「名前を見てちょうだい」を読む学習について知りたいです。」
小学校の国語の学習には、物語を書く学習があります。
ここでは、「物語を書く指導(4):指導の工夫②」について書きます。
物語を書く指導(4):指導の工夫②
🟠「名前を見てちょうだい」の読み取り
この単元の中の「名前を見てちょうだい」の内容や表現を読む時には、次のような計画で学習をしました。
③ 第1、第2場面にどのようなことが書かれているか知る。
④ 第3場面を読み、どのようなことがどのように工夫されて書かれているのかを読み取る。
⑤ ⑥第4、5場面を読み、どのようなことがどのように工夫されて書かれているのかを読み取る。
では、順に指導者の工夫について書きます。
🟠各場面の読み取り
場面毎の読み取りにおいては、登場人物の会話や場面の様子に着目して読み取ることにしました。
人物の気持ちをくわしく読み取るのではなく、大まかな人物の会話や行動、場面の様子が分かれはよし、としました。それは、これらのことが想定できないと物語が書けないからです。
さらに作者が同じ言葉を繰り返し使っているというように、様々な表現の工夫をしていることを話し合う時間をもつようにしました。そのことで、物語を書く際にどのようなことに注意して書くと楽しい物語になるか考えることにしました。
🟠1、2場面の読み取り(3時間め)
1場面は、えっちゃんがお母さんから赤いぼうしをもらう場面です。
2場面は、えっちゃんときつねが、ぼうしのとりあいをする場面です。
1場面が短いので一緒に扱うことにします。
この物語では、まず第1場面で、主人公のえっちゃんが名前入りの帽子をもらい喜んでいることをおさえました。お母さんがわざわざ刺繍で名前をつけてくれたすてきな帽子です。
それから、主人公のえっちゃんが不思議な世界に入るきっかけとして、「強い風」が吹いていることもおさえることにしました。
「~したとき、強い風がふいてきて、いきなりぼうしをさらっていきました。」と書いています。
「強い風」が、普通の世界から不思議な世界へ入り込むきっかけになります。
「強い風」が、普通の世界から不思議な世界に入る込むきっかけになることは、物語では、よくある手法です。
例えば、5年生で学習することの多い宮沢賢治さんの書かれた「注文の多い料理店」でも、二人のわかいしんしは、「風がどうとふいてきて、草はザワザワ、木の葉はカサカサ、木はゴトンゴトンと鳴りました。」という文の後で、注文の多い料理店のある不思議な世界に入ります。
このような物語に書かれているしかけを教員が知っているということは、とても大切なことです。どのような形で、子どもに伝えるのか、あるいは、あえて触れないかは、それぞれの教員の力量によりどちらでもよいと思います。しかし、その前提として、教える者の知識として「物語には作家のしかけが隠されている」ということを知っていないと、確かな指導はできないと思います。
音読を中心にして、「名前を見てちょうだい」を学習するのであれば、それほど注目しなくてもいいかもしれません。
しかし、物語を書くということを目的にした学習では、見逃してはいけない表現の工夫です。
🟠3場面の読み取り(4時間め)
3場面は、えっちゃんときつねと牛が、ぼうしのとりあいをする場面です。
小学校の国語の時間の読み取りでは、学級の大部分の子どもが書かれている内容をきちんと音読できるかどうかは、とても大切なことです。
私は、子どもが文章をすらすら読むことができるかどうかを1つの指標にしています。多くの子どもが、文章をすらすら読めない状態で、いくら素晴らしい発問をしてもあまり意味はないと思います。なぜなら多くの子どもが、その発問の意味がわからないで、一部の利発な子どもが答えるだけの授業になってしまうからです。
ここでも、しっかりと音読できることを大切にしました。
よい文章は、会話文だけを読んでも内容がわかります。
時には、会話文以外の地の文を読まずに、会話文だけを読ませることも意味があります。
クラスを3つに分け、1つはえっちゃん、1つはきつね、1つは牛の会話だけを音読させてみると、会話だけでも十分お話の内容がわかります。
えっちゃん役、きつね役、牛役を1人ずつ選び、他の子どもは地の文を読むという方法で音読することもよいでしょう。
低学年の子どもを学習に関わらせるためには、音読はとても効果的な方法です。
🟠4、5場面の読み取り(5、6時間め)
4場面は、ぼうしを食べた大男を、えっちゃんがやっつける場面です。
5場面は、えっちゃんがあっこちゃんのうちにあそびに行く場面です。
4場面は、全文の半分程度を占める長い場面ですので、2時間扱いにしました。
4場面の最初は、2、3場面と同じことが繰り返されます。
強い風が吹いてくる→帽子が飛ばされる→新しい登場人物が帽子を持っている
しかし、4場面は、これまでの2場面や3場面と少し違います。帽子を持っていて、自分のものだと言い張るきつねや牛と少し違います。大男が帽子を食べてしまいます。そしてこう言います。「食べちゃったよ。だから、名前も食べちゃった。」「もっと、何か食べたいなあ。」
それを聞いて、牛ときつねは、忙しいので早く帰らなきゃと言い、さっさといなくなります。
しかし、えっちゃんは違います。なぜなら、お母さんに名前を刺繍で入れてもらった大切なすてきな帽子だからです。
えっちゃんにとっては、帽子も大切ですが、自分の「うめだえつこ」という名前も大切なものです。大男は、帽子も名前も食べたと言います。だから、えっちゃんは、とてもおこります。
このような場面は、えっちゃんがどのように怒っているのかを発問することはとても大切です。
私は、このような時、次のように発問します。
「えっちゃんがおこっているところがわかるところに、線を引きましょう。」
えっちゃんがおこっているところがわかる言動(会話と行動)に線を引かせます。なぜ、線を引かせるのかといえば、こうすることで、全ての子どもが学習に積極的に関与できるからです。
「発問→挙手→指名」では、一部の子どもしか発言できません。しかし、「発問→線を引く→指名」だと、全ての子どもが自分の答えの良し悪しを判断することができます。
子どもたちは、次のような箇所に線を引くことができるでしょう。
・むねをはって、きりりと見上げて言いました。
・「あたしはかえらないわ。だって、あたしのぼうしだもん。」
・体から湯気がもうもうと出てきました。
・ぐわんと大きくなりました。
・「食べるなら、食べなさい。あたし、おこっているから、あついわよ。」
・湯気を立てたえっちゃんの体が、また、ぐわあんと大きくなりました。
・大男と同じ大きさになってしまいました。
・えっちゃんは、たたみのようなてのひらをまっすぐのばして
・「あたしのぼうしをかえしなさい。」
えっちゃんの怒りがよくわかります。そして、その怒りは、自分の大切な「帽子」と「名前」を奪われそうになったからです。
ぼうしをかぶることでえっちゃんは、元の大きさに戻ります。
5場面は、現実世界に戻ったえっちゃんがあっこちゃんの家に遊びに行くという1文だけです。
この学習に関係する指導については、次のページをお読みください。
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物語を書く指導(2) 単元目標と指導計画に戻る(内部リンク)
物語を書く指導(3) 指導の工夫①に戻る(内部リンク)
物語を書く指導(5) 指導の工夫③に進む(内部リンク)
物語を書く指導(6) 指導の工夫④に進む(内部リンク)
物語を書く指導(7) みくのふしぎなピアノ(全文)に進む(内部リンク)
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