他の教材研究の視点について知りたいです。
視点を決めて、物語文の教材研究をすることは、とても大切です。
今回は、「あらすじを読む」ことと「場面を読む」ことについて書きます。
この2つは、密接な関係があります。
あらすじを読む
物語というのは、いつ(時間)、どこ(場所)、だれ(登場人物)の3つのうち、1つが変わり(場面が変わり)ながら、お話が展開していきます。
その間に、いろいろな出来事が起こり、登場人物がいろいろなことを思ったり、会話をしたり、行動をしたりします。
物語文では、数年にわたる出来事をほんの数行で書いていることもあれば、たかだか30分程度のことを何ページにもわたり書いていることもあります。
「いつ、どこで、だれが、どうしたか」の大きな流れを「あらすじ」といいます。
物語を読むこととは、「設定を知り、場面の変化を楽しむこと=あらすじを楽しむこと」です。
物語の詳細な表現や、登場人物の気持ちを楽しむことも大切でしょうが、そのためにも、「設定、場面の変化、あらすじ」を読めることが大切です。
あらすじの基本的な展開として有名なのが、起承転結です。
あるお話が始まり、登場人物などの紹介があります(起)。
その続きのお話がおこります(承)。
一転してまったく関係ないような出来事が起こりつつ、物語は山場をむかえます(転)。
そして最後に、全ての出来事が終結へ向けてまとまっていきます(結)
起承転結の例として有名なのが、頼山陽(江戸時代の文化人)の俗謡です。
起:京の五条の糸屋の娘
承:姉は十六妹十四
転: 諸国大名は弓矢で殺す
結:糸屋の娘は目で殺す
物語を読む場合、この基本的なあらすじが理解できていないと、少しも面白くありません。
一度読めば、あらすじなんて簡単に理解できるでしょう、と考えるのは、たくさん物語を読んだり、新聞を読んだりして読解力のついている大人の発想です。
子どもの中には、一読してあらすじがわからない子どもがたくさんいます。
「あらすじを読む」ということを教材研究として行う場合、おすすめの方法は、全てのエピソードをあげることです。
時間はかかりますが、どのような出来事が起こったのか全て書き出していくと、お話の内容がよく掴めます。
(しかし、実際に子どもに全てのエピソードをあげるような活動をさせると時間がかかり過ぎて、授業が進まなくて、とんでもないことになります。)
「あらすじを読む」ことに関する指導の実際については、次のページをお読みください。
物語文の指導の仕方(6)2時間めの指導に進む(内部リンク)
物語文の指導の仕方(7)3時間めの指導に進む(内部リンク)
場面を読む
先程「あらすじを読む」のところで、物語というのは、いつ(時間)、どこ(場所)、だれ(登場人物)の3つのうち、1つが変わり(場面が変わり)ながら、お話が展開すると、書きました。。
場面の転換は、たくさん起こるのですが、1つの物語を大きくいくつかの場面に分けると、あらすじがつかみやすいです。
そこで、もう一つのおすすめの教材研究の方法は、物語の全体を4つ~6つ程度の場面に分けてあらすじを考えるという方法です。
場面が変わるところはどこかを考えて、自分で4つ〜6つ程度に分けます。
その次に、それぞれの場面を20~30字程度の短い文章にまとめます。
各場面を20~30字にまとめてみると、全体で80字~180字程度の文になります。
こうすることで、あらすじがわかります。本の紹介などの際には、この最初の1、2場面を紹介させるとよいでしょう。
場面を4~6に分けるという活動は、学習指導においても意味があります。
この場面分けをすることで、各1時間の授業で扱う場面を考えることにもなります。
教科書に出てくる物語文は、全文が長いという傾向があります。
物語文を学習する場合、物語全体を1時間で扱うには長すぎることが多いです。
場面に分けるという活動は、教材文を1時間の学習で取り扱う手ごろな長さに区切るという意味もあるのです。
ただ最近は、PISA型読解力を育成する観点などから、物語文を細かく場面分けして教えるのではなく、物語全体を丸ごと読んでいくという方法も提唱されるようになってきています。
物語文を場面毎に分けて細かく読ませるのか、全文を丸ごと読ませるのかは、指導者の指導目標により変わってきます。
物語文の教材研究の仕方(5)「人物の会話」「人物の行動」に進む(内部リンク)
物語文の教材研究の仕方(6)「主題を読む」に進む(内部リンク)
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