説明文の指導における筆者の表現の工夫って何ですか?
説明文の指導の説明をしています。
ここでは、次の2つことについて書きます。
筆者の表現の工夫の学習について
研究者の伝える「表現の工夫」について
筆者の表現の工夫の学習について
東京書籍の3年生の教科書に載っている「パラリンピックが目指すもの」という説明文を使って単元指導計画を考えました。
今回は、2次の筆者の表現の工夫の学習についてです。
この時間の学習の目標は、「『筆者の表現の工夫』を読み取(り、自分の作文に取り入れたい表現の工夫を考え)ることができる」です。
大きな学習の流れは、次の通りです。
1. 本時の学習のめあてを確かめる。
2.「筆者の表現の工夫」とは何か知る。
3.全文を読む。
4.一人一人で「筆者の表現の工夫」をぬき出す。
5.学級全体で、「筆者の表現の工夫」を話し合う。
6.学習のまとめをする。
🟠本時の学習のめあてを確かめる;「筆者の表現の工夫」とは何か知る
4月からの学習で、「筆者の表現の工夫」について、読み取りを重ねている学級では、何をするか理解していますが、多くの学級では、ていねいに説明をしないとわからないと思います。
物語文でも、説明文でも、筆者は、いろいろな表現の工夫をしています。
例えば、この「パラリンピックが目指すもの」という説明文でも、筆者の藤田紀昭さんは、様々な表現の工夫をしています。ここでは、10この具体例を挙げます。
① パラリンピックよりもよく知られているオリンピックから書き出している。
② オリンピックとパラリンピックを比べながら述べている。
③ パラリンピックの競技には、オリンピックの競技のルールの一部を工夫している競技とパラリンピックにしかない競技の2種類があることを説明している。
④ 2種類の競技の代表例として、水泳とポッチャを取り上げている。
⑤ 水泳とポッチャの最初には、小見出しをつけている。
⑥ 「たとえば」という言葉を使い、具体的に説明している。
⑦ 言葉を強調するときに「自由形」「勇気」「公平」などのように「」(かぎかっこ)を使っている。
⑧ 二〇二〇年、四年に一度、一九六四年などの具体的な数字を使っている。
⑨ 分かりやすく説明するために、写真や図など、文字以外の情報も使っている。
⑩ 難しい漢字には、読みがなをつけている。
書かれている内容だけではなく、内容を伝えるために、どのように表現を工夫しているかを考えるの、「筆者の表現の工夫を読み取ること」です。
具体的な例をいくつか取り上げて、「筆者の表現の工夫」を子どもに理解させた上で、学習に入ります。
🟠全文を読む
筆者の工夫だと思う言葉や文に、線を引いたり、○で囲んだりしながら、全文を何回も読むようにします。
指導者は、机間指導をしながら、線をひいたり、○で囲んだりしている子どものうち、よい考えに気づいている子どもを褒めたり、どうすればよいかわからなくて困っている子どもにヒントを出したりします。
例えば、「自由形」という言葉を取り上げ、他に、「」(かぎかっこ)を使っているところはないか訊きます。
🟠一人一人で「筆者の表現の工夫」をぬき出す
ページ数や行数と、工夫している表現、どのようなところが工夫なのかを書き出すように伝えます。
この時間にはできるだけ多くの時間をとるようにします。
このような個別の学習の際に、指導者がすべきことは2つあると思います。
1つは、何をすればよいかわからなくて困っている子どもに寄り添い、ヒントを出したり、どうすればよいか伝えたりする個別の支援です。
もう一つは、子どもが何に気づき、誰がどのような意見を持っているか把握をすることです。
たくさんのことに気づいている子どももいるでしょうし、1つか2つしか気づいていない子どももいます。
次の全体での話し合いの際に、誰を指名すべきかを考え、構想を練るのも、この時間の指導者の役割だと思います。
🟠学級全体で、「筆者の表現の工夫」を話し合う
学級全体の話し合いの場面では、指導者は、いかに前もって、誰がどのような考えや意見を持っているのかを把握しておくことが大切です。
手を上げている子どもを、考えもなく指名して、自分の思っているのとは違う意見が出されて、「他に意見はありませんか?」と聞いている指導者を見かけることがあります。
なぜ、机間指導をしてメモを取るなどして、誰がどのような考えを持っているのか把握しておかないのでしょうか。
優れた指導者は、きちんと意見の分布を把握し、どのような順番で、意見を聞いていくと、子どもたちがよりよくわかるか考えて指名します。
🟠学習のまとめをする
2次で学習を終える場合は、ここで学習は終わりになりますが、きちんと3次まで行い、パラリンピックについて調べて、調べたことを書く学習を行う場合は、今回の学習は、次につながります。
ぜひ、自分が調べてことをまとめて書く際に、今回の学習で理解した「表現の工夫」のうち、どの工夫を取り上げて使うのか、考える時間をもつようにしたいと思います。
研究者の伝える「表現の工夫」について
次に、研究者は、「表現の工夫」についてどのように考えているのかを述べます。
小田迪夫氏(大阪教育大学名誉教授)は、「情報と論理を追求する説明文の授業」(田近洵一編・国土社・1996年)の中で、次のように書いています。
説明表現の方法に関して指導者が知っておくべき、また学習者に気づかせるべき表現について、以下に列記しておく。
① 対比する述べ方によって、説明対象の特質が明瞭に読み手に伝わる。
② 同類の事例の列挙によって、述べようとすることの説得性が強まる。
③ 反復的表現によって、述べようとすることの強調点が読み手によく伝わる。
④ 問いかける言い方(疑説法)によって、読み手の知的欲求が高まる。
⑤ 比喩的表現によって、未知、未経験のものごとの理解が容易になる。
⑥ 引用(権威者の文言、格言など)によって、述べようとすることの信頼性が強められる。
⑦ 数量化されたデータを根拠にすることによって、述べようとすることの確かさが強まる。
⑧ 程度差のあるものごとを取り上げ比較する言い方で、述べようとすることが強調される。
田近洵一編 情報と論理を追求する説明文の授業
小田氏は、「筆者の表現の工夫」という書き方はしていません。
その代わりに、「説明表現の方法に関して指導者が知っておくべき、また学習者に気づかせるべき表現」と書いています。
しかし、「対比」「同類の事例の列挙」「反復表現」「問いかける言い方」「比喩的表現」「引用」「数量化されたデータ」「程度差のあるものごとを取り上げ比較する言い方」というのは、「筆者の表現の工夫」と言いかえることができる内容です。
説明文の指導においては、内容の理解だけでなく、表現にも着目し、指導することは大切なことです。
説明文の指導の仕方(8)3次・調べ学習に進む(内部リンク)
説明文の指導の仕方(9)3次・書く時の指導に進む(内部リンク)
説明文の指導の仕方(6)2次の指導の実際②に戻る(内部リンク)
説明文の指導の仕方(5)2次の指導の実際①に戻る(内部リンク)
コメント