いじめから子どもを守る:安全教育⑭

安全教育
いじめ
いじめ

いじめへの対応の仕方を知りたいです。

 いじめは、残念なことに、どの学校でも、どの学級でも、どんな指導力のある素晴らしい教師が担任する学級でも起こり得ることです。

 いじめを早期発見し、子どもが安全に安心して学校に通えるようにすることはとても大切なことです。

 今回は、「いじめから子どもを守る」ことについて書きます。

いじめから子どもを守る

🟠いじめから子どもを守る

<いじめの定義の変遷>

 いじめの定義は、少しずつ変遷してきています。

 生徒指導上の諸課題の現状を把握し、今後の施策に活かすために、文部科学省では、毎年「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸課題に関する調査」を行っています。この調査では、調査を行うための「いじめの定義」を少しずつ変えています。

 昭和61年(1986年)度からは、次のように定義しています。

 この調査において、「いじめ」とは、「1 自分より弱い者に対して一方的に、2 身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、3 相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実(関係児童生徒、いじめの内容等)を確認しているもの。なお、起こった場所は学校の内外を問わないもの」とする。

児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸課題に関する調査

 平成6年(1994年)度からは、次のように定義しています。 

 この調査において、「いじめ」とは、「1 自分より弱い者に対して一方的に、2 身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、3 相手が深刻な苦痛を感じているもの。なお、 起こった場所は学校の内外を問わない。」とする。

 なお、個々の行為がいじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うこと。

児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸課題に関する調査

 ここでは、次のように変更しています。

「学校としてその事実(関係児童生徒、いじめの内容等)を確認しているもの」 を削除しています。

「いじめに当たるか否かの判断を表面的・形式的に行うことなく、いじめられ た児童生徒の立場に立って行うこと」を追加しています。

 平成18年(2006年)度からは、次のように定義しています。

 本調査において、個々の行為が「いじめに当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする。 「いじめ」とは、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの。」とする。

(※) なお、起こった場所は学校の内外を問わない

児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸課題に関する調査

 ここでは、次のように変更しています。

「一方的に」「継続的に」「深刻な」といった文言を削除しています。

「いじめられた児童生徒の立場に立って」「一定の人間関係のある者」「攻撃」等について、注釈を追加しています。

 さらに、平成25年(2013年)に成立・施行された「いじめ防止対策推進法」(以下、推進法と記します)によって、平成25年(2013年)度からは、以下のとおり定義されています。

いじめ」とは、「児童生徒に対して、当該児童生徒が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒と一定の人的関係のある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものも含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの。」とする。なお、起こった場所は学校の内外を問わない

いじめ」の中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められ、早期に警察に相談することが重要なものや、児童生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるような、直ちに警察に通報することが必要なものが含まれる。これらについては、教育的な配慮や被害者の意向への配慮のうえで、早期に警察に相談・通報の上、警察と連携した対応を取ることが必要である。

児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸課題に関する調査

 ここでは、いじめは、子ども同士の単純なトラブルではなく、「犯罪行為」になり得ることを定義づけています。

 このように定義の変遷が行わてきたのは、長い期間に渡って、いじめが原因で、子どもが学校に行けない事例や自殺する事例が多発していることが考えられます。

<学校におけるいじめ対策>

  平成25年(2013)年に制定・公布された推進法では、第十三条で次のように書いています。

 いじめ防止基本方針又は地方いじめ防止基本方針を参酌し,その学校の実情に応じ,当該学校におけるいじめの防止等のための対策に関する基本的な方針を定める 

いじめ防止対策推進法

 同法の第二十二条では、次のように書いています。

 当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため当該学校の複数の教職員,心理,福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置く 

いじめ防止対策推進法

 すなわち、全国の学校は、 いじめ防止のために「基本方針」の策定と、方針に沿って防止等の取組を進めていくための「対策組織」の設置が義務づけられました。

 各小学校のホームページを見ますと、「いじめ防止のための基本方針」などの名称の基本方針が掲載されていると思います。

 多くの学校では、いじめなどがあった場合には、担任は、管理職に報告することになっていると思います。

 担任は、管理職や学年主任や生活指導主任、保護者などと相談して、具体的に解決していると思います。

 そして、月に1回程度ある職員会議などの際に、簡単な事実の報告を行い、教職員で、いじめの事実や解決方法などについて、共有することはしていると思います。

 ただ、外部から専門家を招いて「対策組織」をきちんと設置し、定期的に対策会議等を行なっている学校は少ないように思います。

 なお、組織的な対応の大切さについて、文部科学省の国立教育政策研究が発行しているリーフレットの「いじめのない学校づくり3 基本方針を実効化する対策組織の構成と運用」を読むと、たいへん役に立ちます。

「いじめのない学校づくり3 基本方針を実効化する対策組織の構成と運用」に進む外部リンク

<具体的な対策>

 小学校が行っている具体的な基本対策としては、各学期ごとに1回程度のアンケートを行っていることが多いように思います。

 熱心な学校では、月に1回調査している学校もあります。

 多くの場合は、アンケートを元に、各担任が子どもから聞き取りを行います。

 単なる子ども同士のトラブルなのか、深刻ないじめなのか、場合によっては、犯罪行為なのかをきちんと見極めることが大切です。

 場合によっては、保護者などもお呼びして、保護者にも協力をお願いする必要があります。

 担任がアンケートをとり、一覧表にしたものを元に、学年で相談をしたり、生活指導部会で報告したり、管理職に報告したりします。場合によっては、管理職から、教育委員会に、いじめの件数や人数などの報告をすることもあるでしょう。

 いじめがあった場合、解決した後でも、再度、いじめが繰り返されていないかどうかを、1か月くらい後に、いじめを訴えた子どもに聞くことも大切です。

 ただ難しいのは、子どもがいじめを受けていても、担任の普段の対応が不適切な場合、きちんと子どもがアンケートにいじめの事実を書かなかったり、いじめの悩みを相談しなかったりすることがあることです。

 教員の不適切な対応によって、子どもが更なる苦境に陥ることがないとは言い切れません

 過去のいじめで子どもが自殺をした悲しい出来事の中でも、担任がいじめに加担していた事例は多々見られます。

 多くの教員は、子どもがいじめを受けないように日々子どもを見守り、受けた場合は、早期解決に向けて努力をしています。

 具体的で、定期的で、多角的な視点から子どもを見守り、「いじめから子どもを守る」方法を、学校では工夫する必要があります。

<自戒を込めて>

 しかし、教員も人間なので、いつも聖人君子的な対応ができるわけではありません。

 過去には、教員が同僚をいじめていた事件すらあります。

 令和元年(2019年)には、関西のある都市の小学校で、同僚に対していじめをしていた教員が、処分を受けています。

 この例のように、残念なことに、教員自身に、いじめの体質が全くないとはいい切れません

 高圧的な対応態度の管理職もいるでしょうし、指導の名の元に、威圧的な態度で同僚に接したり、不適切な言動を繰り返したり、時には無視をしたりする教職員が全くいないとはいい切れません

 多くの職場では、互いを思いやり、協力し合い、助け合っています。

 しかし、時には、子どもや保護者、同僚などに対して、声を荒げたり、感情的な対応をしたりする教職員がいないとは限りません。

 教育熱心のあまり、不適切な言動をすることがあるかもしれません。

 このように、いじめをしてしまう資質は、全ての人にあり得ることです。

 時には、自戒を込めて、自分の日々の人への接し方を振り返ることも大切かもしれませんね。

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