言葉と事実 教材分析123

教材分析
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つばさ
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言葉と事実」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることが大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、「言葉と事実」です。

言葉と事実:教材分析

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🟠言葉と事実:教材分析

 この教材は、教育出版の5年生の教科書に掲載されている説明文です。

<作者>

 福沢周亮(ふくざわ・しゅうすけ)さん・文

 須山奈津希(すやま・なつき)さん・絵

 出典:この教科書のために書き下ろしされたものです。

 福沢周亮さんについて

 日本の教育心理学者です。

 1933(昭和8)年に長野県で生まれました。

 東京教育大学心理学科を卒業後、東京教育大学大学院教育学研究科博士課程を満期退学されました。1973年に「漢字の識字教育に関する教育心理学的研究」で教育学博士号を取得されました。

 埼玉大学教育学部助教授や東京教育大学教育学部講師、助教授などを経て、筑波大学心理学系教授になられます。

 子どもを対象にした教育学、心理学の中でも、主に、子どもの発達や、言葉と心の関係について研究をし、たくさんの著書を書かれました。

 2018(平成30)年に、敗血症で亡くなられました。

<題名>

 題名は「言葉と事実」です。

 題名から、言葉と事実との関係について書かれていることはわかりますが、具体的にどのような事柄が書かれているのかは、子どもにとっては予想しにくいかもしれません。

<はじめとおわり>

はじめ

 最初に次のような文から始まっています。

みなさんは、イソップ童話の中に出てくる「うそつき少年」の話は知っていますか。羊の番をしている少年が、おおかみがいないのに、「大変だ、おおかみが来た。」と言って、村の人たちをたびたびだましました。そのため、本当のおおかみが出た時、少年が「おおかみが来た。」と言って助けを求めても、村の人たちは、少年の言うことをうそだと思って、助けに行かなかったと言う話です。

おわり

 最後の段落では、次のように書いています。

このように考えると、わたしたちが話したり書いたりするときには、ある一つの事実を表すにも、それをどのようにとらえ、どのように表すかと言うことに気を配る必要があります。一方、話を聞いたり、本を読んだりするときには、話し手や書き手が事実をどのような言葉で表しているか、その言葉によって、その人がどのようなものの見方をし、どのような目的で、何を伝えようとしているか、というところまで考えてみる必要があるのです。

<形式段落>

 形式段落は、全部で、13段落です。

 形式段落毎の簡単な内容は、次の通りです。

① みなさんはイソップ童話の何回もうそをついたために本当のおおかみが出た時に助けてもらえなかった「うそつき少年」の話を知っているか。

    ②   おおかみが来たというさけびは、実際におおかみが場合にだけ事実と結びつく。言葉は、事実と結びついて使うことが大切だ。

    ③   では、言葉は、事実と結びついていれば、どんな言葉でも同じように受け取られるのか。そうではなさそうで、それは、使う言葉がちがうから。

    ④   リレーのたいこう戦を例に考えてみよう。一組と二組がリレーをし、とちゅうまで二組が勝っていたが、最終ランナーで一組が勝った。

    ⑤   このリレーのことを一組の夏目さんは「大勝利」と、春村さんは「快勝」と学級新聞の見出しにつけた。

    ⑥   二組の秋田さんは「おしくも敗れる」と学級新聞の見出しにつけた。

    ⑦   このように、事実は同じでも、表現する人の立場や感じ方により言葉はちがってくる。

    ⑧   言葉が違うと、受け取る側の印象もちがう。どちらの組の新聞を読んだかで、言葉から想像する「事実」もちがってくる。

    ⑨   言葉のあたえる印象のちがいに注意を向けた話がある。アメリカのデパートで同じハンカチにちがう札をつけると値段の高い方がよく売れた。

    ⑩   ①のハンカチは二十六人が手に取り見て十一人が買い、②のハンカチは、六人が手に取り見て、二人が買った。

    ⑪   どうしてこのようなことが起きたのか。考えられることは、札に書かれた言葉の印象の違いだ。事実が同じでも、言葉だけを信用し、事実を見ないで行動することがある。

    ⑫   これらの例のように日常生活でも、事実と言葉が結びついていても、人がちがえばことなった言葉で表され、ことなった印象をあたえることがある。

    ⑬   こう考えると、わたしたちは、ある事実をどのようにとらえ、どう表すか気を配る必要があるし、話し手や書き手が事実をどのような言葉で表しているか考えてみる必要がある。

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    <意味段落>

     ここでは、4つの意味段落に分かれていると考えてみることにします。

    ①~③段落:序論(はじめ)&本論1「なか1」:うそつき少年

     イソップ童話「うそつき少年」の話を出しながら、言葉は事実と結びつけて使うことが大切だと伝えています。「はじめ(序論)」でありながら、具体例を示すことで、「なか(本論)」の要素もあり、問題提起をしている意味段落でもあります。

    ④~⑧段落:本論2(なか2):リレーのたいこう戦

     リレーのたいこう戦を具体例にしています。逆転があったリレーの様子の見出しは、学級新聞を書いて人の立場や感じ方により、言葉がちがってきます。言葉が違うと、受け取る側の印象も変わってくることを述べています。

    ⑨~⑫段落:本論3(なか3):アメリカのハンカチの売れ方

     アメリカのデパートでのハンカチの売れ方を具体例にしています。同じハンカチに二種類の札、一つには感じのよい内容で高めの価格、もう一つには「手ふき」と書き低めの価格をつけ、売り出すと、高めの方がたくさん売れました。これは、前者の札が、よいハンカチを特に安く売ると感じられるのに対して、後者の札は、人目を引かない言葉だったからです。

    ⑬段落:結論(おわり

     わたしたちが話したり書いたりするときは、ある事実を表すにも、どのようにとらえ、どのように表すかに気を配る必要があります。一方、話を聞いたり、本を読んだりするときは、話し手や書き手がどのような言葉で表しているか、その言葉によって、その人のものの見方や目的、何を伝えようとしているか、というところまで考えてみる必要があります。

    <大事な言葉>

     事実、イソップ童話、実際、大勝利、強敵、快勝、印象、売れゆき、信用

    <表現の工夫>

    問いかけ

     この説明文では、次のような問いかけ文が使われています。

    みなさんはイソップ童話の中に出てくる「うそつき少年」の話を知っていますか。

    では、言葉は、事実と結びついていれば、どんな言葉を使っても同じように受け取られるのでしょうか。

    どうしてこんなことが起こったのでしょうか。

     このような問いかける言い方(説疑法)によって、読み手にいろいろなことを考えさせることができますし、さらに、読み手の知的好奇心が高まる効果があります。

    数量化

     この説明文では、具体的な数量を上げて説明しています。

     ① 織りのやわらない、まじりけのないアイルランドのあさのハンカチーフ 特価 三枚五十セント

     ② 手ふき 三枚二十五セント

     八時間の間に、①では、二十六人が手に取って見て、十一人が買っていったのに対し、②では、六人が手に取って見て、二人が買っていきました。同じ商品のハンカチですが、売れゆきにちがいがあったのです。

     このような数量化されたデータを根拠にすることによって、述べようとすることの確かさが強まります。

    イラスト

     この説明文には、二枚のイラストがあります。

     言葉で説明することに加えて、イラストがあることで、説明している具体例のちがいが視覚的にもよりわかりやすくなっています。

    <要旨>

     この説明文では、「言葉と事実の関係について、①言葉は、事実と結びつけて使うことが大切なこと、②事実は同じでも、表現する人の立場や感じ方によって言葉がちがい、言葉がちがうと、受け取る側の印象もちがってくること、③事実と言葉が結びついていても、人がちがえばことなった言葉で表され、ことなった印象をあたえること」が具体的な例を元にして説明されています。

     この要旨は、私なりの要旨ですので、自分なりの要旨を考えてみてください。

    <まとめにかえて>

     この教材分析は、このブログに載せている「説明文の教材研究」で取りあげたいくつかの視点に基づいて行ったものです。

     教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

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