学級での視写の続け方について知りたいです。
視写指導について違う観点から書いています。
今回は、「視写指導:視写の進め方・続け方」についてです。
視写指導:視写の進め方・続け方
🟠視写のよさについて
国語の学習において、学習の中に視写を取り入れることはたいへん有益です。
「書く」という作業は、たいへんな努力を伴います。しかし、その努力を通して得られるものはたいへん多いと言えます。
具体的には、次のようなよさがあります。
1つめは、書くことに対する対抗感が減ります。多くの子どもにとって、書くという行為は、「何をどう書けばよいのかわからない」ために、なんとなく嫌いな学習になりがちです。原稿用紙を目の前にして鉛筆が止まってしまう子どももいます。
しかし、「視写」という学習では、書いてあるものを写すという行為なので、少し努力をするだけで、目の前の真っ白な紙が、文字でどんどん埋まっていきます。
白い紙が、自分の書いた文字で埋まっていく学習行為は、学習をしたという手応えを確実に子どもに得させることができます。
2つめは、集中力が身に付きます。
学級の子どもの中には、いろいろな子どもがいます。子どもの中には、普段からよく集中し、学習できる子どももいます。中には、なかなか学習に身に入らない子どももいます。そのような子どもにとって教師の説明やできる子ども同士の話し合いなどは、話を聞いているふりをして、頭の中では、違う世界に行っていても、ばれることはありません。
騒いだり、隣の子どもとおしゃべりをしたりしていたら叱られることもあるかもしれませんが、黙っていれば、退屈な時間をなんとかやり過ごすこともできます。
今日の授業もよくわからなかったけれど、うまくやり過ごすことができたと思っている子どももいると思います。
しかし、「視写」という学習では、黙って何もしないということは許されません。文字を写すという動的な行為をする必要があります。少なくとも、視写をしている間は、他の世界に行くことは許されません。視写という学習に集中する必要があります。
3つめは、国語の力が少しずつ自然に気につきます。
日本語を書く行為において、句点(。)の使い方は文の終わりなのでなんとなくわかります。しかし、読点(、)の使い方は、なかなか難解です。人によって使い方もばらばらです。読点の使い方を、明確に子どもに教えることをむずかしいです。しかし、視写を繰り返すと、子どもは、句読点の使い方を自然に身につけることができます。
日本語では、「は・へ・を」などの助詞の使い方も難しいです。なぜ「わ」や「え」と発音しながら、「は」や「へ」を使うのかを文法を使って説明することは難しいです。しかし、そのような助詞の使い方も、視写を繰り返すと、自然と身につけることができます。
🟠青木幹勇さんの考え
今回も、青木幹勇さんの書かれた「いい授業の条件」(国土社・1987年)という本の中の文章の一部を引用をしつつ、その引用に対して、私見を述べるという方法で、視写という学習方法のよさについて考えます。
音読すること、読解すること、さらには作文することなどと、この書くことの練習とを一体的に指導することを考えます。それができるのが「視写」です。これから読もう、調べようとする文章を、そっくり書いてみるのです。
1 視写は、教師も子ども(ノート)といっしょに書きます(板書)。子どもに書かせて教師が傍観(看視)するというのは避けるべきです。教師が真剣に板書して見せれば、子どもたちはみんな視写に集中してきます。
2 教師はさきに調べたクラスの平均筆速で書きます。子どもたちにもその速度で書かせます。つまり教師がペースメーカーになるのです。
3 教師の速度がスローテンポに感じられる上位の子どもには、文字を丁寧に書くことを課し、下位の子どもには、遅れないこと(文字の乱れは許容)、そして、全員同時に書き終わることを目標にさせます。
4 問題なのは中下位の子どもですが、この視写を毎時間七分~十分続けていますと、子どもたちの筆速は上昇し、遅くとも三か月経てば、低学年で分速一五字~二〇字、中学年で、二〇字~二五字、高学年で二五字~三〇字という、わたしの設定した標準? 速度に近づいてきます。
5 筆速が高まってくるだけではありません。正しく書こうとすれば時間がかかり、速く書けば文字が乱れるという、子どもにとってのあの大きな抵抗、大きなジレンマが、次第に克服されていきます。つまり、文字を乱さず、速く書く、この両者が接近してくるのです。
6 こうして視写は、当面、クラスの筆速を高めること、さらには、速く、正しくを目標にするのですが、それは単なる機械的な文字練習ではありません。視写することは、読むことでもあるのです。書くことにゆとりができると、音読や黙読のとどかなかったところに理解が広がっていきます。
7 書きながら、思考や想像をはたらかせて読めるのです。これは子どもだけではありません。教師にとっては、この書くことが教材研究につながってくるのです。
8 その他、句読点、いろいろな記号、改行など表記に関する内容なども、書いているうちに身についていきます。
青木幹勇・いい授業の条件
🟠私の補足的な考え
1について
<大切なことは授業中に行う>
子どもに学力をつけるためには、大切なことは授業中に行うということは、とても重要なことです。よく音読を宿題にしている方がいます。授業中にもして、習熟のために、宿題にもするという考えであればいいのですが、授業中に行わないで、宿題だけにするというのは本末転倒です。
大切な学習ほどきちんと授業中に行うべきです。
2について
<平均筆速を測る>
子どもの視写の平均筆速を前もって知っておくということは大切なことです。
筆速の調べ方については、次のページを見てください。
視写指導(1)筆速を調べるに進む(内部リンク)
日々、教師も板書をすることで、教師の板書の文字も上手になります。
<前もって視写しておく>
私は、同じ大きさの方眼ノートを使うように指導していました。最初に1ます開けるかどうか、どの文字で改行するのか、などを子どもに知らせるようにすると、子どもはストレスなく視写をすることができると思います。
できれば、教師は、前もって、子どもと同じノートを用意し、そこに視写しておくことが大切だと思います。
3について
<声かけをする>
基本的には、授業中の死者は、黙って行うことが大切です。ただし、それは、子どもの視写が定着し習慣化してからです。
最初は、先ほど述べたように、どこにどのように書くかを詳しく説明したり、「頑張っているね」「しっかり書けていて偉いね」「その調子です」などと絶えず、褒め、認め、賞賛するなど言葉がけをしたりする方がよいと思います。
4、5、6について
<継続する>
定着し習慣化するまでは、視写を継続することが大切です。少なくとも子どもが頑張ったな、成長したなと思えるまで、1か月ほどは、毎日、視写を継続することが大切だと思います。1か月ほど続けると子どもの成長が子ども自身にも教師にも実感できると思います。
7について
<教材研究に利用する>
視写が教材研究になるという考えは、大賛成です。
視写と教材研究の結びつきについては、次のページにも書いています。
併せて、お読みください。
物語文の教材研究の仕方(1)に進む(内部リンク)
8について
<日本語の文法などが身につく>
視写を通して、句読点、助詞の使い方などが身につくことは、最初に、「視写のよさについて」の3つめで述べました。
視写は、頭だけでなく、指と眼という体を通して、体感的に、言葉を覚え、身につけることができます。視写は、子どもと日本語を自然と結びつけます。
視写については、次のページも参照ください。
子どもの実態を把握する(2)視写に進む(内部リンク)
視写指導(1)筆速を調べるに進む(内部リンク)
コメント