何をめざすのか 話すこと・聞くことの指導(1)

指導方法
つばさ
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話すこと・聞くことの指導は、何をめざすといいのですか?

「話すこと・聞くこと」の指導では、どのような言語力を育てることが必要なのでしょうか。

「話すこと・聞くこと」の指導において、「何をめざすのか」ということについて書きます。

何を目指すのか

 教員の時に、「話すこと・聞くこと」の指導に関心があり、指導に関する本をいくつか読みました。読んだ本の中に、印象に残っているエピソードがいくつかあります。

 今回はそのエピソードを紹介しつつ、私の考えを述べます。

🟠エピソード1:何を食べますか?

 1つ目のエピソードは、次のようなものです。

 ある時、日本の学者が数名、国際会議に参加しました。午前の会議が終わり、昼食を食べることになりました。

 いつものように、日本の学者たちは、同じメニューにした方が、料理がはやくきてゆっくりできるだろうと考えて、あうんの呼吸で、ほんの数分で定食か丼ものかに揃え、注文しました。

 このような様子を見ても、日本人や日本に住む人ならあまり違和感もなく、ああそんなこともあるな、と思われるのではないでしょうか。

 しかし、数分間のそのやり取りを見ていたカナダかアメリカかから来た外国人のグループは、びっくりしたそうです。

 そして、次のようにコメントを述べたそうです。

「まず、私たちの国なら、メニューを揃えるかどうかで1時間議論する必要がある。そして、もし1つにまとめることに決まったとしたら、どのメニューにするかでまた1時間議論する必要がある

🟠エピソード2:会議に出て何をする?

 2つ目のエピソードは、次のようなものです。

 日本では、会議に参加するとはどういう行為をさすのでしょうか。会議に参加し、きちんと意見を聞いていれば概ねよしとされます。

 しかし、欧米では、それだけでは、参加したとはなされないことが多いそうです。会議に参加するとは、会議で論議されている事柄について、自分の考えや意見をきちんと述べることだそうです。朝から晩まで会議に出ていても、1回も発言をしなければ、さぼっているとみなされることもあるそうです。


 日本では、議論の前に、根回しをきちんとし、本番の会議では、予定通り進むことがよしとされることもあります。しかし、欧米では、議論は、その場その場できちんと賛成・反対を表明し、考えの違いを明確にし、歩み寄れる部分を探すことだそうです。

🟠どんな子どもを育てることをめざすのか?

話すこと・聞くこと」の指導では、いったいどのようなことができる子どもを育てることを、目標とすればよいのでしょうか。

 めざすのは、欧米の国々を真似て、イエス・ノーをはっきり言うことのできる子どもを育てることでしょうか。それとも、今までの多くの日本人のように、場の空気を読み、言いたいことがあっても黙って我慢することのできる子どもを育てることでしょうか。

 私なりの考えを述べるとすれば、日本社会のもつ共感性・親和性を大切にしながら、相手の考えをしっかり聞き、必要に応じて自分の考えを述べることのできる子どもを育てることではないか、と思います。

 何があっても意見を言わなければいけないとは思いません。相手の考えの間違いを声高に指摘し、自分の考えの正しさのみを主張する子どもを育てたいとも思いません。

 同じ意見の場合は、黙っているというのも大切な言語力だと思います。相手の考えをくみとり、少々自分と考えの違いはあっても、少しずつ歩み寄る努力をする子どもを育てたいと思います。

 そして、自分とは違う考えをもつ人、違う価値観をもつ人がいることを理解し、自分や家族、仲間、社会、国、世界、地球などを守るために、必要な場合は、自分の考えを明確に述べ、場合によっては、相手を説得できるような言語力をもつ子どもを育てたいと思います。

 日本人や日本に住む人は、世界標準の話す力をめざす必要はないと思います。日本社会のもつ共感性・親和性を大切にしつつ、相手の考えを共感的に受け止めつつ、自分の考えを含めて、多くの考えの中から、第3の道をさがし、表現できるような言語力をもつ子どもを育てたいと思います。

 みなさんは、どのような話す力・聞く力をもった子どもを育てたいと思いますか?

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