今回は、「魔女の宅急便」について書きます。
「魔女の宅急便」というお話は日本で最もよく知られているファンタジー作品です。
今回は、「魔女の宅急便①:誕生とアニメ化」について書きます。
魔女の宅急便①:誕生とアニメ化
イラスト:ぺるこさん
🟠魔女の宅急便①:誕生とアニメ化
<魔女の宅急便の誕生>
今回紹介するファンタジー作品は、角野栄子さんの書かれた「魔女の宅急便」です。
この作品の発行は、2024(令和6)年から見ると、およそ40年前の1985(昭和60)年になります。この書籍は、福音館書店から発行されました。その後、2002(平成14)年に、同じ福音館書店から文庫版として発行されます。
オリジナル作品は、福音館書店が毎月発行している子育て雑誌である「母の友」に1982(昭和57)年から1983(昭和58)年に掲載されました。ですから、この「魔女の宅急便」という作品の誕生は、1982−83年にさかもどります。
「母の友」という雑誌は、第2次世界大戦(太平洋戦争)後、世の中がまだ貧しい一方で、価値観が大きく変わりつつあった1953(昭和28)年に創刊された月刊誌です。「母の友」は、新しい時代を生きる子どもたちを育てるお母さんに向けて「子育てのヒント」と「物語のたのしさ」を届ける月刊誌として作られました。雑誌の名前にあるように、元々は、子育て中のお母さんを対象に発行されましたが、はじまりから70年が過ぎ、読者の対象は、お母さんだけでなく、お父さん、保育士さん、幼稚園や小学校の先生、絵本好きの人というように増えてきています。
多くの絵本を世の中に送り出している福音館書店が作っている雑誌の中でも、伝統のある月刊誌のひとつです。
福音館書店のホームページには、次のように書かれています。
「母の友」は忙しい毎日を送る子育て真っ最中のお母さんやお父さんに「子育てのヒント」と「物語のたのしさ」をお届けする月刊育児雑誌です。親、保育士、教師、子どもに関わるすべての人にむけて、「子どもと楽しく生きる」ヒントを毎月お届けします。
福音館書店ホームページ
2024年2月までに、846冊作られています。2024年2月発行の最新号は、「なんで忘れちゃうんだろう?」という特集で発行されています。定価700円です。
母の友の紹介ページに進む(外部リンク)
<アニメ作品としての魔女の宅急便>
魔女の宅急便という物語を多くの人は、宮崎駿さんの作られたアニメ作品として知っている方が多いかもしれません。
アニメ作品としての「魔女の宅急便」は、1989年に制作されたスタジオジブリ作品です。童話ならではのファンタジー性が強い作品である原作と比べると、主人公のキキのもつ魔女由来の飛行能力を「人がもつ才能や特技の一つ」としてとらえていて、少女が特技を生かして独り立ちしていくという現実的な視点にたって描かれていて、映画オリジナルの要素が強い作品です。
スタジオジブリの作品としては、「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」「火垂るの墓」に次ぐ4作品めです。観客動員数も、それまでの3作品が77万人から80万人だったのに比べて、3倍以上の264万人となり、ステジオジブリの知名度と人気を一気に押し上げた作品でもあります。
この映画の制作には、徳間書店、ヤマト運輸、日本テレビが参加しています。
本来、小荷物を運ぶ仕事は、「宅配便」というのが一般名称です。「宅急便」というのは、ヤマト運輸が自分の会社のサービスとして名付けた登録商標です。角野栄子さんは、そのことを知らないで、宅配便と名称を使ったそうです。アニメ化にあたり、はじめ、ヤマト運輸は、スポンサーになることに難色を示したそうです。しかし、同社のトレードマークである黒猫が物語に登場することを知り、次第に前向きになり、スポンサーになることを了承したそうです。
また、この作品以降日本テレビは、ジブリ作成の劇場公開作品の制作に参加するようになりました。この作品以降、日本テレビは、自局でジブリ作品を独占放送する権利をもっています。
金曜ロードショーで、数多くのジブリ作品は、不定期で放送されていますので、テレビで放送された「魔女の宅急便」を見て、公開当時生まれていなかった若い人や子どもでも、この作品を知り、好きになっているのではないでしょうか。
一番最近では、2022年(令和4)年4月29日に15回めのテレビ放送がありました。
宮崎駿さんの作ったジブリ版の「魔女の宅急便」では、原作の「魔女の宅急便」の中の、1巻の前半部分を取り上げて、アニメにしています。
角野栄子さんは、アニメ映画化に際し、当初は唯一の注文として「キキが旅立つ時にキキの故郷の木に付けられていた鈴を鳴らすこと」のみを求めていたそうです。
角野さんは「タイトルと名前」そして「世界を変えないで下さい」と伝えていたのですが、やはり原作をアニメ化するにあたり、宮崎駿さんや制作スタッフなどの思いも強く出るようになったみたいです。
週刊朝日の2019年7月19日号で、次のように語られているそうです。
(映画は)お話の筋がちょっと違うのでびっくりしました。私はもう少し可愛いラブストーリーになるかと思ってたんです。
映画を見てから原作を読む方が凄く多くて、それはそれで良かったと思います。
週刊朝日の2019年7月19日号・ウキィべディアフリー百科事典『魔女の宅急便 (1989年の映画)」より
このように、魔女の宅急便においては、アニメを作った宮崎駿さんにとっても、原作者の角野栄子さんにとっても、読者や観客などの受け手にとっても、ウィン・ウィンのよい結果になったのはとてもすばらしいことだと思います。
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