読む力を育てる方法を知りたいです。
子どもたちに読む力を育てる方法にはいろいろあります。
ここでは、読む力を育てる方法の2つめについて書きます。
今回の方法は、教科書の作品の姉妹作品を読むという方法です。言い換えると、教科書に出てくる物語の作者や主人公の物語を読む方法です。
教科書に出てくる物語の作者や主人公の物語を読む
🟠大人が読むことと学校で読むことの違い
多くの大人は、大人になってもいろいろな活字を読むことがあります。新聞や雑誌を読んだり、好きな作家の文庫本や単行本を買って読んだり、公立図書館で本を借りて読んだりします。
最近は、Twitterやインスタグラムやフェースブック、ラインなどのSNSを読むことも多いかもしれません。
そのような時の読み方の特徴としては、さっと1回、読むことが多いように思います。
好きな作家の作品を繰り返し読むこともあると思いますが、聖書やお経などの宗教などに関する本を除いて、あまり繰り返し読むことは少ないように思います。
それに、比べて、子どもが教科書を読むときの読みは、どんな違いがあるでしょうか?
1番の違いは、その回数でしょう。教師の範読から始まり、声を合わせての一斉音読、家庭での音読の宿題、場面や意味段落ごとの学習では、授業の始まりごとに、学習する部分を音読することが一般的です。
教科書の横に○をいくつも書かせておき、1回音読するたびに、○を●に塗りつぶすという方法で、子どもを何回も音読させる教師もいます。
子どもが、物語文や説明文、詩などに書かれた内容を理解し、主題や要旨、主人公の気持ちや場面の移り変わり、段落と段落の関係、筆者の伝えたいことなどを深く理解するためには、必要なことです。
1つの教材を10回以上音読したり、黙読したりすることも決して珍しいことではありません。勘違いしないで欲しいのですが、このことを悪いと思っているわけではありません。むしろ、指導者としては、子どもにたくさん音読させたり、黙読させたりすることは大切なことだと思っています。
しかし、この方法ばかりを続けていると、初見の文章をさっと読んで、内容を理解することは、難しいかもしれません。
子どもが受ける単元テストでは、よい点数なのは、覚えるほど読み込んだ回数のおかげもあるでしょう。しかし、単元テストの成績が良いからと言って、読解力が身についたとは言えません。
🟠教科書に出てくる物語の作者や主人公の物語を読むこと
そこで、今回お勧めしたいのが、物語文を学習した時に、その物語を書いた作者の違う物語を読んだり、同じ主人公が出てくる物語を読んだりすることです。
1、2年生の教科書で採択されている「おてがみ」という作品で考えてみましょう。この作品は、がまくんとかえるくんという2人のかえるが主人公のお話です。アメリカ人のアーノルド=ローベルさんが書かれ、三木卓さんが翻訳し、文化出版局から1987年に出版されている「ふたりはともだち」という本の中の1つの作品です。
現在国語の教科書を出している4つの教科書会社では、1社が「お手がみ」として1年生の教科書に、他の3社が「お手紙」として2年生の教科書に掲載しています。
「ふたりはともだち」の中にも、がまくんとかえるくんのお話は5編収録されています。がまくんとかえるくんのお話はシリーズ化されています。他にも「ふたりはいっしょ」「ふたりはいつも」「ふたりはきょうも」などの作品が、文化出版局から出ています。
大人でもシリーズものは大好きです。池波正太郎さんの書かれた「剣客商売」、東野圭吾さんの「探偵ガリレオ」、紫式部さんの書かれた「源氏物語」、J・K・ローリングさんの書かれた「ハリー・ポッター」シリーズなど幾つでも紹介できるでしょう。
これらのシリーズものが多くの読者に愛されていて、続編の物語も、同じように読者を獲得している理由は、馴染みの主人公や登場人物が出てくるからです。
主人公や登場人物の性格をよく知っており、その言動には、一貫性があります。よく似た言動に再度触れ、その言動や物語の流れが楽しくなります。
その物語を何回も読まなくても、既に今までの物語で、主人公や登場人物についてよく知っています。新しい出来事に対して、どのように対応するか予想することも容易です。主人公と登場人物の関係も大きくは変わらず、少し違う対応をしても、今回はこうきたか、と嬉しくなります。
一読で、内容を理解するには、もってこいの教材です。
最近は、並行読書として、物語文の学習の際に、同じ作者の書いた作品をあらかじめ、学級文庫などに用意する先生もたくさんいます。同じ作者の作品は、主人公が違っていても、何か同じ匂いがして、懐かしい感じもして、嬉しくなります。子どもの読書意欲を高めることができます。
🟠教科書に出ている作家のシリーズの作品
他にも教科書によく出ている作家の作品でシリーズ化された作品はたくさんあります。
あまんきみこさん:「名前を見てちょうだい」:フレーベル館から「えっちゃんの森」「えっちゃんとふうせんばたけ」「えっちゃんとミュウ」(以上全て、フレーベル館)など。幼いえっちゃんの活躍するお話。
あまんきみこさん:「白いぼうし」:ポプラ社から「車のいろは空のいろ」や「春のお客さん」「星のタクシー」(以上全てポプラ社)など。やさしいタクシー運転手の松井さんの出てくるお話。
茂市久美子さん:「ゆうすげ村の小さな旅館」:講談社から同名の本。この本の中では、つぼみさんたくさんの動物に出会います。茂市さんには、つるばら村シリーズの本もあります。主人公は、くるみさんですが、こちらの方は、たくさんの本が出ています。例えば、「つるばら村のパン屋さん」「つるばら村の三日月屋さん」「つるばら村のくるみさん」(以上全て講談社)などです。
小林豊さん:「せかいいちうつくしいぼくの村」:ポプラ社から同名の絵本。続編に「ぼくの村にサーカスがやってきた」と「せかいいちうつくしい村にかえる」(ポプラ社)がある。戦争が続くアフガニスタンに住む少年のお話。
立松和平さん:「海のいのち」:ポプラ社から同名の絵本。主人公は違いますが、命シリーズがあります。「山のいのち」(ポプラ社)「川のいのち」「街のいのち」「木のいのち」(以上3つは、くもん出版)主人公は違いますが、主人公が命について考える設定は似ています。
🟠作品の用意の仕方
わたしが所属していた小学校では、公費で1つの本を学級の人数分用意していることもありました。
フォア文庫という児童書のシリーズがあります。岩崎書店、金の星社、童心社、理論社の4つの出版社が協力出版している児童書のブランドです。名称にあるフォア(FOUR)はその4つの出版社を表しています。
このシリーズは他の児童書に比べ、廉価です。このフォア文庫で40冊分購入し、同じ本を適当な大きさの箱に入れて、必要に応じて教室に移動させていました。
学校図書館の費用で、購入するのが一番よい方法でしょう。しかし、教科書の内容は、改訂の際に、変わることもありますので、注意が必要です。
学校図書館の費用は、最近増加傾向にありますので、同じ作家の本を複数購入するというのは、よい方法だと思います。
地方自治体によって違いますが、公立の図書館と連携するというのもよい方法です。
私がいた自治体では、図書館に事前に連絡すると、図書を用意して、プラスチックケースに入れ、学校間の郵便物などを運ぶ逓送便で、学校まで運んでくださるサービスがありました。
自治体や学校、図書館によって違うと思いますが、このようなサービスがあれば積極的に活用することが大切です。
青空文庫を活用する方法もあります。
著作権が消滅した作品や著者が承諾した作品のテキストをボランティアが入力し、一般公開しているインターネット上の電子図書館です。
ごんぎつねの新美南吉さんの作品、やまなしや注文の多い料理店の宮沢賢治さんの作品などもあります。
ルビ(よみがな)をつけている作品も多く、子どもも利用しやすいと思います。
青空文庫のホームページに進む(外部リンク)
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