不登校の子ども 教育ニュース

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不登校の子どもについて知りたいです。

 ニュースで、昨年の不登校の児童・生徒数についての発表がありました。

 今回は、「不登校の子ども」について書きます。

不登校の子ども

🟠不登校の子ども

<不登校の歴史>

 日本では、年間30日以上欠席する小・中学生について毎年調査してきています。

 日本では、不登校の子どもは、ずいぶん以前からたくさんいました。時代背景に合わせて、長期欠席の子どもは、様々な呼び方で呼ばれてきました。

 ここでは、初めに、少し不登校の歴史について書きます。

<終戦直後から 1960年代の「長期欠席」:学校ぎらい>

 終戦後、1947年(昭和22年)に発足した新制中学校の就学率は、当初から99%を越えていました。しかし、一方で 大量の長期欠席者がいました。

 1949年(昭和24年)度の文部省等の調査によると 東京都と高知県を除いて小学校ではおよそ 40 万人 (出現率 4.15%)、中学校ではおよそ 34 万人(出 現率 7.68%)、合計 74 万人、東京都•高知県を含めると、約100万人を越える長期欠席の児童生徒(年間30日以上学校を休んだもの)がいました。

 その時の理由は、2つあります。1つは、戦後の混乱期の 「経済的窮乏」すなわち、貧困の問題です。もう1つの理由は「家族による人づくり」が学校教育とは異なる考えをもっていたことです。農業や漁業などを営む家庭では、学校よりも家の手伝いの方が大切であり、跡継ぎを一人前に育てるためには早くから家業に従事させる方がよいという価値観と子育ての方針のもとで、あえて子どもを学校に通わせないことがありました。

 この時期は、長期欠席の理由を「学校ぎらい」「家庭の貧困」「疾病異常」「家庭の無理解」「その他」の5つに分類していました。この時期は、「学校嫌い」と「疾病異常」の割合が増えてきたことが特徴です。

 この時期の不登校は、「学校ぎらい」という名称で呼んでいました。

学校ぎらい」以外にも、この時期、アメリカや日本において、学校に行かない•行けない子をめぐる言葉は変遷します。

怠学」「学校恐怖症」という言葉も使われるようになりました。

<1970-1980年代の「長期欠席」:登校拒否>

 長期欠席の子どもは1970年位から「登校拒否」と呼ばれるようになります。文部省では、統計的には、最初から「長期欠席」として統計をとり始めといます。1966年から1998年までは「学校ぎらい」として統計をとっています。1999年からは、「不登校」として統計をとっています。

登校拒否」と呼ばれた時代の行政側の登校拒否のとらえ方は、「生徒の健全育成をめぐる諸問題―登校拒否問題を中心に-」(生徒指導資料第18集、1983年発行)に次のように書かれています。

 登校拒否とは、主として何らかの心理的、情緒的な原因により、客観的に妥当な理由が見いだせないまま、児童生徒が登校しない、あるいはしたくともできない状態にあることとして幅広く理解することが妥当であろう。

生徒の健全育成をめぐる諸問題―登校拒否問題を中心に-

 さらに、次のようにも書かれています。

 登校拒否は様々な原因や背景が複雑に絡み合って起こるものである。一般的には生徒本人に登校拒否の下地とも言える登校拒否を起こしやすい性格傾向ができており、それが何らかのきっかけによって登校拒否の状態を招くものと考えられている。

生徒の健全育成をめぐる諸問題―登校拒否問題を中心に-

 このブログでも紹介しているカウンセラーの東山紘久氏は、「母親と教師がなおす 登校拒否 母親ノート法のすすめ」(創元社・1984年)という本の中で「登校拒否は心の病気である」と述べています。

 登校拒否は心の病気であるに進む(内部リンク

 登校拒否の問題の解決が難しいのは、親や保護者、学校の担任などの大人が何とか解決したいと思っても、子どもが学校に行くことを拒否するわけですから、カウンセリングや心理療法などを受けることも拒否することが多かったからです。

 親や保護者が、代わりに教育相談などに行っても、カウセラーや心理療法士などからは、「まず、子どもを連れてきてください」と言われることが多く、なずすべなく悩み続けるという状態が続きます。

<1990年代の長期欠席:登校拒否(不登校)>

 1992年3月に、文部省(2001年以降は文部科学省)が依頼した「学校不適応対策調査研究協力者会議」は「登校拒否(不登校)問題について児童生徒の『心の居場所』づくりを目指してー」という報告を出します。

 この報告には、3つの特徴があります。

 1つは、登校拒否の原因は「特定の子どもの性格傾向」やそういう子を育てた親の「養育責任」 ではなく、「登校拒否はどの子にも起こりえる」ことであり、 原因は学校の在り方を含むものであるとしたことです。

 2つめは、「適応指導教室等の機関」に通い一定の条件を満たせば、指導要録上出席扱いとされたことです。

 3つめは、「登校拒否」の子は、学校に不適応なので、学校に適応させること、すなわち「学校復帰」が原則であるとされたことです。

 しかし、登校拒否の子どもが減ることはありませんでした。

<2000年代の長期欠席:不登校>

 文部科学省は、2003年に「不登校問題に関する調査研究協力者会議」に依頼し、「今後の不登校への対応の在り方について」という報告を出しました。

 この報告書が出された背景として、3つのことがあります。

 1つめは、登校拒否・不登校児童生徒数 が、1970年代半ば以降も増え続け、13万9千人にもなったことです。

 2つめとして、不登校経験者は、総じて進学率が低く(高等学校 65%、大学等13%)、就職率や高等学校中退経験の割合が高いといった傾向があることです。

 3つめとして、「ひきこもり」が社会的問題となり、ひきこもりの1年間の相談件数のうち約 40%が小・中・高等学校での不登校の経験をもつといった結果が示されたことです。

<2010-20年代の長期欠席:不登校>

 その後も、不登校の人数が減ることがないことは、ご存知の通りです。

 社会的な対応として、不登校の児童・生徒は年々、増え続けています。

 少子化で子どもの人数は、年々減少しているにも関わらず、不登校の人数は増加しています。

 不登校のために学校で勉強する機会を失ってしまった子どもたちのために、学校への登校を強制せず、それぞれにあった学習環境を保障するために、2016年(平成28年)に、「教育機会確保法(義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)」が定められました。

 不登校は、長い間、大きな社会問題と認識されていたにも関わらず、現状に沿った対応策はほとんど何もされていませんでした。教育機会確保法の施行にともない、行政があらためて問題の大きさを認識し、「学校以外の場で、児童と生徒が学ぶことの重要性」と「学校を休ませる必要性」について取り組みを始めたことは、とても大きな意味があります。

<長期欠席・不登校の調査報告:2022年(令和4年)10月>

 2022年(令和4年)10月27日に、文部科学省の初等中等教育局児童生徒課は、「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」という報告書を公開しました。

文部科学省のこの調査のホームページに進む外部リンク

 この報告書の中で、長期欠席と不登校について、次のように書かれています。

小・中学校における長期欠席者数  413,750人(前年度287,747人) 

・うち,不登校児童生徒数 244,940人(前年度196,127人)

在籍児童生徒に占める不登校児童生徒の割合 2.6%(前年度2.0%)

令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について

 また、不登校の詳細について、次のような表を作成しています。

 この表からも分かるように、コロナ感染症の広がりも受けて、不登校の原因として、「無気力や不安」が半数近くになります。そして、「生活リズムの乱れ,あそび,非行」や「いじめを除く友人関係をめぐる問題」などが続きます。

不登校に対する手立て>

 不登校の子どもたちに対して、なかなか有効な手立てが、学校も行政も保護者も取れていないというのが実情です。

 しかし、で、フリースクールを実施する動きもあります。フリースクールとは、不登校の子どもに対し、学習活動、教育相談、体験活動などの活動を行っている民間の施設です。

 フリースクールの規模や活動内容は多種多様です。民間の自主性・主体性の下に設置・運営されています。2015年(平成27年)度に、文部科学省が実施した調査では、全国で474の団体・施設が確認されいます。

 学校においても、家庭向けにオンライン授業を実施したり、オンライン授業を学校の別室で受けられるように環境を整えたりしています。養護教諭などが保健室で不登校の子どもの様子を見たり、授業のない教員が他の教室で子どもの学習を見たり、学級担任などが家庭訪問を繰り返したりする試みもあります。

 しかし、不登校(登校拒否)の子どもののために、特効薬がないというのが現実です。

 不登校は、いじめ同様、ちょっとしたことで、どの子もなり得ることです。

 不登校(登校拒否)の子どもに対する具体的な方法である、東山紘久氏の提唱する「母親ノート法」について、次のページに書いています。

母親ノート法(1)母子の会話パターンに進む内部リンク

 なお、今回のページを作成する上で、次の論文を大いに参考にさせていただきました。感謝します。

前島康男作・登校拒否•不登校問題の歴史と理論(東京電機大学・2016年)に進む外部リンク

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