吃音とは?

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つばさ
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吃音について知りたいです。

 小学校には、様々なタイプの子どもがいます。

 その子どもの中には、特別な教育的ニーズを必要とする子どもがいます。

 特別な教育的ニーズを必要とする子どもの中に「吃音」の子どもがいます。

 今回は、「吃音とは」何かについて書きます。

吃音とは?

🟠吃音とは?

<吃音の子ども>

 学校にいる子どもの中には、吃音(きつおん)の子どもがたくさんいます。

 吃音(きつおん)とは、話しはじめの言葉に詰まったり、言葉がすらすら出てこなかったりするなどの状態のことです。

 吃音があるおかげで、日々の生活や学校生活において、たいへんな苦労をしている子どもがたくさんいます。

 今回は、吃音について書きます。

 なお、最近、多くの場面で、「障害」を「障がい」と書きかえる傾向があります。「害」という漢字にマイナスのイメージや負の印象があるからです。ここでも、基本的に「障がい」という表記を用います。しかし、以前に作られた法律や本の題名などにおいては、元の「障害」の表記をそのまま用いることにします。

<吃音の定義>

 吃音(きつおん)になる原因は、はっきりとわかっているわけではありません。しかし、ある程度決まった定義があります。

 文部科学省の外郭団体である「国立特別支援教育総合研究所」は、2007年(平成19年)3月に「言語に障害のある子どもへの教育的支援に関する研究」として「吃音のある子どもの自己肯定感を支えるためにー吃音のある子どもの自己肯定感形成を中心に」という冊子を作成しています。

 この冊子には、吃音の定義として、牧野泰美さんにより、次のように書かれています。

 吃音とは

 吃音の定義は必ずしも明確に定まったものがあるわけではないが、連発(同じ音の繰り返し)、伸発(引き伸ばし)、難発(音がつまって出ない)等の言語症状があること、脳、 発語器官等、器質的に明確な根拠は認められないこと、本人がどもることに不安をもち、 悩み、話すことを避けようとする、等の状況が揃ったときに吃音と言われることが多い。 慌てたり緊張したりしたときに誰でも上記の言い方になることはあるが、それは吃音とは言わない。話すときに、顔をゆがめたり、手を動かしたり等の随伴症状を伴うこともあり、これは、吃音の症状から抜け出すためにしようとした動作が身についたものである。

 吃音の問題は、症状だけでなく、流暢に話せないことを予期し、話すことに不安を持ち、 回避するといったことがあげられる。人や社会に対する恐怖、自己に対する否定感等、流暢に話せないことそのものの不便さだけでなく、社会生活上の様々な問題を抱えることも 少なくない。

吃音のある子どもの自己肯定感を支えるために:牧野泰美著:研究の枠組みと論点

 また、「国立障害者リハビリテーションセンター」のホームページには、吃音について、次のように書いています。

 吃音の9割は発達性吃音です。発達性吃音の特徴として、以下のようなことが知られています。

・幼児が2語文以上の複雑な発話を開始する時期に起きやすい

・幼児期(2~5歳)に発症する場合がほとんど(小学校以降に発症することもあります)

・発症率(吃音になる確率)は、幼児期で8%前後

・発症率に国や言語による差はほとんどない

・有病率(ある時点で吃音のある人の割合)は、全人口において0.8%前後 

・男性に多く、その比は2~4:1程度である(年齢や調査により結果は変動します)

・以下のような要因がお互いに影響し合って発症する

  体質的要因(子ども自身が持つ吃音になりやすい体質的な特徴)

  発達的要因(身体・認知・言語・情緒が爆発的に発達する時期の影響) 

  環境要因(周囲の人との関係や生活上の出来事)

吃音について

 ここまでに書いたことを簡単にまとめると、次のようになります。

 吃音というのは、話そうとしたり音読したりするときに、同じ音を繰り返したり、引き伸ばしたり、音がつまって出なかったりする状態です。吃音になる明確な理由がわかっているわけではありません。幼児期になることが多く、そのうちに吃音でなくなりますが、人口の約1パーセント程度の人が大人になっても吃音に苦しむことになります。日本でおよそ120万人もの多くの人がなんらかの吃音に苦しんでいます。

 学校では、子どもたちは、教育の一環として、国語の時間を中心に、音読したり、話したりする機会が多いので、教員の適切な支援が必要な子どもたちです。

 学校で友だちの不用意な一言で吃音の症状が悪化したり、周りの大人の不用意な対応で深く傷ついたりすることがあります。

 吃音は、風邪やコロナウイルスのように、人から人にうつる病気ではありません。ですから、吃音の子どもと一緒に遊んでいても、全く問題はありません。しかし、吃音の子どもと遊ぶと吃音がうつるいうと間違った認識をもつ大人が全くいないわけではありません

<ある女性の悲しい出来事>

 日本財団という組織があります。この組織は、公営競技の競艇の収益金を元に国際協力事業や福祉事業、海洋船舶関連事業をおこなっている公益財団法人です。この団体では、社会の様々な問題やそれに取り組む人々を紹介するYouTube動画を作成しています。

 日本財団が作成した動画に「【全国に120万人】吃音の若者が接客するカフェに1日密着してみた」という動画があります。

 この動画は、接客業に憧れる吃音の若者に接客体験をさせる活動「注カフェ:注文に時間のかかるカフェ」を運営している奥村安莉沙(おくむら・ありさ)さんとその活動の様子を紹介したものです。

吃音の若者が接客するカフェに1日密着してみたに進む外部リンク

注文に時間がかかるカフェホームページに進む外部リンク

 この動画の中で、奥村さんは、彼女の身に起こったとても悲しい出来事について語っています。

 次のようなものです。

 小学3年生のある日。授業参観で、多くの保護者が見守る中、国語の授業が行われました。安莉沙さんは先生に指名され、教科書を音読することになりました。彼女自身では、いつも通りに読んだつもりでした。授業のあと、友達のお母さんに呼び止められました。そして、「最近うちの子と話してる?」と聞かれました。素直に話していることを伝えると、相手の顔がみるみる曇っていったそうです。後日、友達から言いずらそうに「安莉沙ちゃんとはもう遊べないんだ。話し方ががうつるかもしれないから」と言われました。それ以降、うつるという間違ったうわさが学校中に蔓延することになります。最初は、安莉沙さんの声を聞くとうつると言われました。次に、安莉沙さんに触るとうつると言われました。さらに、安莉沙さんに近づくとうつると言われました。どんどん話が大きなってしまい、最後には、安莉沙さんの周りには人が寄り付かなくなり、教室の前の廊下を安莉沙さんが歩くと、人がよけていくような状態にまでなってしまったそうです。

「吃音の若者が接客するカフェに1日密着してみた」の動画をもとにした文章

 このような出来事に接すると、本当に、無知は罪なことだなと痛感します。

「無知は罪である」という言葉は、ソクラテスの言葉です。友達のお母さんの発した無責任な間違った言葉が、さも真実であるかのように伝わり、一人の少女の心を深く深く傷つけることになります。

<教員の役割>

 私たち教員は、このような状況をすぐさま的確に把握し、適切な対応ができなければなりません。吃音がうつるようなものではなく、一緒に遊んでいても何ら問題のないことを学級の子どもだけでなく、保護者などに対してもきちんと伝え、啓発する必要があります。

 では、もし学級に吃音の子どもがいた場合、どうすればいいのでしょうか

 一つは、それぞれの自治体や教育委員会などが設置している「ことばの教室」などについてよく理解することです。

 その上で、どのような手続きをすれば「ことばの教室」に通えるのか、子どもや保護者に適切に説明をします。

 保護者などが希望をすれば、管理職や特別支援教育コーディネーターなどと相談し、手続きを進めます。

 通級した場合は、必要に応じて、他校などにある「ことばの教室」の教員と、当該の子どものことについて連絡を取り合います。

<ことばの教室>

 ことばの教室とは、言語の通級指導教室で、小中学校の通常学級に在籍している子どもたちが、個々の実態や状況に応じた特別な指導を特別な場で行う教育形態です。

 主に以下のような困り感のある子どもが通うことができます。

・発音がはっきりしない。

・やりとりが通じにくい。

・ことばがつまる。

・知っていることばが少ない。

ことばの教室(言語通級指導教室)に進む外部リンク

<子どもへの働きかけ>

 先程紹介した「吃音のある子どもの自己肯定感を支えるためにー吃音のある子どもの自己肯定感形成を中心に」という冊子の中に、松村勘由さんの書かれた「吃音のある子どもの自己肯定感へのアプローチ」という文章があります。

 この文章の中で、次のように書かれています。

 教師や保護者の役割は、吃音や吃音のある子どもを否定しない意識や態度を持つことである。

 [よりよい聞き手であること]

 自由で楽な雰囲気の中で、また、受容的に温かな人間関係を基として、子どもの話を興味をもって聞くという態度が重要である。子どもの話し方ではなく、子どもが話したい内容に注意を向けて、話を聞くことである。そうした関わりを積み上げる中で、子どもは、話し方について注意をはらうのではなく、話の内容を考えながら話すという態度が育っていく。教師や保護者は、子どもの話に真摯に耳を傾ける、よりよい聞き手であることが必要である。

 [よりよい相談の相手であること]

 子どもは、学校生活や地域での生活の中で生じる不快感、無力さ、吃音への不安、また、必要以上の自己への否定感情がある。吃音と自己の存在を必要以上に重ね合わせて捉えたり、その結果、本来もっている自分の能力や個性、将来目指す方向までもが制限されたりすることがある。 

 教師や保護者は、温かな人間関係の中で、自分自身吃音について話し合ったり、吃音についての子どもの自分の考えや見方を整理し、本来の自己を見つめ直すことが出来るようにすることも必要である。

吃音のある子どもの自己肯定感を支えるために 松村勘由 吃音のある子どもの自己肯定感へのアプローチ

<まとめにかえて>  

 吃音はすぐに改善しないこともあるでしょう。しかし、適切な対応や働きかけをすることで、吃音の子どもの日常生活や学校生活は、より過ごしやすく、快適なものになります。

 吃音の子どもにとって、教員の適切な対応や働きかけはとても大切だと思います。

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 なお、特別支援教育に関係する言葉については、次のページをお読みください。

特別支援教育の変遷に進む内部リンク

発達障がいとは?に進む内部リンク

個別の教育支援計画に進む内部リンク

個別の指導計画に進む内部リンク

教育書紹介:発達障害の子どもたちに進む内部リンク

合理的配慮に進む内部リンク

社会の中のユニバーサルデザイン 図書館 環境整備に進む内部リンク

リライト教材:教育用語⑤に進む内部リンク

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