研究の具体例があれば知りたいです。
学校では、授業を行う以外に様々な仕事があります。
そのような仕事を校務分掌といい、教職員が分担をして行います。
ある程度教員を経験すると、研究主任という役割に任命されることがあります。
今回は、「研究主任の役割②:国語研究の具体例」について書きます。
研究主任の役割②:国語研究の具体例
🟠研究主任の役割②:国語研究の具体例
<研究主任の役割>
学校の中では、様々な仕事を校務分掌といい、いくつかのグループに分かれて仕事を行います。
そのようなグループの中に、授業の質を高めるための手立てを講じることなどを主な役割にする研究部があります。学校によっては、研修部という場合もあります。
そのような研究部(研修部)の中心的な仕事を行うのが研究主任です。
研究主任の大きな役割のひとつが、研究の方向性を示すことです。
今回は、そのような研究主任のために、国語科の研究の具体例を示したいと思います。
<研究の具体例を示すこと>
ここで示す国語研究の具体例は、私が小学校に勤務していた時に、同僚の教員向けに書いたものです。
今から10年ほど前(2012年5月)に書きました。これを書いた後で、2017年(平成29年)に新しい小学校学習指導要領が告示されていますので、少し内容が古くなったり、今は教科書に使われていない教材があったりします。
教員には、3日間にわたり、A4の紙に、1年生から6年生の授業の具体例を示してみたものです。研究の方向性や叩き台としてこのような資料を提示するのも、研究主任や管理職などの役割としてあるのだな、というように軽くとらえていただくとうれしいです。
以下、具体的な名前などを削除した上で、できるだけそのまま載せることにします。
<国語の研究の具体例>
今回は、みなさんの希望される単元を元に、「読解表現力を育てる授業の具体例について」私の案を述べたいと思います。これらは、あくまで、私の考えですので、参考資料として考えていただくと助かります。
案を考えるために、考慮したことは、次の4つです。
① 読む活動があること。できれば、教科書の教材だけでなく、他の教材も読むことができる場を考えた。
② 書く活動があること。量や内容についても、学年の実態を考慮することにした。
③ 単元の初めに、全体を通してどのような学習活動をするのか、明確にすること。
④ 3次構成で考えること。その際、以前紹介した「並行読書」(3次になって関連図書を読むのではなく、2次の段階から関連する本を読み始めること)の考えを取り入れるようにした。
<1年 教材「いろいろなふね」>
○ 単元の目標:「いろいろなふね」について読みとり、自分の好きな乗り物について調べて書くことができるようにする。
「1次」
・いろいろな乗り物について簡単な文章を書くことを知る。
・「いろいろなふね」に出てくる船を知る。
「2次」
・説明文の構成(はじめ・なか・おわり)について知る。
・4つの船「きゃくせん」「フェリーボート」「ぎょせん」「しょうぼうてい」について読みとる。
・写真や本文を読んでわかったことを交流する。
・書き方の工夫について知る。
・いろいろな乗り物について書かれた図鑑や本を読む。(並行読書)
「3次」
・乗り物(自動車・飛行機など)について調べる。
・「いろいろなふね」の構成をまねて、自分の調べた乗り物について書く。
<2年 教材「お手紙」>
○ 単元の目標:アーノルド・ローベルの作品には、「がまくん」と「かえるくん」の出てくる話がたくさんあることを知り、それらのお話を1つ選んで本の帯を作る。
「1次」
・本の帯について知り、自分たちも本の帯を作ることを知る。
・「お手紙」の場面設定(いつ、どこ、だれ)の確認をする。
「2次」
・「お手紙」を読み、本の帯を作っていくことで、本の帯を作るためには何を書く必要があるか知る。
・「がまくん」と「かえるくん」の行動を中心に読みとる。
・「がまくんとかえるくん」シリーズの本を読む。(並行読書)
「3次」
・自分の選んだ本の帯をつくる。
・自分の気に入った本の帯の元の本を読む。
<3年 教材「サーカスのライオン」>
○ 単元の目標:「サーカスのライオン」に出てくる人物の誰かになって、日記を書くことで、自分なりに内容を深く理解できるようにする。
「1次」
・場面設定(いつ、どこ、だれ)の確認をする。
・あらすじの把握をする。
・出てくる登場人物の誰か(ライオンのじんざか、ライオンつかいのおじさんか、男の子)になって日記を書くことを知る。
「2次」
・じんざの行動や考えについて考える。
・クライマックスはどこか考え、クライマックスについて話し合う。
・自分なりの方法[時系列の組みかえ(過去を思い出すなど)、視点などの工夫(教材は3人称で書かれているものを1人称に書き換えるなど)、書いてないことの書き足し(自分の考えのつけ足し)]を工夫して物語を1人称の日記に書きかえる。
「3次」
・同じ作者のお話やサーカスの出てくるお話や勇敢な動物のお話を読む。
<4年 教材「世界一美しいぼくの村」>
○ 単元の目標:戦争に関係する本を紹介することができるようにする。
「1次」
・戦争について知っていることなど、意見交流をする。
・「世界一美しいぼくの村」の場面設定(いつ、どこ、だれ)の確認をする。
・戦争に関係する本の紹介をすることを知る。
「2次」
・「世界一美しいぼくの村」を読み、なぜ、ぼくの村は、世界一美しいといえるのか考える。
・登場人物の行動や気持ちを読み取る。
・この物語なら、どのような紹介をするか考える。
この物語の特徴:最後、急にお話が終わる。→本の紹介文を書くとしたら、どのように書くか、話し合う。
・「戦争」に関連する本を読む。(並行読書)
(「ちいちゃんのかげおくり」、「一つの花」、「ぼくの村にサーカスがきた」「せかいいちうつくしい村へかえる」など)
「3次」
・戦争に関する本の紹介文を書く。
・紹介された本を読む。
世界一美しいぼくの村 教材分析002に進む(内部リンク)
<5年 教材「注文の多い料理店+ふしぎな世界へでかけましょう」>
○ 単元の目標:ふしぎなお話を書くことができるようにする。
「1次」
・ふしぎなお話を書くことを知り、自分なら、どんなふしぎな世界を書きたいか考える。
・ふしぎな物語には、どのような構成があるか考える。
・ふしぎな世界へ行く「きっかけ」(音、風、雷、におい、洞窟など)について考える。
・「注文の多い料理店」の場面設定を考える。
「2次」
・「注文の多い料理店」を読み、面白さを読み取る。
・滑稽な二人の若者を通して、宮沢賢治が伝えたかったことを話し合う。
・「注文の多い料理店」の工夫について読み取る。
しかけの工夫……扉に書かれた文、「風がどうとふいて…」
・様々な「ふしぎな物語」を読む。(並行読書)
・「つりばしわたれ」「ハリーポッター」シリーズなど
「3次」
・自分の考えた「ふしぎなお話」を書く
・友だちの考えた「ふしぎなお話」を読む。
<6年 教材「未来へ生かす自然のエネルギー」>(※今は教科書に掲載されていない教材です)
○ 単元の目標:未来への提言をまとめてパンフレットを作ることができるようにする。
「1次」
・今、世界が困っていることについて意見を交換する。
・自分なりに調べて、提言をまとめたパンフレットを作ることを知る。
・「未来へ生かす自然のエネルギー」の主張を考えることを通して、自分はならは、どんな主張をしたいか考えることを知る。
「2次」
・「未来へ生かす自然のエネルギー」の内容を取り取る。
・筆者の主張を読み取る。
・主張を効果的に伝えるための工夫(円グラフ、折れ線グラフ、写真、地図、引用など)の仕方を知り、どのような効果があるのか考える。
・自分の主張に関連した図書やホームページなどを読む。(並行読書)
「3次」
・自分の主張を書く。それを裏付ける資料を探す。
・未来への提言をまとめて、パンフレットをつくる。
・互いが作ったパンフレットを読み合う。
<まとめにかえて>
今読み返してみても、それほど大きな変更をすることなく、学校の研究テーマや研究授業の資料として使えるのではないかなと思います。
学校で研究テーマを決めて研究したり、研究授業をしたりすることは、教員自身の指導力を高めるとともに、子どもの力を伸ばしたりするために大切なことだと思います。
研究授業は確かにたいへんですし、研究主任の役割もたいへんでしょうが、個人的には楽しんで取り組んでいただけたらと思います。
⭐️ ⭐️
関係する事柄についてもお読みください。
研究主任の役割①:大まかな仕事に進む(内部リンク)
研究主任の役割③: 指導案の原案作りに進む(内部リンク)
授業研究:教育用語⑥に進む(内部リンク)
研究授業 小学校初任者研修019に進む(内部リンク)
校内研修会への参加 小学校初任者研修038に進む(内部リンク)
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