半を「古田と坂井という学生でした」と「間」を置かずに表現すると、古田も坂井も学生ということになります。吉田は学生ではありませんから、「吉田と」の次に「間」を置かなければなりません。「吉田と、坂井という学生でした」とすれば、「学生」は坂井にしかかかりませんので、より分かりやすくなります。

 こうして、三つの「問」を駆使して読み進んでいけば、聴き手は混乱なく、順に理解しながら聴くことができるのです。

これが本当の朗読だ

 高梨さんの伝えるこの3つの「間」の考えは、よくわかる考えだと思います。

 間を上手に取ることで、聞き手は、書かれている内容をきちんと理解することができます。

<教師がモデルを示す>

 ただ、小学生の子どもが、すぐにこの3つの間を意識して音読することは、少しむずかしいかもしれません。

 そこで、効果的なのが、教師の範読(音読)です。

 教師が音読するときに、上手に間を意識して音読する見本を示してみせれば、子どもは自然とその間を真似て音読することができるようになります

 このブログでよく書くことですが、「学ぶ」の語源は「真似る」ことだとされています。

 子どもたちは、上手に教師の行いを真似ることで、いろいろなことを自然と学び、身につけることができます。

 そのために、私たち教師は、普段から子どもたちに真似されてもおかしくないような正しい言動をする必要があります。

 ある学校の国語科の研究授業を参観した時に、学級全員の子どもの音読がたいへん上手ことがありました。授業の後で、その学級の先生に音読を上手にする秘訣を聞いたことがあります。

 その先生は、「褒めながら、まずは、1人の子どもを育てることです。1人の子どもが驚くような上手な音読ができるようになると、自分もがんばろうと、みんな家でも練習してくるので、学級全体の音読が上手になります。」と話されていました。

まず、教師がモデルを示し、1人の子どもが育つ。その子をモデルにして、他の子どもたちも育つ。」ということなのだな、と思いました。そのお話をお聞きして、進んで学ぶ子どもを育てる学級経営の極意のようにも感じました。

 なお、音読の指導については、次のページもお読みください。

音読指導(6)早口言葉に進む内部リンク

音読指導(7)場所を変えての練習に進む内部リンク

音読指導(8)音読の録音に進む内部リンク

音読指導(1)話すように読むに戻る内部リンク

音読指導(2)真似して読むに戻る内部リンク

音読指導(3)文意と息を合わせるに戻る内部リンク

音読指導(4)読みやすくする工夫に戻る内部リンク

コメント

タイトルとURLをコピーしました