「くじらぐも」という文章の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、1年生の教科書に載っている「くじらぐも」の教材分析をします。
くじらぐも:教材分析
🟠くじらぐも:教材分析
この作品は、光村図書の1年生の教科書に載っています。
<作者>
中川李枝子(なかがわ・りえこ)さん作
柿本幸造(かきもと・こうぞう)さん絵
出典:この教科書のために書き下ろしされた文章です。
中川李枝子さんについて
1935年(昭和10年)生まれです。日本の児童文学作家、作詞家です。
北海道札幌市生まれです。旧姓は、大村さんです。
4歳のときに、東京の祖父の家に移り、小学校3年生までそこで過ごしました。
戦争が激しくなったので、札幌に疎開しました。
終戦後、父親と一緒に福島市に移り、高校2年生のときに、再び東京に戻りました。
実践女子学園高等学区を経て、東京都立高等保母学院(現・都立高等保育学院)を卒業しました。
卒業後、保母として働きながら、執筆活動を行い、1962年に「いやいやえん」(福音館書店・1962年)で、厚生大臣賞、サンケイ児童出版文化賞、野間児童文芸奨励作品賞、NHK児童文学奨励賞を受賞しました。
代表作には、「ぐりとぐら」(福音館書店・1967年)、「そらいろのたね」(福音館書店・1964年)などがあります。
また、作詞家としては、1988年公開のアニメ映画「となりのトトロ」のオープニングテーマ「さんぽ」や「まいご」の作詞をおこなっています。
<題名>
題名は「くじらぐも」です。
この題名から、くじらぐもが出てくることが予想されます。
<設定>
いつ(時):四じかんめ
どこ(場所):うんどうじょう
だれ(登場人物):一ねんニくみの子どもたちとせんせいとくじらのくも
<人物>
こどもたち……うんどうじょうでたいそうをしている。
せんせい……子どもたちをおしえている。
くじら……そらにうかぶ、くものくじら。
<あらすじ>
・四じかんめ、一ねん二くみの子どもたちが体操していると、大きなくじらがあらわれた。
・まっしろいくものくじらで、くじらぐももたいそうをはじめた。
・のびたりちぢんだり、しんこきゅうもした。
・みんながかけあしでうんどうじょうをまわると、くものくじらも空をまわった。
・せんせいがふえでとまれのあいずをすると、くじらもとまった。
・せんせいが「まわれ、みぎ。」のごうれいをかけると、くじらもまわれみぎをした。
・みんなは大きなこえで、「おうい。」とよぶと、「おうい。」とこたえた。
・「ここへおいでよ。」とさそうと、くじらも「ここへおいでよ。」とさそった。
・「くものくじらにとびのろう。」男の子も、女の子もはりきった。
・みんなは手をつなぎ、わになると、ジャンプした。でも、とんだのは、三十センチぐらい。
・「もっと、たかく。」とくじらがおうえんした。
・こんどは、五十センチぐらいとべた。
・「天までとどけ、一、二、三。」そのとき、かぜがみんなを空にふきとばした。
・あっというまに、せんせいと子どもたちは、くものくじらにのっていた。
・「さあ、およぐぞ。」くじらは、青い空をげんきいっぱいすすんだ。
・うみのほうへ、むらのほうへ、まちのほうへすすむ。みんなはうたをうたう。
・「おや、もうおひるだ。」せんせいがうでどけいをみて、おどろいた。
・「では、かえろう。」くじらぐもはまわれみぎをした。
・しばらくいくと、がっこうがみえてくる。
・くじらぐもは、ジャングルジムのうえに、みんなをおろした。
・「さようなら。」みんなが手をふったとき、おわりのチャイムがなりだした。
・「さようなら。」くものくじらは、青い空のなかへかえっていった。
<場面>
物語を、このブログで紹介している方法で、場面を5つに分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。
① 子どもたちがたいそうをしていると、くものくじらがあらわれ、まねをはじめた。
② 子どもたちが「ここへおいでよう」とよびかけると、くじらも「おいでよ」とさそった。
③ みんなはジャンプするがなかなかとどかない。でも、かぜがみんなを空へふきとばした。
④ 「およぐぞ。」みんなをのせると、くじらは、空をすすみ、うみやむらやまちをすすんだ。
⑤ おひるになり、くじらは、みんなをがっこうにもどし、くじらとみんなはさよならした。
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<人物の会話>
この物語で、会話をするのは、せんせいと子どもたちとくじらのくもです。
たいそうの時間なので、せんせいは、子どもたちにいろいろ号令をかけます。
・「一、ニ、三、四。」
・「まわれ、みぎ。」
そして、最後の方になり、四じかんめが終わりそうになったことに気づき、こう言います。
・「おや、もうおひるだ。」
子どもたちとくじらのくもは、お互いによく似たことを相手に話しかけます。
・「ここへおいでよう。」
くじらぐもの返事に、子どもたちは喜び、こう言います。
・「よしきた。くものくじらにとびのろう。」
・「天まで届け、一、ニ、三。」
でも、うまく空までとべません。
すると、くじらはおうえんします。
・「もっとたかく。もっとたかく。」
風がふき、みんなを空へふきとばし、みんながくじらにのると、こう言います。
・「さあ、およぐぞ。」
時間が来たことを知ると、こう言います。
・「では、かえろう。」
みんなを学校にとどけると、くじらとみんなはあいさつをします。
・「さようなら。」
<人物の行動>
くじらぐもが、人が好きなんだろうな、と思えるのは、次のような真似をする行動です。
・くじらも、たいそうをはじめました。のびたり、ちぢんだりして、しんこきゅうもしました。
・くものくじらも、空をまわりました。
・くじらも止まりました。
・くじらも、空でまわれみぎをしました。
そのほか、みんなをおうえんしたり、みんなをのせると、空をげんきいっぱいにすすんだりする行動からも、子どもたちのことが好きなんだろうな、と思わせる行動をします。
<主題>
この物語の主題は、何でしょうか?
「くじらのくもとなかよくあそんだこと」ということかもしれません。
空の雲はとてもふしぎなものです。いろいろなものに見えてきます。この物語では、くもはくじらになりました。
ちがったものに見えたくもは、ちがった物語をあなたとはじめるかもしれません。
あなたの近くにあるくもは何に見えますか。
<表現の工夫>
1年生の子どもに身につけてほしいことの一つに、会話を楽しむということがあります。
うまく話せない子どもでもできる会話のテクニックの一つに、相手の話したことを繰り返すという方法があります。
この文章の中でも、相手の会話を真似るという表現はたくさん出てきます。
・「おうい。」
・「ここへおいでよう。」
・「さようなら。」
この文章の中には、この繰り返すという会話方法以外に、相手を喜ばせる会話や行動がたくさんあります。それを見つけるというのもいいかもしれません。例えば、次の会話や行動です。
・「もっとたかく。もっとたかく。」と、くじらはおうえんしました。
・くじらぐもは、ジャングルジムのうえに、みんなをおろしました。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
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