さなぎたちの教室 教材分析114

教材分析
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つばさ
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新しい教材の「さなぎたちの教室」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、6年生の教科書に載っている「さなぎたちの教室」の教材分析をします。

 この教材は、2024年(平成6年)の4月から採択されている教科書で新たに付け加えられた教材です。

さなぎたちの教室:教材分析

🟠さなぎたちの教室:教材分析

 この作品は、東京書籍の6年生の教科書に載っています。2024(令和6)年からの新教材です。  

<作者>

 安東みきえ(あんどう・みきえ)さん

 uki(ウキ)さん

 出典:この教科書のために書き下ろしされました。

 安東みきえさんについて

 1953年(昭和28年)生まれです。日本の児童文学作家・絵本作家です。

 山梨県甲府市生まれです。

 1992年に「地球のゆめ」で、第12回カネボウ・ミセス童話大賞アイディア賞を受賞しました。1994年、毎日新聞主催の「ちいさな童話大賞」で大賞と選者賞今江祥智賞を受賞しました。(講談社・2016年)で講談社児童文学新人賞、児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞のフジテレビ賞を受賞しました

 主な著作に「まるまれアルマジロ!卵からはじまる5つの話」(理論社・2009年)、「星につたえて」(アリス館・2017年)などがあります。

<題名>

 題名は「さなぎたちの教室」です。

 たくさんのさなぎが飼われている教室なのかな、と思います。

 この物語に出てくる「さなぎ」は、松田君が羽化させようとしているいも虫のちょうになる前の状態のことです。

 しかし、このさなぎには違う意味が隠れているように思います

 さなぎは、いも虫などがちょうに羽化する前にしばらく時間じっとしている間のことです。その期間を経ることで、虫は姿を大きく変化させ、成長します。

 そのことを踏まえると、この物語の主人公のわたしも「さなぎ」の時期なのかもしれません。さなぎのように動けずもがいています。しかし、松田君や高月さんとの交流を通して、それまで苦手だったことができるようになります。

 さなぎたちの教室の「さなぎ」とは、主人公のわたしの状態を指している「暗喩」なのかもしれません。

 ちなみに、「暗喩」とは、「~のようだ」のような表現を用いず、直接他のものでそのものの特徴を説明する方法です。

 このように題名について考えてみるのも楽しい学習になると思います。

<設定>

 いつ(時):クラスがえがあった新学期。

 どこ(場所):学校。

 だれ(登場人物):わたし(名前は谷、この物語の語り手)。

<人物>

 わたし……主人公。このお話を伝えている人。名前は、谷。

 松田君……生き物係をしている。わたしと同じクラス。

 高月さん……わたしと同じクラスで、持久走のペアに誘われる。

<あらすじ>

 後程、付け加えます。

<場面>

 この物語は、場面と場面の間に1行空きで、5つの場面に分けて書かれていますので、場面を5つに分け、1場面を30~40字程度にまとめてみます。 

①  クラスがえがあり、わたしはなぜか友達がだれもいないような気がしていた。

②  松田君は同じ生き物係で、アゲハの羽化に熱心だが、わたしはいも虫が苦手だ。

③  持久走の時、高月さんが誘ってくれ、昔の思い出話をしてくれたが息が上がり返事できない。

④  わたしは「覚えている、忘れていない。」と遠くにいる高月さんに大声で言うことができた。

⑤  羽化したちょうを放す場に高月さんをさそうことができ、わたしはとてもうれしかった。

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<人物の会話>

 このお話に出てくる主な登場人物は、わたしと松田君と高月さんの3人です。

 ですから、会話文もこの3人の誰かが発言した言葉です。

 わたしにとって松田君は、よく分からないところがあります。

 生き物係になると、「アゲハを羽化させる」と宣言します。羽化にも熱心です。でも、じゃんけんで負けて生き物係になったわたしは、いも虫がとても苦手です。

 この二人のやりとりは、とてもユニークです。

 わたしは、なけなしの勇気をふりしぼって、次のように言います。

・「あのね、松田君。じゃんけんで生き物係になっちゃったけど、わたし、いも虫とかミミズとかカタツムリとか、どう体だけで移動する生き物が、ちょっと苦手みたいな気がするの。」

 それに対して、松田君は、さびしそな目をしながらも、けん命に言います。

・「苦手って何?」

「谷さん、カタツムリ飼ったことある? あいつら、トマト食べると赤いきれいなふんするし、ほうれん草だとかっこいい緑だし、黄色いパプリカは真っ黄っ黄でかわいいんだよ。」

「馬には乗ってみよ、人にはそうてみよ、虫は飼ってみよって言わなかったっけ?」

 わたしは、出任せのことわざまで言ってけん命に話したり、せっせといも虫の世話をしたりする松田君に知らん顔もできず、顔を横に向けたまま、葉っぱの入れかえやきりふきを手伝います。

 ある意味で松田君のおかげで、苦手なことに挑戦できていると言えるかもしれません。

 高月さんとの会話もわたしの心を大きく動かすことになります。

 高月さんは、わたしに次のように話します。

・「ねえ、谷さん、昇降口でのこと、覚えているかな? ほら、三年生のとき、わたしが前にかがんでランドセルの中身をぶちまけちゃったこと。」

「ちこくしそうでみんな行っちゃったのに、谷さんだけは拾ってくれたんだよ。助けれくれたんだよ。わたし、ずっと覚えてた。」

 わたしも覚えていた。みんなが自分とちがう人間に見えてとてもこわかったけど、ランドセルをひっくり返した高月さんを見て、かたの力がぬけたのだ。わたしの同じことをやっていたけど、みんなだって自分とそんなにちがわない人間だと分かったから。

 わたしは、走ることにつかれていて、返事よりも足を止めないで走ることに必死になってしまいました。

 すると、高月さんからえがおが消えてしまいます。

「覚えてないよね。何かごめんね。」

 高月さんに声をかけられないまま、高月さんは去っていってしまいました。

 ちゃんと伝えなくちゃ、と思ったわたしは、空気を胸いっぱいに吸いこんで、呼びかけます。

・「覚えているよ。忘れてないよっ。」

 そして、ちょうが羽化して、空に放す場に、高月さんを誘うことにして、次のように言います。

・「生き物係でちょうを放すんだけど、いっしょにどうかな。」

<人物の行動>

 後程、付け加えます。

<主題>

 この物語の主題は、何でしょうか?

 この物語の主題は、「わたしの成長」なのかもしれません。

 苦手ないも虫の世話も松田君のおかげでできるようになりますし、自分から話しかけることがなかなかできない引っ込み思案のわたしが、高月さんに対して大きな声で「覚えているよ。忘れてないよっ。」と言ったり、「生き物係でちょうを放すんだけど、いっしょにどうかな。」と誘ったりすることができるようになります。

 ただ、さなぎたちというようにさなぎが複数形になっていることを考慮すると、いもむしからさなぎの時期を経て、ちょうに成長しようとしているのは、「わたし」だけではないかもしれません。「松田くん」も「高月さん」も、ちょうになろうと、さなぎの時期を過ごしているのかもしれません。

 このお話を読み、学級で主題について自由に話し合ってみるという学習活動を計画するのも楽しいものになるかもしれません。

<表現の工夫>

 このお話での表現の工夫の一つは、ユニークな人物の描写です。

 中でも松田君という人物は、とてもユニークです。

 いくつか取り上げてみることにします。

わたしと目が合ったときに、立ち止まり、にっこり笑うところ

生き物係に決まると、みんなの前で「アゲハを羽化させます」と宣言するところ

いも虫をみんなが好きだと思いこんでいるかもしれなところ

いも虫やカタツムリなどが苦手というわたしに対して、カタツムリのふんの色がかわいいというところ。

出任せのことわざまで持ち出して、けん命に話すところ

虫たちに向かって「いつか空を飛ぶんだもんな。がんばれよな。」とつぶやくところ

走り終え、三階からすずしい顔で手をふり、「羽化したよ。」というところ

・「最初にちょうなったやつは谷さんにあげる。谷さんが一番に空に放していいよ。」と勝手にそんな約束をするところ

・花びらをつかもうとしたわたしの手を見て、かんちがいして、手をまた大きくふりかえすところ

 この時期の男の子の多くは、女の子と会話することさえ、戸惑うことが多いのでしょうが、松田君は、全くわたしに対して屈託なく接してくれます。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

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