「ニャーゴ」という文章の教材分析について知りたいです。
よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。
しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。
そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。
今回は、「ニャーゴ」です。
ニャーゴ:教材分析
🟠ニャーゴ:教材分析
今回は、東京書籍の教科書に掲載されています。
<作者>
宮西達也(みやにし・たつや)文・絵
出典:「にゃーご」(鈴木出版・1997年)
宮西達也さんについて
1956年(昭和31年)静岡県で生まれます。日本の児童絵本作家、グラフィックデザイナーです。
日本大学芸術学部美術学科を卒業しました。
人形美術、グラフックデザイナーを経て、絵本をかき始めました。
「きょうはなんてうんがいいんだろう」(鈴木出版・1998年)で講談社出版文化賞絵本賞を受賞しました。「パパはウルトラセブン」(学研・1999年)などでけんぶち絵本の里大賞を受賞しました。「おとうさんはウルトラマン」(学研・1997年)などの作品がある。
<題名>
題名は「ニャーゴ」です。
この題名から、猫の鳴き声だとはわかります。どのような話かはわからない題名です。
<設定>
いつ(時):じゅぎょうちゅう
どこ(場所):ねずみの学校の教室
だれ(登場人物):ねずみの先生、子ねずみたち
<人物>
ねずみの先生……子ねずみに教えている先生。
子ねずみたち……先生お話を聞く子どもたち。
子ねずみ三びき……この物語の主人公。先生の話をしない子ねずみ。
ねこ……たまという名前。子ねずみに出会う。
<あらすじ>
・「いいですか、これがねこです。この顔を見たら、すぐに逃げなさい。つかまったら、食べられてしまいます。」
・子ねずみたちは、先生の話を聞いている。
・でも、話を聞かずに、おしゃべりしている子ねずみが三びきいる。
・しばらくして、三びきが気づくと、みんないなくなっていた。
・「あれれ、だれもいないよ。」
・「ぼくたちも、ももをとりにいこうか。」
・子ねずみたちが歩きだしたそのとき。
・ニャーゴ
・三びきの前に、ひげをピンとさせたねこが、手をふり上げて立っていた。
・三びきは、かたまってひそひそ声で話しかけた。
・「びっくりしたね。」
・「このおじさんだれだあ。」
・「きゅうに出てきて、ニャーゴだって。」
・「おじさん、だあれ。」
・ねこはどきっとした。そこで、子ねずみは、もう一度聞いた。
・「おじさん、だあれ。」
・「だれだって、だれって、たまだ。」
・「たまおじさん、ここで何してるの。」
・「何って、べつに。」
・ねこは、口をとがらせて答えた。
・「じゃあ、ぼくたちとおいしいももをとりに行かない。」
・それを聞いて、ねこは思った。
・(おいしいももか。その後でこの三びきを。ひひひひ。今日はなんてついているんだ。)
・ねこは、子ねずみたちをせなかにのせると、ももの木の方へ走っていった。
・三びきの子ねずみとねこは、ももを食べはじめた。
・(うまい。でも、たくさん食べたらいけないぞ。おなかいっぱいになったら、こいつら食べられなくなる。)
・ねこは、ももを食べながら思った。
・ももを食べおわると、三びきの子ねずみとねこは、のこったももをもって帰った。
・そして、あと少しのところまで来たとき、ねこはぴたっと止まって、
ニャーゴ
できるだけ、こわい顔でさけんだ。
・そして、「おまえたちを食ってやる。」といおうとしたとき、
・ニャーゴ、ニャーゴ、ニャーゴ、三びきが叫んだ。
・「へへへ、はじめで会ったとき、おじさん、ニャーゴって言ったよね。そのとき、おじさん、こんにちはって、言ったんでしょう。そして、今のニャーゴが、さよならなんでしょ。」
・「おじさん、これ、おみやげ。」
・「みんな一つずつだよ。ぼくは、弟におみやげ。」
・「ぼくは、妹に。」
・「たまおじさんは、弟か妹いる。」
・ねこは、小さい声で答えた。
・おれのうちには、子どもがいる。」
・「へえ、何びき。」
・「四匹だ。」
・ねこがそう言うと、
・「四ひきもいるなら一つじゃ足りないよね。ぼくのあげる。」
・「ぼくのもあげるよ。」
・「ぼくのももも。」
・「ううん。」
・ねこは、大きなためいきを一つついた。ねこは、ももをかかえて歩きだした。
・子ねずみたちが、手をふりながら、さけんでいる。
・「おじさあん、また行こうね。」
・「やくそくだよ。」
・「きっとだよう。」
・ねこは、ももをだいじそうにかかえたまま、ニャーゴ、小さな声で答えた。
<場面>
ここでは、このブログで紹介している5場面に分け、1場面を30字程度にまとめてみます。
① ねずみの学校で、三びきのねずみは、ねこがきけんな話を聞いていなかった。
② 三びきのねずみが、ももをとりにいこうとしたとき、ねこがニャーゴと言ってあらわれた。
③ ねずみとねこは、ももをとりに行くことになり、ももを食べて帰ってきた。
④ ねこがねずみを食べようとしたとき、ねずみがニャーゴはあいさつだと思っていたと知る。
⑤ 自分のももまで、子どもへのおみやげにくれた子ねずみをねこは食べることができなかった。
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この物語は、ニャーゴというねこの言葉をあいさつだと、勘違いする子ねずみとねことのすれ違いを面白く描いたお話です。
<人物の会話>
この物語では、重要な会話がいくつか出てきます。
重要な会話は、題名でもあるねこの「ニャーゴ」です。
お話の途中で、「ニャーゴ」の意味を子ねずみたちが、次のように言っています。
・「へへへ、たまおじさんとはじめて会ったとき、おじさん、ニャーゴって言ったよね。あのとき、おじさんこんにちはって言ったんでしょう。そして、今のニャーゴがさよならなんでしょ。」
こう言われた、ねこは驚きます。その上、子どもが四びきいる話をすると、
・「四ひきもいるなら一つじゃ足りないよね。ぼくのあげる。」
・「ぼくのもあげるよ。」
・「ぼくのももも。」
こう言われて、ねこは、ねずみを食べることができなくなります。
そして、
・「おじさあん、また行こうね。」
・「やくそくだよ。」
・「きっとだよう。」
という子ねずみたちに、ねこは、ニャーゴと小さな声で答えました。
<人物の行動>
この物語では、子ねずみの最初の行動がとても面白いです。
なんと、先生は、とても大切な話である「ねこが危険であること」を話していますが、
・でも、あれえ。先生の話をちっとも聞かずに、おしゃべりしている子ねずみが三びきいますよ。
あまりほめられた話ではないのですが、このことがあるのでお話は続きます。
ねこがねずみを食べることをあきらめた原因は、子ねずみたちの自分の弟や妹へのおみやげをねこにくれる子ねずみたちのやさしさです。
<主題>
この物語の主題は、何でしょうか?
「ニャーゴの意味を間違えることの面白さ」ということかもしれません。
ねこはねずみを食べようと思っていますが、心優しいねずみの行動に、食べることを諦めることしかできませんでした。
<表現の工夫>
この物語文には、表現の工夫があります。
◯ 様子を表す言葉
ねこが、子ねずみの純粋さと優しさを感じていることは、次の表現によく現れています。
・ねこは、ももをだいじそうにかかえたまま
ニャーゴ
小さな声で答えました。
<まとめにかえて>
この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。
教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。
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