保健安全指導(救命救急研修)初任者研修014

初任者研修資料
つばさ
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救命救急の仕方を知りたいです。

 保健安全指導には、学校で子どもが安全に安心して過ごせるように、いろいろな内容が含まれます。

 具体的には、保健教育、保健管理、給食指導、水泳における救命救急処置などがです。

 ここでは、主に次の2つのことを書きます。

 給食における「食物アレルギー対応」

 水泳における救命救急講習

給食における「食物アレルギー対応」

 学校では、給食を提供することが基本です。

 そこで、食物アレルギーをもつ子どもに対して適切な対応が必要です。

 大きな柱は、次の3つです。

1.保護者との連携と情報共有

2.日常的な取り組み

3.緊急時の対応

 詳しく書きます。

1.食物アレルギーをもつ子どもの情報を正確につかみ、保護者と連携しつつ、学校の全教職員で情報の共有を行う。

 保護者から正確な情報を得ることが大切です。

 誰がどのような食物アレルギーをもっているのかを把握し、全教職員で確認しておく必要があります。

2.学校全体で日常の取り組みを行うと共に、事故の防止に取り組む。

 担任や管理職、養護教諭、栄養教諭など一部の教員だけが情報を知っているのではなく、食物アレルギーをもつ子ども一人ひとりに対して、各教職員の役割を明確にしておく必要があります。

 該当食材が給食に含まれる場合は、職員室の前面黒板などに掲示するなど、どう対応するのか決めておく必要があります。

(児童名、学年組、完全除去、部分除去、給食の代わりになる弁当の持参の有無などの掲示)

3.緊急時に対応する。

 もし万が一食物アレルギーが起こった場合、迅速に適切に対応するために、学校体制やマニュアルを整備しておきます。

 本人対応だけでなく、病院、消防署、保護者、教育委員会などに誰が連絡するのかなど連絡体制などを整えておく必要があります。

 また、年に数回は、食物アレルギーになった場合のエピペンの使い方など、緊急対応のための講習会などを開く必要があります。

給食指導の進め方に進む内部リンク

食物アレルギーから子どもを守る・安全教育に進む内部リンク

水泳における救命救急講習

 多くの小学校では、プール指導前に、消防署の人たちを招いて「普通救命講習会」や「救命救急講習会」を開き、プールなどでの事故に備えます。

 自治体によっては、管理職に「応急手当普及員講習」を受講させています。

応急手当普及員講習」を受講すると、「普通救命講習会」や「上級救命講習会」を主催することができます。

普通救命講習会」や「応急手当普及員講習」などで使用するテキストは、救命救急医療の先進国であるアメリカのガイドラインを参考に、数年に一度改訂されます。

 最近の「普通救命講習」では、最新のガイドライン2015をもとにしています。

 このような講習会では、座学だけでなく、人体人形やAEDなどを活用し、心肺蘇生法の練習をします。

 学校で行なう心肺蘇生法の練習では、人工呼吸や胸骨圧迫などの実地訓練を数回行うことが多いです。

 ガイドラインは、よく改訂されますので、いつまでも同じ内容ではありません。

🟠心肺蘇生法

「心肺蘇生法」の大まかな流れを書きます。

 合わせて、以前講習会を行った際などに消防署の人にお聞きしたお話などを付け加えておきます。

◎ 倒れている人を認めた場合は、安全を確認する。※1

 (自分が事故にあわないように、周囲の状況に気をつけ、近づく。)

◎ 反応の確認をする。(頭を手で押さえ、両肩を叩きつつ、声をかける。)

◎ 反応がない場合は、大声で近くの人に助けを求めて、119番通報と、AEDの手配を頼む。※2

◎ 呼吸をみる。(胸腹部を観察し、胸腹部の動きの有無を見て、普段通りの呼吸があるかどうか確かめる。あえぐ呼吸などは呼吸なしと判断する。)3

◎ 胸骨圧迫をする。※4(強く、速く、絶え間なく行う。一度押した後は、胸がしっかり戻るようにする。30回する。)

◎ 人工呼吸がためられる場合や自信がない場合は、胸部圧迫を繰り返す。※4

◎ (人工呼吸をする意思がある場合は)気道を確保する。

◎ 人工呼吸をする。(人工呼吸ができないか、ためらわれる場合はしなくてもよい。)※5

◎ 心肺蘇生を繰り返す。(胸骨圧迫30回+人工呼吸2回)

◎ AEDの装着をする。6(電源を入れ、電極パットを装着し、AEDの指示通りにする。)

◎ 救急隊がかけつけるか、傷病者が普段通りの呼吸をしたり目を開けたりするかまで、心肺蘇生を続ける。

 一度、救命救急の講習を受けた人は、心肺蘇生法の紙を見たり、ゆっくりと時間をかけたりすれば、どのような手順で行えばよいのか、わかる人もいると思います。

 ただ、町中で急に人が倒れているのを見かけて、ためらわずにさっと救命処置に取りかかることができる、と言いきれる人はあまり多くないのではないでしょうか。

 いざという時のために、時々、パンフレットを見るなど、やり方を振りかえる必要があります。

※1 経験から考えても、倒れている人を見て、すぐに声をかけて、救命処置をしようとするのが一番たいへんなことのような気がします。以前、JRに乗って出かけようとしました。ほとんどの人が降りた後、電車に乗ると、男の人が、椅子の上ではなく、床で「く」の字になっていました。寝ているのかなと思いつつ、そんなところで倒れている人を見ると、声をかけるのがためらわれました。もし息をしていなかったり、死んでいたりしたらと思うと、一瞬行動が止まりました。しかし、長年救命救急の講習会などを受けてきた経験を生かして、勇気を出して、声をかけました。周りの人もすぐに寄ってきてくださり、駅員さんに声をかけに行ってくださる人もいました。「あなた、119番お願いします」「あなた、AEDをお願いします」などと言う余裕は正直ありませんでした。結果として、その人は居眠りしたまま、床で寝ていただけでことなきを得たのですが、知らない人が倒れていた時に、簡単に声をかけられるものではないなあ、と実感しました。
 ただ、講習会では、次のような話も聞きました。心臓が止まると15秒以内に意識がなくなり、3~4分以上そのままの状態が続くと、脳は回復することが困難になります。突然、心臓や呼吸が止まってしまった場合、救命処置の開始が遅れるにつれて命を助けることは急速に困難になります。2分以内に救命処置を開始すると50%近くの命が助かりますが、5分後に開始すると、30%の人しか助かりません。救急車を呼んだけれど、何もしないで10分間そのままにしておき、救急車が来て延命処置を開始しても、10%の人しか助かりません。
 救命救急センターが連絡を受け、救急車が連絡のあったところまで行くのに、全国平均で、平均8分かかっています。私の住んでいた町は、60台の救急車をもっていますので、もっとはやくて5分ぐらいで現場まで行きます。しかし、マンションなどの場合、救急車を止めて、救急隊員がエレベーターなどに乗って家まで行く時間はこの8分や5分に入っていませんので、実際はもっと時間がかかっています。とにかく、救命処置を開始する時間が早いほど、多くの命が助かるそうです。以前、阪神タイガースの中村ゼネラルマネージャーが急性心不全で急死されました。もし具合が悪くなったのが昼間で、発作を起こして倒れる所を見ている人がいて、すぐにAEDをしていたら助かっていたのではないかという話もあります。

2 近くの人に声をかける場合、「誰かお願いします」という曖昧な声かけではなく、「眼鏡をかけたあなた、119番お願いします」「青いワンピースのあなた、AED持ってきてください」など具体的な指示をする必要があります。周囲に誰もいない場合は、先に自分で119番に連絡をした方がよいようです。助けが来ないと永遠に自分だけで救命処置をすることになりますので、連絡が先です。

3 さいたま市の小学校6年生の明日香さんは、2011年(平成23年)9月に駅伝の練習中に倒れ死亡しました。明日香さんは、倒れた後「あえぐような呼吸」をしていたそうです。あえぐような呼吸は、心肺蘇生法では、普段通りの正常な呼吸がない状態である、と判断するのですが、そばにいた学校の先生たちは、呼吸や脈拍があると判断し、AEDの使用をしなかったそうです。救急隊がきた時には、心肺停止の状態で、学校側がAEDを使用しなかったことは問題であったと、検証委員会が検証結果を報告していました。この事故の後、さいたま市教育委員会は、再発防止に向けた「ASUKAモデル」という事故対応テキストを作成したそうです。

ASUKAモデルのホームページに進む(外部リンク)

4 ここ数回改定されたガイドラインでは、場合によっては人工呼吸をせずに、胸骨圧迫をするようになっています。見ず知らずの人に人工呼吸をすることはためらわれます。全身の血液の中に酸素が残っていますので、胸骨圧迫をしっかり行い、血液の循環をうながすことで、脳などへ酸素を届けることができます。
 ただ、血液中に酸素が残っているのは、急性心不全や脳溢血などで倒れることの多い大人に多いことのようです。子どもの場合は少し事情がちがうそうです。子どもが突然死する場合には、けが、溺水、窒息などがあります。溺水や窒息などの場合、血液中の酸素が完全になくなって倒れているという状態が多いそうです。そのような場合は、「人工呼吸」から始めて、体に酸素を与えることで、状態がよくなることもあるみたいです。特に、乳児などの場合、体が小さくて、体を傷つけそうで、胸骨圧迫することがためらわれます。そのような場合は、何もしないより、人工呼吸から始めてみることも大切だそうです。

※5 心臓が止まると、血液を全身に送ることができません。その際、一番ダメージを受けるのが、脳です。脳は、体重の2%しかありませんが、酸素消費量は20%です。脳は、血液が流れなくなると、数秒以内に意識がなくなり、3~5分で脳の神経細胞は死に始めます。神経細胞は再生しませんので、命が助かっても大きな損傷が残ることになります。胸骨圧迫をすることで、心臓が止まっていても、全身に血液を送ることができます。酸素は、空気中に約21%あります。呼気の中にも約16~18%の酸素が残っていますので、胸骨圧迫をすることで、脳の損傷を抑えることができます。
 胸骨圧迫をする際は、強く5cm以上押すこと、1分間に100回以上の速さで押すこと、人工呼吸やAEDの電極パッド貼付の中断も10秒以内に抑えることが大切です。また、一度押した胸郭に空気が再度入るようにしっかり元の位置に戻すことも大切です。

※6 AEDは数社から少し仕様の異なるものが出ています。AEDの中には、大人用と小児用のパッドを使い分けることのできる仕様のものがあります。小学生には、小児用のパッドを使う方がよいように思われますが間違いです。小児用のパッドを使った方がよいのは、未就学児の小児のみです。体の大きい小学校5、6年生には、小児用のパッドを使用しても十分な電気ショックを与えることができず、効果がないそうです。最近は、高学年児童に小児用のパッドを使用してしまう誤用をさけるため、小学校では、小児用のパッドを置かないようにしています。


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