ワニのおじいさんのたから物 教材分析125

教材分析
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つばさ
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ワニのおじいさんのたから物」の教材分析について知りたいです。

 よい授業をするためには、ていねいな教材研究をすることは大切です。

 しかし、国語の教材の分析をするのは時間がかかります。

 そこで、大まかな教材分析例を提示することにします。

 今回は、教育出版2年上と東京書籍の3年上とに掲載されているワニのおじいさんのたから物」です。

ワニのおじいさんのたから物:教材分析

🟠ワニのおじいさんのたから物:教材分析

 2年生と3年生では、使われている漢字が違います。ここでは、東京書籍3年生の教材を元に教材分析することにします。

<作者>

 川崎洋(かわさき・ひろし)さん

 こみまさやすさん絵(教育出版版)

 鈴木智子(すずき・ともこ)さん絵(東京書籍版)

 出典:「ぼうしをかぶったオニの子」(あかね書房・1979年)

 川崎洋さんについて

 1930(昭和5)年、東京都で生まれます。日本の詩人、放送作家、童話作家、文筆家です。

 戦争末期の1944年に福岡県八女郡に疎開して、福岡県立八女中学校(現:福岡県立八女高等学校)を卒業します。

 1948年頃より詩作を始めました。1951年に父親が急死したために、西南学院専門学校英文科(現:西南学院大学)を中退し、上京し、横須賀の米軍キャンプなどで働きます。

 1953年5月に詩人の茨木のり子さんと詩誌「櫂」を創刊します。谷川俊太郎さんや大岡信さんたちを同人に加え、活発な詩作を展開しました。

 1955年に詩集「はくちよう」を刊行しました。

 1957年から文筆生活に入りました。

<題名>

 題名は「ワニのおじいさんのたから物」です。この題名から、ワニのおじいさんのどんな宝物なのだろうと、子どもはわくわく感じるのではないかな、と思います。

 この物語を読む前に、「どのような宝物だと思うか」話し合う時間をもつと、子どもたちは早く物語を読みたいと思うかもしれません。子どもが物語を読みたいと思うような気持ちにさせる「しかけ」を張り巡らせるのも、楽しく授業をすすめるために必要な教員の役割のひとつだと思います。

<設定>

 いつ(時):ある天気のいい日

 どこ(場所):川ぎし

 だれ(登場人物):おにの子、ワニ

<人物>

 おにの子……ぼうしをかぶったおにの子。ワニを生まれてはじめて見る。

 ワニ……おじいさんのワニ。たから物をもっている。

<あらすじ>

・ある天気のいい日、ぼうしをかぶったおにの子が、川ぎしを歩いていてワニに出会う。

・おにの子はワニをはじめて見るので、そばにしゃがんでしげしげと見た。

・ワニは年をとっていて、しわくちゃで、人間では百三十才くらいの感じで、動かない。

・死んでいるかもと思い、おにの子は、「ワニのおじいさん」とよんでみるが動かない。

・おばあさんかもと思い、おにの子は、「ワニのおばあさん」とよんでみるが動かない。

・死んだんだと思ったおにの子は、地面の葉っぱをひろって、ワニの体につみ上げていく。

・朝だったのが、昼になり、夕方近くには、ワニの体は、半分ほど葉っぱでうまった。

・「ああ、いい気持ちだ。」とワニは目を開け、「君が葉っぱをかけてくれたの」と言った。

・「ぼくは、動かないから、死んでおいでかと思って。」

・「遠い所から、長い旅をして、つかれてしまい、安心したら急にねむくなったのさ。」

・「あの、ワニのおじいさん? それとも、おばあさんですか?」

・「わしは、おじいさんだよ。」

・「どうして、長いたびをしてここにおいでになったのですか?」

・「わしをころして、わしのたから物を取ろうとするやつから、にげてきたってわけさ。」

・おにの子はたから物がどんなものか知らない。たから物という言葉さえ知らない。

・「君は、たから物というものを知らないのかい?」ワニはすっとんきょうな声を出した。

・やがて、ワニはにこっとして言った。「君に、わしのたから物をあげよう。」

・ワニのおじいさんのせなかのしわが、たから物のかくし場所を記した地図になっていた。

・ワニに言われて、おにの子は、せなかの地図を、しわのない紙にかきうつした。

・「では、行っておいで。わしはもうひとねむりする。たから物を君の目でたしかめるといい。」

・おにの子は、地図を見ながら、とうげ、けもの道、つり橋、谷川、岩あなをとおった。

・森の中で何ども道にまよいそうになりながら、やっと地図の×じるしの場所にたどりついた。

・そこは、切り立つようながけの上の岩場だった。

・そこに立ち、おにの子は目を丸くした。口では言えないほどうつくしい夕やけが広がっていた。

・おにの子はぼうしを取り、これがたから物なのだ、とうなずいた。

・ここは、世かい中でいちばんすてきな夕やけが見られる場所なんだ、と思った。

・その足もとに、たから物を入れたはこがうまっているのを、おにの子は知らない。

・おにの子は、いつまでも夕やけを見ていた。

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 この物語は、たから物を知らないおにの子が、おじいさんの知っているたから物とは別の「美しい夕やけ」というたから物を見つける話です。

<人物の会話・行動>

会話について

 ここでは、登場人物は二人しかいませんから、二人の会話はとても重要です。

 特に、次の3つのおにの子の言葉は、おにの子の年上のワニに対する気づかいが感じられます。

「ぼくは、あなたがじっとして動かないから、死んでおいでかと思ったのです。」

「あの、ワニのおじいさん? それとも、おばあさんですか?」

「ワニのおじいさんは、どうして、長い長いたびをして、ここまでおいでになったのですか?」

 特に、二つの「おいで」という言葉は意味は違いますが、ていねいな言葉づかいで、おにの子の年上に対して敬意が現れています。

 ワニのおじいさんも親切なおにの子の優しさに感動したのか、次のような提案をします。

「君に、わしのたから物をあげよう。うん、そうしよう。これで、わしも、心おきなくあの世に行ける。」

 たから物を取ろうとするやつからにげてきたのに、初めて会ったおにの子にたから物をやるというのですから、よほどおにの子が気にいったのかもしれませんね。

行動について

 この物語では、おにの子のやさしい行動が出てきます。

おにの子は、そのあたりの野山を歩いて、地面におちているほおのきの大きな葉っぱをひろっては、ワニの所にはこび、体のまわりにつみ上げていきました。

朝だったのが昼になり、やがて夕方近くになって、ワニの体は、半分ほどホオノキの葉っぱでうまりました。

 ワニが死んだと思ったおにの子は、とてもとても長い時間をかけてワニのためにホオノキの葉っぱを集めて、体のまわりにかけています。

<主題>

 この物語の主題は、何でしょうか?

 「たから物は、人によってちがう」ということかもしれません。

 結局、この物語の題名になっている「ワニのおじいさんのたから物」が何だったのか、どのような物だったのかを、読者である私たちは知ることはできませんでした。

 では、たから物は見つからなかったのでしょうか。そんなことはありません。「おにの子は、いつまでも夕やけを見ていました。」という最後の文章にあるように、おにの子は、自分の考える本当にすばらしいと思えるたから物を見つけたのです。おにの子どもは長い時間をかけてたから物を見つけることができて、本当に満足そうです。

<表現の工夫>

 この物語文には、さまざまな表現の工夫があります。

季節に関する表現 

ヘビもカエルも、土の中にもぐりました。カラスが、寒そうに鳴いています。

おにの子がたから物を知らないことに関する表現

とんとむかしのそのまたむかし、ももたろうがおにからたから物をそっくり持っていってしまってからというものは、おには、たから物とはぜんぜんえんがないのです。

ワニのおじいさんがおどろた様子の表現

ワニのおじいさんは、おどろいて、すっとんきょうな声を出しました。

<まとめにかえて>

 この教材分析は、このブログに載せている「物語文の教材研究の仕方」に挙げた10個の視点のうち、最後の指導計画を除いた9つの視点に基づいて行ったものです。

 教員のみなさん1人1人が自分で行う教材研究の参考になれば幸いです。

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