漢字の指導について知りたいです。
ここでは、次のことについて書きます。
漢字について思うこと
漢字指導の方法:読みと書きを分ける
漢字について思うこと
最初にクイズです。次の漢字は何と読むでしょう。
「向日葵・紫陽花・玉蜀黍・海豚・河馬・土竜」
全て読める人はかなりの漢字の使い手です。
日本人、あるいは、日本で生活する人にとって、漢字を覚えることは、たいへん困難なことの1つです。
中国でも、韓国でも、漢字を使っているわけですが、その使い方や指導の仕方には、少し違いがあります。
🟠中国の漢字学習
まず、中国です。素晴らしい漢字文化は中国からやってきました。
しかし、同じ漢字文化圏でも、日本人の行う漢字の習得の仕方と中国人の行う漢字の習得の仕方は大いに違いがあるそうです。
日本語には、平仮名と片仮名があります。そこで、日本では、入学した1年生は、「平仮名の読み書き」を教えてもらいます。
しかし、中国には、漢字しかありません。中国の1年生はどうするのでしょうか。(聞いたか読んだかした話なので、間違っているかもしれませんが、)
膨大な数の漢字を読めるように学習します。
中国語には、日本語の「平仮名」はありませんから、ともかく読めるようにならないと、国語の学習は成立しないのです。
日本では、平仮名と片仮名と80文字の漢字だけで、1年生の教科書を読むことができますが、中国では、このぐらいの数ではできません。
1年間で1000字程度の漢字(の読み方)を覚えると聞いたことがあります。
(ただ、赤ちゃんの頃から、耳で中国語は聞いて知っているので、自分の知っている言葉と同じ漢字を結びつけて覚えるので、日本人が考える程たいへんなわけではないみたいです。)
🟠韓国の漢字学習
次に、韓国です。韓国では、平仮名のような「ハングル」という文字があります。
ハングルは、「偉大な文字」と言う意味で、15世紀に李氏朝鮮の第4代国王の世宗(セジョン)大王が庶民に文字を覚えさせるために、学者を集めて作ったそうです。
一時期漢字を使うことや学校で学ぶことが全くなくなり、全ての文字がハングルだけになりましたが、最近は、漢字のよさも理解され、小学校の学習でも漢字を覚えるようになってきています。
ただ、日常生活では、漢字を使うことはありません。
表記は全てハングルといってもよいでしょう。
以前習っていた韓国語の先生から聞いたのですが、韓国語の言葉の中には、日本の漢字語を韓国が取り入れたものも結構多いそうです。
ただ、日本語の漢字と韓国語の漢字の読み方には、随分違いがあります。
それは、韓国では、漢字の読み方は、基本的に一つだということです。
日本語のように「重」を「おも(い)、かさ(なる)、え、ジュウ、チョウ」と使い方によって、読み分けることはないそうです。
韓国語では、「重」を表すハングルは、「チュン」だけです。
🟠若い教員の漢字の指導
教員をしていた時に、若い教員の授業を参観することがありました。
研究授業などではなく、いつも行っているような日常的な授業です。
小学校の1時間の授業時間は、45分間です。
その時は、国語の授業をしていました。
その先生は、最初に漢字の学習から授業を始めました。
新出漢字といって、新しい教材に出てくる漢字を5文字ほど教えていました。
読み方、筆順、画数、部首などを黒板を使って教えます。
次に、「空書き」といって、先生が左手を出し、「1、2、3・・・」と画数を数えながら、対面している子どもたちに向けて、「鏡文字」になるように漢字を体の前で書きます。
子どもたちも、指を体の前に出して、先生に合わせて、動かし、書き順を覚えます。
その後、漢字ドリルに実際に書きます。薄く書かれた文字をなぞり、次に、空欄に文字を書きます。
とてもていねいな指導です。この先生のように漢字の指導をていねいにする教員は多いです。
しかし、時計を見ると、45分の授業時間の半分ぐらいが漢字学習に費やされています。
残りの時間で、教材の読み取りの学習をしていました。
このような国語の学習を続けていれば、漢字の力はついたとしても、なかなか国語の読みの力はつかないかもしれないな、と思いました。
たまたまかも知れませんが、なぜか、国語の時間の大半を、漢字学習にあてる若手教員をよく見かけました。
漢字指導の方法:読みと書きを分ける
🟠漢字指導に関する1つの提案
これらのことを踏まえて、提案です。
漢字の読みと書きを分けて指導しては、いかがでしょうか。
先程の若手教員の指導のように、漢字を教える時に、漢字の読み方と書き方を一緒に指導することが多いように思います。
小学校学習指導要領では、次のように書いています。
○漢字
漢字の読みと書きに関する事項である。 漢字の読みと書きについては,書きの方が習得に時間がかかるという実態を考慮し,書きの指導は2学年間という時間をかけて,確実に書き,使えるようにすることとしている。また,漢字の読みについては,当該学年に配当されている漢字の音読みや訓読みができるようにすることとしている。
言い換えると、「その学年に配当されている漢字について、読むことは、当該学年のものを全て読めるようになること。」
「書くことは、2学年をかけて書けるようになること。次の学年の終わりまでに書くことができればよいこと。」になっています。
しかし、このことを正確に理解し、実践している教員はどれぐらいいるのでしょうか。
漢字を書くこともその学年のうちに完璧に学ばせなければならないと信じている教員は多いように思います。
普通の子どもが、漢字を覚えるためには、たくさん見聞きし、たくさん書き、頭に叩き込むことが必要です。
しかし、一部の子どもにとっては、一度に読むことも書くことも覚えるのは難しいみたいです。
新出漢字の指導の仕方を「読むことと書くことを分けて指導する」方法を試してみてもよいと思います。
例えば、「漢字を読むことは、どんどん先に学習しておく」とよいと思います。
「漢字を書くことは、ていねいに何回も書いて覚えさせ、テストで定着させる」とよいと思います。
また、「漢字テストは、当該学年だけでなく、1つ下の学年の漢字も一緒に行うようにする」とよいと思います。
そして、漢字を読む学習は、教科書だけにこだわらず、「向日葵」「紫陽花」などの難しい言葉もクイズやゲーム感覚で、取り組ませて、漢字の楽しさを味あわせるのもよいと思います。
ちなみに最初のクイズの答えは、「ひまわり・あじさい・とうもろこし・いるか・かば・もぐら」です。
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なお、漢字辞典や国語辞典の引き方や漢字学習については、次のページも参照してください。
漢字学習(2)漢字辞典の引き方に進む(内部リンク)
漢字学習(3)指導者がペースを決めるに進む(内部リンク)
漢字学習(4)子どもを漢字のミニ先生にするに進む(内部リンク)
漢字学習(5)漢字の正しさに進む(内部リンク)
辞書を引く習慣のつけ方に進む(内部リンク)
漢字学習(6)漢字遊びのいろいろに進む(内部リンク)
漢字学習(7)異字同訓の漢字・同じ読みの漢字に進む(内部リンク)
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