今回も、「魔女の宅急便」について書きます。
「魔女の宅急便」というお話は、日本で最もよく知られているファンタジー作品のひとつです。
今回は、「魔女の宅急便②:通過儀礼」について書きます。
魔女の宅急便②:通過儀礼
イラスト:ぺるこさん
🟠魔女の宅急便②:通過儀礼
<子どもから大人になる通過儀礼として魔女の宅急便>
魔女の宅急便は、女の子が、子どもから大人の女性へと成長していく姿を描いた作品といえます。
人生においては、ある段階から、次の段階に進むために、社会で決められた儀式を行うことがあります。
このような儀式や慣例のことを「通過儀礼」ということがあります。
「通過儀礼」という言葉は、フランスの文化人類学者で、民俗学者のアルノルト・ファン・ヘネップさんが考えたものです。
通過儀礼とは、人間が生まれてから、成人し、結婚などを経て、死に至るまでの成長段階において、次の段階について新しい意味を付け加える儀礼や通過的な行為などのことです。
日本や世界の国々で、アトラクションや肝試しとして有名なバンジージャンプは、元々は、成人になるための通過儀礼でした。
この通過儀礼の起源は、オーストラリアの北にある南太平洋のバヌアツ共和国のペンテコスト島という島で行われている通過儀礼です。木で組み上げた数十メートルの高さのやぐらから、足に命綱としてつたをくくりつけて、飛び降ります。
日本社会では、子どもが成長したことを祝い「お宮参り」や「七五三」という儀式を行うことがあります。これも通過儀礼の一つでしょう。
昔は、今よりも医療設備が整っていなかったので、病気になると、そのまま死んでしまうことも珍しくありませんでした。子どもが、普通に成長して、大きくなることはなかなか困難なことでした。そこで、子どもが大きくなることを願ったり、大きくなったことを祝ったりして「お宮参り」や「七五三」という儀式を行いました。
また、幼児から学習できる年齢に到着したことを祝う「入学式」という行事もあります。「入学式」や「卒業式」も、「通過儀礼」のひとつといえるかもしれません。
人が成長するためには、さまざまな困難に出合うことがあります。その困難を自分で努力することで克服できることもあれば、さまざまな人の助けを借りたりしながら克服できることもあります。時には、なかなかうまくいかないで長い間停滞することもあります。
この作品は、子どもから大人に一歩ずつ成長する女性するにとって、自分らしさを発揮しつつ、自分の願いや夢をどう実現していくかということを、主人公のキキの姿を通して追体験する作品といえるかもしれません。
キキの住む魔女の住む世界では、希望して魔女になる場合、次のような試練があります。
もし魔女になると決心がつけば、ただちにおかあさんから魔法をおしえてもらって、十三歳の満月の夜をえらんで、ひとり立ちをすることになります。この魔女のひとり立というのは、自分の家をはなれ、魔女のいない町や村をさがして、たったひとりで暮らしはじめることです。
魔女の宅急便
今の日本社会では、年齢が13歳になったり、中学生になったりしたからといって、親元を離れてひとりで暮らすということは、少ないかもしれませんが、13歳は、ある程度自分で生きていくことのできる年齢ということがいえます。
2024(令和6)年1月1日に石川県の能登地方を襲った地震の後で、学校が再開できない事態を受けて、希望する中学生は、親元を離れて集団避難することになりました。新聞記事などによると、次のような記載があります。
能登半島地震で被災した輪島市の中学生およそ260人は、120キロほど離れた石川県白山市に集団避難しています。
NHKニュースサイト 2024年1月30日
このように、一般的に、中学生になると、ある程度、親元を離れて生活できる年齢であると考えられています。
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